
長きにわたり、言葉を持つ動物は人間だけだと考えられてきた。近年、その通説を覆す大きな発見があった。シジュウカラが言葉を操り、コミュニケーションをとっていることが科学的に証明されたのだ。
世紀の大発見をしたのは、鈴木俊貴氏(東京大学先端科学技術研究センター准教授)。シジュウカラの言語研究の過程とその意義、そして新しい「動物言語学」という学問について、『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)を上梓した鈴木氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──「シジュウカラは言葉をしゃべっているかもしれない」と思ったきっかけを教えてください。
鈴木俊貴氏(以下、鈴木):シジュウカラの鳴き声について本腰をいれて研究を始めたのは大学4年生の頃です。
それ以前から、シジュウカラの鳴き声がほかの鳥の鳴き声と比較してバリエーションに富んでいるということが気にかかっていました。「どうしてこんなにたくさんの種類の声を出すのだろう」という素朴な疑問から研究がスタートしました。
研究を進めていくと、どうやらシジュウカラは特定の状況に応じて鳴き声を使い分けているようだということがわかってきました。
ヘビが来たときは「ジャージャー」、餌を見つけたときは「ヂヂヂヂ」、タカを見ると「ヒヒヒ」。鳴き声が、ただ感情を表すだけではなく、きちんとした言葉になっているのではないかと考えるようになりました。
──シジュウカラは鳥の中でも語彙が多いということでしょうか。
鈴木:はい。日本に生息するカラ類としては、シジュウカラ以外にコガラ、ヤマガラ、ヒガラ、ハシブトガラが挙げられます。
僕はこの5種類のカラ類の鳴き声は一通り録音していますが、やはりシジュウカラの鳴き声は圧倒的に種類が豊富です。現時点(2025年2月現在)で録音できているだけでも200パターン以上の鳴き声が確認できています。
それほどまでに鳴き声にたくさんのバリエーションが見つかっている動物は、人間とシジュウカラ以外にはいないと思います。
──パターンは少ないかもしれませんが、街中にいるカラスやスズメも言葉を使ってコミュニケーションをとっているのですか。
鈴木:その可能性はもちろんありますが、まだ明らかになっていません。なぜかと言うと、研究されていないからです。