「さようでござりましょうとも——立派なお武家が、役者風情をお連れなさるのに、よほど怖（こお）うのうては、これ程のお支度はなされますまい」

雪渓の表面には水蒸気が凝（こお）って烟のように漂い、風に連れて渦を巻きながら太い柱のようになって動いて行くことなどもある。其中に巻き込まれると生温るい感じがする。

（はい、御門の処に馬車が居て恐（こお）うございましたから間違えてこっちへ参りました、どうも失礼。）

「婆やは可恐（こお）うございますからね」と書いてよこした。

ケッタカ、ケッタカ。蹴ってやる。おどれや。もう健帰（い）にくされ、健はうちの子（こお）とちがうがい、健家（く）い帰にくされ。

主人とブレインとは互に議論を戦わしたが、二人ともガロエイ卿に助けを乞（こお）うとはしなかった。しばらくするとその討論もひどくだれ始めた。ガロエイ卿もそこを立上って客間を目指した。

冷凍（こお）っていた五臓に若々しい血を湧返（わきか）えらせ、絶（たえ）ず傍（かたわ）らから烈しい火を燃しつけた。

『荘子（そうじ）』に曰く、「至人（しじん）は神（しん）なり。大沢（だいたく）焚（や）くるも熱（や）くあたわず。河漢（かかん）沍（こお）れども寒（こご）えしむるあたわず」と。また曰く、「死生（しせい）はまた大なり。しかるにこれと変ずるを得ず」