ガールズグループ「HANA」の誕生
2025年1月11日、Kアリーナ横浜で開催された、ガールズオーディション「No No Girls」(ノーノーガールズ、以下ノノガ)の最終審査。
用意された2万席は、総申込数5万で抽選だった。広瀬アリスさん、伊藤沙莉さん、朝日奈央さん、俳優の加藤諒さんらも、ファイナル審査の観客のひとりとして、熱い声援をSNSにポストしている。
2024年9月に始まったこのプロジェクトは、BE:FIRSTやMAZZELなどのアーティストが所属するマネジメント&レーベル「BMSG 」のCEOを務めるSKY-HIの「世界を塗り替えるようなガールズグループを作りたい」という一言から始まった。
SKY-HIからプロジェクトの全権を任されたのは、日本語、韓国語、英語を操る、トリリンガル ラッパー・シンガーのちゃんみな。自身の体験を綴った歌詞と圧倒的な歌唱力で10代、20代のファンを熱狂的に惹きつけ、ライブツアーチケットは1分で完売、You Tubeの総再生回数は6億超える。
オーディションに掲げられたのは、「No FAKE(本物であれ)」「No LAZE(誰よりも一生懸命であれ)」「No HATE(自分に中指を立てるな)」の3つの「No」。
「身長、体重、年齢はいりません。あなたの声と人生を見せてください」という前代未聞のメッセージに、7000通を超える応募が集まった。
1次審査、2次審査を通過したのは、これまで世間の常識や残酷なルッキズム、無責任な批評で傷つけられてきた30人の女性たち。自身も「見た目や声に“No”をつきつけられ、ガールズグループを志すもデビューすることが叶わなかった過去」を持つちゃんみなは、プロデューサーとして、審査員として、彼女たちに厳しい要求を課しながらも、誰よりも彼女たちに寄り添う。
3次、4次、5次審査と進み、通過した者も通過しなかった者も、驚きの成長を見せる。
You Tubeで配信される彼女たちの、自身で、もしくは社会から押し付けられた枠を打ち破り、自身の頂点を極めようとする姿は観る者を惹きつけた。
そして今月11日の最終審査では、5次審査に残った10名の中からデビューメンバー7名が発表された。誕生したのが、ガールズグループ「HANA(ハナ)」だ。
NHK「あさイチ」などでも人気の、市井の人の台所から人生を描いた連載「東京の台所」(朝日新聞デジタルマガジン&w)など、独自の目線をベースにしたルポルタージュ、エッセイで知られる大平一枝(おおだいらかずえ)さんも、ノノガに魅了され、目が離せなくなったひとり。
11日のKアリーナ横浜で行われた「No No Girls THE FINAL」は、自身でチケットを申し込み、抽選で勝ち取り、その目で見てきた。
短期連載「No No Girles振り返り」の第1、2回では、大平さんが見たノノガの持つ魅力とファンを惹きつける力の根源、稀有なオーディション審査を一気通貫させた“ちゃんみな”と“SKY-HI”のつくるノノガの革新的な特徴などをお伝えしている。
大平さんは、これまでのオーディションを上書きするようなノノガの革新的な要点は3つあると言い、最初の1点として、「現役のアーティストが選考する特異性」を挙げ、
「誰かをヒットさせたり、指導させたりしたのではなく、日々努力を積み上げアーティストとして毎回『死んでもいい』と思いながら舞台に立つ人間がプロデューサーになったとき、ローティーンもいるオーディション参加者に届く言葉には、とてつもないリアリティと説得力が宿る」と書いた。
第3回となる本記事では、残る2つの要点を大平さんの寄稿で紹介する。