和歌山県最大の飲食街〈味光路〉。200軒近くもの多種多様な飲食店がぎゅっとひしめき、夜はネオンがキラキラとまぶしい。大衆酒場からおしゃれなカフェバーまで、ぶらぶら散策しながら、はしご酒! ここ田辺市で誕生したといわれる伝説の豪傑・弁慶もほろ酔いでお届け。
気さくで温かいもてなしと絶品つまみの数々
和歌山県の中南部に位置し、和歌山市に次ぐ人口約7万人の田辺市。みなべ町と並ぶ梅の一大産地であり、野菜やフルーツなど農作物が豊富。田辺漁港を有し、新鮮な魚介も手に入る。そんな田辺市の中心地、JR紀伊田辺駅西側の、細い路地が集まる一角に、飲食店ひしめく魅惑のエリア〈味光路〉がある。昼間はしんとして、ひと気がないように感じるが、夕闇迫るころには赤提灯がポッと灯り、ネオンがキラキラし始める。
最初に暖簾をくぐったのは味わい深い店構えの〈とっくり〉。地元の人からもおすすめされた名店だ。「まずは食べてみて」と大将が出してくれたのは三杯酢で味つけされた海藻・ひろめ。やわらかくトロみがあり、ネバネバした独特の食感が楽しい。
そして紀伊半島沖でとれるモチモチプリプリな歯応えのカツオ。地元の熊野米でつくった日本酒もいただき、早くも和歌山の味覚に魅了される。
2軒目は、老舗の居酒屋〈しんべ〉へ。メニューが多すぎて目移りしてしまうが、ここで外せないのは名物「えび団子」。揚げたて熱々でえびたっぷり! ビールください! そして小ぶりなアワビみたいで旨みがぎゅっと詰まった“ながれこ”こと、トコブシもぺろり。田辺で食べる海産物は、どれもハズレがない。
まだまだ続く、愉快でディープなラビリンス
3軒目は路地奥に見つけた寿司・割烹料理の店〈初音〉。小さな店のカウンターは常にぎゅうぎゅうのうえ、ひっきりなしに客が入ってくる。その密度のせいか、やさしい大将の人柄のせいか、客も皆フレンドリーで、隣の人のお皿を見ながら同じものを注文。
さっくり揚がったヒメチの天ぷらは食感がよく、すでに腹いっぱいの胃袋にすっと入ってしまうおいしさだった。
最後に訪ねたのは夜だけオープンするカフェ〈ラピーヌ〉。先代が30年かけて集めたというアンティークが並ぶ、個性的ながら落ち着いた空間。ホテルの1階にあり、朝は朝食会場としてビジネスパーソンたちでひしめくというから驚き。こだわりのワインやカクテルが揃っており、コーヒーやケーキも楽しめる。
まだ飲みたい人も、夜にお茶をしたい人も、皆温かく受け止めてくれる懐の深さがうれしい。まだまだ行きたい店はたくさんあるけれど、もう一軒行こうか、ここでまったり過ごそうか、作戦会議をするあいだに夜は深まっていく……。