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かつて最先端の半導体技術を誇っていた日本。だが、今や半導体市場の勢力図は大きく塗り替えられ、日本企業は外国企業に大きく水をあけられている。AI(人工知能)の「頭脳」であり、経済安全保障の「重要物資」とされる半導体製造において、日本は再び輝きを取り戻すことができるのか? 本連載では『半導体ニッポン』(津田建二著/フォレスト出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。日本と世界の半導体産業の「今」を概観しながら、世界市場の今後を展望する。
今回は、独自の戦略で成長軌道に乗ることに成功した日本の半導体企業にフォーカスし、躍進の背景を探る。
再び半導体の気運が高まる
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■ 成長し始めた日本のルネサスとソシオネクスト
政府とは全く無関係に成長し続けている企業がある。ルネサスエレクトロニクスとソシオネクストだ。従来のルネサスが大変身しており、日本ではファブレス半導体の最大手になったソシオネクストも続く。
先ほどルネサスが自由に動けるようになったと述べたが、その戦略を実行できたのは日立、三菱、NECなどの旧勢力を排除し、新生ルネサスを船出させたCEOの柴田英利氏の力が大きい。買収したIDT(旧Integrated Device Technology)のマネージャーを経営陣に加え、彼らの力を十分発揮できるようにルネサスチームに加えたことだ。
一般に企業を買収すると買収される側のモチベーションが下がり、この先自分たちはどうなるのだろうか、と不安に駆られ心配する。しかし、買収される側のマネージャーが親会社の経営陣に加わり、自由に発言し、提案が採用されると、不安とは逆にモチベーションが高まる。
ルネサスは米国や欧州だけではなく、アジア、中国、インドなどからも受注を取るようになり、世界を相手にビジネスを展開している。海外売上比率は80%近い。その後、アップルのiPhoneなどのデバイスの電源アダプター向けの電源ICを設計していたDialogを買収し、Dialogの有能な女性をHR(人事部門)のトップに据え経営陣に加えた。