朝に多い → 心筋梗塞・脳梗塞・くも膜下出血・不整脈
月曜日に増える → 狭心症
冬に33%増 → 心臓死
病気が生じやすい“魔”の時間帯が存在することをご存じでしょうか?
脈拍や呼吸、睡眠はもちろん、細胞分裂やたんぱく質の製造まで、人体はさまざまなリズムにしたがって「いつ」「何を」おこなうかを精密に決めています。そのリズムの乱れが、健康を害する引き金になっているのです。
病気が生じやすいタイミングがあるのはなぜか? 薬が効く時間、効かない時間はどう決まるのか? それらを治療に活かす方法は?
時計遺伝子やカレンダー遺伝子の機能としくみから、体内時計を整える食品まで、生体リズムに基づく新しい標準医療=「時間治療」をわかりやすく紹介する『時間治療 病気になりやすい時間、病気を治しやすい時間』から、そのエッセンスをご紹介します。
*本記事は、『時間治療 病気になりやすい時間、病気を治しやすい時間』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
運動は、万病への「妙薬」である
古代ギリシアの医学の祖と称されるヒポクラテスは、「運動とは万病への妙薬である」と教えました。この考えは現在も受け入れられており、たとえば英語には「exercise is medicine」という表現があります。
運動には、筋肉をしなやかにして骨質を改善し、また骨量を増やす効果もあります。血圧を下げて肥満を抑制し、糖尿病の改善にも役立つ一方、炎症を抑えて免疫力をアップし、腹部大動脈瘤を縮小させる効果を発揮することもあります。
自律神経を整え、筋肉から複数の生理活性作用をもった物質を分泌して抑うつ気分を取り払い、もの忘れを改善して認知症を予防します。運動の効用はオールマイティで、まさに万病への妙薬であるといえるでしょう(図「運動は万病への妙薬」)。
運動(骨格筋収縮)は、(1)免疫力をアップし、(2)代謝の恒常性を維持し、(3)老化を遅らせ、(4)さまざまな疾病(下記)を予防する
疾病の例
脂質異常症、糖尿病、がん、心臓病、認知機能の低下、抑うつ、パーキンソン病、 アルツハイマー病
時間治療との関連における最近のトピックとして、「筋肉時計」の発見があります。
筋肉時計のはたらきいかんで、運動の効用にも薬と同様に、「よく効く時間」と「効かない時間」があることがわかってきました。運動効果は全身に影響し、筋肉だけでなく心臓や肝臓、脳や腸にもはたらきかけて病気を治し、疲労や病気からの回復力を高めて健康寿命を延ばしてくれます。
では、筋肉時計と運動の関係を見ていきましょう。