生活保護の2024年上半期申請件数と増減率(前年同期比)の推移(図表:共同通信社)生活保護の2024年上半期申請件数と増減率(前年同期比)の推移(図表:共同通信社)

 2018年1月の開設当初から、全国対応、24時間365日、年中無休で生活保護に関する相談に乗っている行政書士事務所がある。大阪市にあるひとみ綜合法務事務所だ。どんな人が生活保護の受給対象となるのか。審査にはどれくらいかかるのか。申請時にどんな点が問題になるのか──。『2024年改訂版 わたし生活保護を受けられますか 全国10000件申請サポートの特定行政書士が事例で説明 申請から決定まで』(ペンコム)を上梓した行政書士の三木ひとみ氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──生活保護は、生活に困窮していれば誰でも申請できると書かれています。

三木ひとみ氏(以下、三木):生活保護は、無差別平等に困窮している人が申請できる制度です。資産、収入、経済援助など、活用できるものすべてを活用しても、最低生活を送ることができない状況であれば、日本国内に居住しているかぎりいつでもどこからでも申請できます。

 明日の食事にも困るような生活困窮状態にある人は、生活保護を受けるべきです。高齢者ばかりではなく、若い人でも生活困窮していれば頼れる制度です。

──生活保護の受給対象になる人も、そのかなりの数が申請前にあきらめてしまうと書かれています。

三木:生活保護というと、介護が必要な高齢者や障がいや病気をお持ちの方だけが使える制度だと思い込んでいる方が少なくありません。私自身もかつて、かなり生活困窮した時期がありましたが、自分は受給対象ではないと思っていました。

 生活保護が受けられる状況にありながら、生活保護を受けていない方が、日本にはとても多いと言われています。また、生活保護を受けると、その後何か不利益を被るのではないかと不安を覚えたり、生活保護受給者への偏見を持っていたりすることが申請を阻んでいる理由だと思います。

──役所で生活保護を申請すると、対象者かどうかの審査があります。どんなことを調べられるのですか?

三木:審査にかかる期間は人それぞれです。本当に切迫した経済状況であれば、審査の結果を待つのも難しいので、ちゃんとそのことを説明すれば、申請当日から貸付金を出してくれたり、食糧支援をしてくれたりといった臨時の救済措置もあります。

 審査期間中に何をするのかというと、主に資産調査です。役所が申請者の同意を取って、その申請者が口座を持っている金融機関に調査を依頼します。調査期間は最長30日と決まっていて、極力2週間以内に受給の対象かどうかを決定する必要があります。3日で受給が決まったケースもあり、これが私の知る限り最短の決定です。

 お金がなくなった時点で申請すれば、保護費の支給対象になりますが、この「お金がなくなった時点」を、私は「5万円くらいしか残っていない状況」と言っています。後から資産があることが明らかになると、保護が停止になることもあります。また、本当にそこに住んでいるのかという居住実態調査もこの間に行われます。

生活保護の申請件数生活保護の2024年上半期申請件数と増減率(前年同期比)の推移(図表:共同通信社)

──生活保護を受け取りたい人、子どもに生活保護を受け取ってほしい人、きょうだいに生活保護を受け取ってほしい人など、さまざまなタイプの方からの相談があると書かれています。