スズキの軽スーパーハイトワゴン「スペーシア」をベースに、アウトドア志向を強めたモデル「スペーシアギア」が、まもなく発売される。
「スペーシアギア」は、先代「スペーシア」シリーズにはラインアップされていたが、2023年11月に「スペーシア」がフルモデルチェンジされてからは設定されていなかった。そのため、発売を待ち望んでいた人もおられるだろう
販売店では、2024年7月下旬から価格を明らかにして、新型「スペーシアギア」の予約受注をすでに開始している。正式な発表日を販売店に尋ねると、「2024年9月20日頃になりそう」とのことだ。さらに、販売店へ試乗車が配備されるのは、2024年9月下旬以降になるようだ。
記事掲載時点では、メーカーのティザーサイトで一部装備などは公開されているものの、価格など具体的な情報については未公表だ。そこで、当記事では筆者が独自に入手した価格やパワートレイン、装備などの具体的な情報をお伝えするとともに、ベースの「スペーシアカスタム」と比べた際の割安感や、ライバルのダイハツ「タントファンクロス」、三菱「デリカミニ」などとの比較も交えてお伝えしたい。
詳細は後述するが、まず新型「スペーシアギア」の価格と主要装備は、以下のとおりになる。
■新型「スペーシアギア」の価格
-2WD-
・NAエンジン搭載車:195万2,500円
・ターボエンジン搭載車:203万7,200円
-4WD-
・NAエンジン搭載車:207万2,400円
・ターボエンジン搭載車:215万7,100円
■新型「スペーシアギア」の特徴や主要装備
-外観-
「スペーシアギア」専用の外装パーツ、14インチ専用アルミホイール、ルーフレールなど
-内装-
撥水加工ファブリックシート、防汚タイプのラゲッジフロア、マルチユースフラップ、ステアリングヒーター、電動パーキングブレーキなど
新型「スペーシアギア」の外観は、全体的には先代モデルに近いデザインだ。フロントフェイスには丸型ヘッドランプが採用され、ボディの前後は低い位置にアンダーガード風の樹脂パーツが備わる。また、ボディ側面にブラックの樹脂パーツやルーフレールが標準装備されるなども先代と同じだ。
参考として、先代「スペーシアギア」のフロントデザイン
新型「スペーシアギア」のフロント、リアデザイン。全体的な雰囲気は先代と同じだが、グリルやバンパーなど細部のデザインは異なる
先代モデルと異なるのは、フロントグリルやバンパーなどの意匠だ。先代モデルのグリルは緻密な形状のデザインだったが、新型は大胆な縦格子状となっている。
新型「スペーシアギア」に標準装備の14インチアルミホイールは、「スペーシアカスタム」とは異なる専用デザインが採用されている
新型「スペーシアギア」には「ルーフレール」が標準装備されるのも、注目ポイントのひとつだ
室内の基本的なデザインは「スペーシア」や「スペーシアカスタム」と共通だが、インパネの色彩などは「スペーシアギア」専用になる。シート生地には、撥水加工を施したファブリックが採用されていて、荷室の床にも汚れを落としやすい加工が施されている。
新型「スペーシアギア」のインパネ周りはカラーリングが「スペーシアギア」専用になる
新型「スペーシアギア」の荷室の床は、アウトドアモデルらしい防汚タイプだ
また、現行「スペーシア」で新たに採用された後席装備、「マルチユースフラップ」も「スペーシアギア」に標準装備されている。上級ミニバンに備わる「オットマン」のようにふくらはぎを支えられて、反転させれば後席の上に置いた荷物が床に落ちにくくなるという機能も備える。
新型「スペーシアギア」には、「オットマン」のような機能を持つ「マルチユースフラップ」が後席に装備されている(画像は「スペーシア」の後席)
そのほかの収納設備も、「スペーシア」と同様に豊富だ。助手席の前側には、さまざまなモノを置ける大きなトレイが備わる。その下には、ボックスティッシュなどが収まる引き出し式の収納設備やカップホルダー、さらにその下側にはグローブボックスを装備。また、助手席の座面下にも大きなボックスが備わり、ハンドルが装着されていて車外に持ち出せるようになっているのもスズキ車の特徴だ。
「スペーシアギア」のグレードは1種類のみだが、エンジンはNAエンジンとターボエンジンを選べる。どちらも、マイルドハイブリッドだ。また、駆動方式はFFと4WDをラインアップしている。つまり、単一グレードではあるが、選択肢は合計4種類になる。
動力性能や燃費などは、基本的に「スペーシアカスタム」と共通だ。NAエンジンの動力性能は、最高出力が49PS(6,500rpm)、最大トルクは5.9kg-m(5,000rpm)。ターボエンジンは、同64PS(6,000rpm)、10kg-m(3,000rpm)になる。
「スペーシアカスタム」のターボエンジン搭載車は、1LのNAエンジンを積むクルマのように自然な感覚で走れて、660ccの非力さを感じさせない
WLTCモード燃費は情報が得られていないのだが、おそらく「スペーシアカスタム」と同じ値になるだろう。2WDはNAエンジンが23.9km/L、ターボエンジンは21.9km/Lになるものと推測される。マイルドハイブリッドの搭載によって、全高が1,700mmを超えるボディにスライドドアを装着した軽スーパーハイトワゴンとしては、すぐれた燃費値だ。
「スペーシアギア」のNAエンジン搭載車(2WD)の価格は、195万2,500円。「スペーシアカスタム」の「ハイブリッドXS」グレードは、ほぼ同じ装備が採用されて価格は199万5,400円なので、「スペーシアギア」は4万2,900円安いことになる。つまり、「スペーシアギア」のアウトドアモデルとしてのパーツやルーフレールは、「スペーシアカスタム ハイブリッドXS」のエアロパーツや15インチアルミホイールに比べて割安ということになる。「スペーシアギア」は、「スペーシア」シリーズの買い得モデルとなりそうだ。
また、「スペーシアギア」のターボエンジン搭載車(2WD)の価格は203万7,200円。NAエンジンに比べて8万4,700円高いが、最大トルクはNAエンジンの1.7倍にアップする。ターボエンジンなら、排気量が1L前後のNAエンジンを積んでいるような感覚で運転できる。いっぽう、WLTCモード燃費の悪化率はわずか8%なので、ターボエンジンは効率にすぐれる。もし、販売店の試乗車などを使って登り坂を走るなどして、パワー不足を感じるようならば、ターボエンジンを検討するとよいだろう。
■新型「スペーシアギア」の価格
-2WD-
・NAエンジン搭載車:195万2,500円
・ターボエンジン搭載車:203万7,200円
-4WD-
・NAエンジン搭載車:207万2,400円
・ターボエンジン搭載車:215万7,100円
「スペーシアギア」のライバル車としては、ダイハツ「タントファンクロス」や三菱「デリカミニ」があげられる。
「タントファンクロス」は、NAエンジンを搭載する2WDの価格が168万8,500円。「スペーシアギア」にNAエンジンを搭載する2WDの195万2,500円に比べて、26万4,000円安い。
アウトドアな雰囲気の内外装が採用されている「タントファンクロス」は、2022年に登場したモデルだ
ただし「タントファンクロス」は、車間距離を自動制御できる運転支援機能が5万5,000円のオプション設定になる。また、後席の背もたれを前側に倒すと座面も下がり、ワンタッチで広い荷室に変更できる機能は、「タントファンクロス」の設定にともなって省かれた。背もたれは、単純に前側へ倒れるだけなので、荷室後端のデッキボードを高い位置に装着しないと、荷室床面に段差ができることに注意したい。
さらに、「スペーシアギア」では「マルチユースフラップ」や「ヘッドアップディスプレイ」、エアコンの冷気を後席に送る「スリムサーキュレーター」なども装着されており、装備の充実度にも違いが生じる。
したがって、実質的な価格差は前述の26万4,000円ほど開かないが、「タントファンクロス」は左側の前後ドアを両方開くと開口幅が1,490mmまで拡大する「ミラクルオープンドア」が備わっている。そのため、乗降性は抜群だ。
「タントファンクロス」の「ミラクルオープンドア」
三菱「デリカミニ」も、アウトドア志向の軽スーパーハイトワゴンだ。「デリカミニ」の4WDモデルは、最低地上高が160mmと高めに設定されているので、悪路の凹凸や駐車場の段差などを乗り越えやすい。さらに、4WDモデルはサスペンションの設定や装着タイヤも専用にセッティングされており、乗り心地は柔軟で走行安定性とのバランスにもすぐれている。
「デリカミニ」は、特に4WDモデルに力を入れて開発されている
「デリカミニ」のグレード構成は、NAエンジンのGと上級のGプレミアム、ターボのTと上級のTプレミアムになる。このうち、「スペーシアギア」のNAエンジンに相当する装備を採用したグレードは、上級のGプレミアムになる。価格は、2WDで201万8,500円なので、「スペーシアギア」の195万2,500円に比べると少し高い。
また、「デリカミニ」は前述のように4WDモデルが入念に開発されている。そのため、4WDを選ぶと車重が1トンを上まわるので、ターボエンジンがほしくなる。ベストグレードは、Tプレミアムの4WDで走りと装備はかなり充実するが、価格は227万1,500円に達する。
ライバル車との比較をまとめると、価格の安さやすぐれた乗降性などを重視するなら「タントファンクロス」。充実した快適装備や便利な機能がほしいなら、「スペーシアギア」。4WDモデルを購入予定で、高機能な上級仕様を求めるなら「デリカミニ」という選び方がよいだろう。
そして今後、軽自動車で国内販売ランキング1位のホンダ「N-BOX」にも、アウトドア志向の「N-BOXジョイ」と呼ばれるモデルが加わる予定だ。詳細は不明だが、ヘッドランプは標準タイプと同様の丸型で、撥水加工のシート生地、汚れを落としやすい荷室の加工などが施される。価格は、ライバル車に対抗するために割安に抑えられるだろう。
そうなると、「スペーシアギア」「タントファンクロス」「デリカミニ」「N-BOXジョイ」と、軽スーパーハイトワゴン4車のアウトドアモデルが出そろうことになる。
今後、軽スーパーハイトワゴンのアウトドアモデルは激戦になることが予想される。そのため、時間に余裕があるなら「N-BOXジョイ」が正式発表されてから、自分に合うクルマを探すのもよいだろう。