ノンフィクション作家の佐々涼子さんが亡くなりました。心よりご冥福をお祈りいたします。佐々さんの代表作のひとつ『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』についてJBpressがまとめたインタビュー記事をもう一度お届けいたします。(初出:2012/12/10)※内容は掲載当時のものです。
国際霊柩(れいきゅう)送還士の活動を描いた佐々涼子氏のノンフィクション作品が第10回 開高健ノンフィクション賞を受賞し、集英社より刊行された。タイトルは『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』である。
国際霊柩送還士の仕事とは、外国人や日本人の遺体を故国へ搬送することだ。海外で日本人が亡くなると、遺体は現地の葬儀社によって送り出され、航空便の「貨物」として日本に戻ってくる。空港に到着した遺体はおだやかな表情に整えられ、遺族の元に送り届けられる。一方、日本で亡くなった外国人は、宗教や習俗を尊重した形で日本から故国に送り出される。
そうした遺体搬送の仕事を専門に行っているのが、エアハース・インターナショナルという会社だ。佐々氏は約1年かけて創業者や社員、遺族などへの取材を重ね、時には遺体搬送の現場に立ち会い、エアハース・インターナショナルが手がける国際霊柩送還という仕事の本質に迫った。
「弔い」の本質が見えてきた
──こういう仕事をしている人たちがいることを知って驚きました。なぜエアハース・インターナショナルを取材しようと思ったのですか。
佐々涼子氏(以下、敬称略) 日本で亡くなった外国人の遺体はどうなるのか、海外で亡くなった日本人の場合はどう扱われるのか、という根源的な疑問が発端です。気がついたら取材を申し込んでいました。
ただ、最初は社長の木村利惠さんから「あなたに遺族の気持ちが分かるんですか。あなたに書けるんですか」と言われて断られました。取材の許可が下りたのは、取材を申し込んでから4年ぐらい経ってからです。
──なぜ取材を受けてくれるようになったのでしょう。
佐々 国際霊柩送還の現場では様々なトラブルが起きています。悪質な現地葬儀社もあって海外から遺体がひどい状態で戻ってきても、そのまま、ただ遺族のところへ運べばいいという業者も中にはいます。そのために、いつまでも心の傷を癒やせない遺族が多いんです。