ひとりの気ままなドライブでも、仲のいい友達や家族、そして恋人とのドライブでも、車の中で好きな音楽をかけながら走ると楽しさが倍増する。ひと昔前はCDやMD/カセットテープなどを車内に持ち込むのが一般的だったが、最近の音楽リスニングの主役となっているのは、スマートフォン(スマホ)やデジタルオーディオプレーヤー(以下、DAP)だ。そこで、「手持ちのスマホやDAPを活用し、車の中で手軽に音楽を聴く4つの方法」をご紹介しよう。
現在のスマホやDAPは、Bluetoothによるワイヤレス音声伝送機能を備えた製品がほとんど。そして、新車販売される国産・輸入自動車の純正カーオーディオ(カーナビ)の多くは最初からBluetooth接続機能が搭載されており、スマホやDAPを直接Bluetooth接続して音楽を鳴らすことができる。後述するFMトランスミッターと比べて音質に期待できるし、ノイズにも断然強い。
車のオーディオユニットやナビにBluetooth機能が搭載されていれば、手軽にワイヤレス接続してスマホ内の音楽を楽しむことができる
なお、Bluetoothで接続するなら、高音質コーデックであるaptXやAAC方式で接続したいところだが、その場合は音楽を送信する側のスマホ&DAPと車両側が同じコーデックに対応していなければならない。筆者が調べた限り、上記のような高音質コーデックに対応している車種はあまり存在しないようだ(2024年2月時点)。
車内で高音質コーデックによるBluetooth再生を楽しみたい場合は、ディーラーオプションやカーオーディオメーカーから発売されているカーオーディオ(カーナビ)を選択して、後付けで対応できるか環境をチェックしよう。
中古車など比較的年式の古い車の場合は、純正でBluetooth接続機能がついていないことがほとんどだ。そのような車両ではオーソドックスに車載用のFMトランスミッターを使用する方法も、いまだに人気がある。現在ではレンタカーやカーシェアリングの人気が上昇しているが、大体どんな車にもFMラジオは付いているので、FMトランスミッターを1台持っていれば、いろいろな車で手軽に使い回せる。
車載のFMチューナーへ音楽を伝送して、手軽に音楽を再生できるようになるFMトランスミッター
基本的な使用方法としては、FMトランスミッター本体を車内にある「シガーソケット」と言われる部分に挿入して、付属のケーブルをスマホやデジタルオーディオプレーヤーのヘッドホン出力に接続すればよい。あとはFMラジオを付けてトランスミッター指定の周波数に合わせ、スマホ側で楽曲の再生操作を行えば、その音楽を車内に鳴らすことができる。
「シガーソケット」のない車でFMトランスミッターを使いたい場合は、USB端子から給電できるタイプのトランスミッターを選べばよい。
なお近年は、Bluetooth接続機能に対応する製品が人気。Bluetooth機能を搭載するスマホやDAPから、ワイヤレス接続でFMトランスミッター側へ音声伝送が可能となる。さらに、スマホだけでなく、音楽ファイルが入ったmicroSDカードやUSBメモリーを本体に挿入して音楽再生できる製品や、スマホと連携したハンズフリー機能を備えるモデルも登場していて、とにかく多機能に進化している。「iPhone 7」以降のiPhoneなど、3.5mmステレオミニ端子が廃止されたスマホでは、Bluetooth接続タイプもしくはLightning対応の製品が使いやすいだろう。
FMトランスミッターは微弱な電波を発するので、微弱無線設備適合を証明するELPマークを取得した製品を選ぶのがよい(画像左)。またシガーソケットの電圧は、一般車12Vとトラック24Vに対応する製品がある。トラックなどで使用する場合は24V対応のものを選ぶこと(画像右)
ただ音質については、FM電波を使っているので、上述のカーオーディオユニットとのBluetooth接続や、次項でご紹介するケーブルでの有線接続と比べるとどうしても劣るのは否めない。また、トランスミッターの設置場所によってはノイズが発生する場合もある。ただし、手軽かつ、ほぼすべての車で使用することができるのは大きな強み。なおこれは余談だが、Bluetooth接続機能をもつトランスミッターの中には、高音質コーデックであるaptXやAAC方式に対応したものもあるが、最終的にFM電波を経由するので、音質向上はさほど望めないと筆者は考えている。
製品選択のコツとしては、前者のように有線で接続する単機能タイプを選ぶか、後者のような多機能なものを選ぶかをまず決めればよいだろう。以下に、価格.comで取り扱いのある製品の中から代表的なものをご紹介しよう。
Bluetooth接続に対応するソケット一体型のFMトランスミッター。トランスミッター本体とヘッドユニットを別売のオーディオケーブルで接続して、Bluetoothレシーバーとして使用することもできる。本体から曲の再生、一時停止、曲送り、曲戻し、音量調節などの操作が可能なほか、アンプボリュームも内蔵している
Bluetooth接続に対応するFMトランスミッター。USBメモリーとmicroSDカードからも音楽ファイルを再生できるほか、外部デバイス充電用のUSB端子も備えており、音楽再生中にスマホやオーディオプレーヤーなどの充電を行うことも可能。さらに、電話がかかってきたときにはハンズフリー通話もできる
「シガーソケット」ではなく、USB端子に挿入・給電するタイプのFMトランスミッター。そのほかの使い方は「シガーソケット」給電タイプとまったく同じ。スマホとはBluetoothで接続するだけでとても簡単に使える
スマホやDAPの多くは、ヘッドホン・イヤホン出力用の3.5mmステレオ端子を装備している。もし車両側のカーオーディオ(ナビ)に、ライン入力端子(AUX IN)が備わっていれば、両端に3.5mmステレオミニ端子を備えるケーブルを使用して、スマホ&DAPとカーオーディオ(ナビ)を有線接続する伝統的なスタイルをとるのもいいだろう。購入するのはケーブルのみでよいし音質もよい。有線というと「レガシーなスタイル」と思う方もいるかもしれないが、単純な接続で高音質を実現できる方法としては、やはり安定感がある。
音質のクオリティを求めるなら、やはり基本的な有線接続スタイルがベター。カーオーディオ向けに開発された専用ケーブルもあるくらいだ
なおせっかくであれば、音のよいオーディオ用ケーブルを利用して、再生品質にもこだわりたいところ。車の中はとにかくノイズの多い場所なので、ノイズ耐性の高いオーディオ用ケーブルを導入すると、とにかく音質向上効果が大きい。以下に、その一例をご紹介しよう。
端子部分に24K金メッキを施し信号劣化を防止する仕様のモデル。高純度99.996%のOFCケーブル(無酸素銅)を採用し、信号の歪みの発生や伝送ロスを抑える
線材に高純度OFC(無酸素銅)を採用したモデル。接触抵抗を抑え、サビなどによる経年変化を抑制する効果のある24金メッキプラグを採用
OFC(無酸素銅)とシルバーコートOFCのハイブリッド構造を採用したモデル。外来ノイズに強い高剛性メタルプラグを使用。しなやかな素材を採用することで車室内での取り回しやすさを上げているほか、最大90℃までの耐熱仕様。さらに接触抵抗が少なく経年変化に強い金メッキ接点仕上げとしている
なお、2016年に発売された「iPhone 7」以降のiPhone やAndroidスマホの一部は、ヘッドホン/イヤホン用の3.5mmステレオミニ端子が搭載されていない。このような場合に利用するのが、LightningまたはUSB Type-C端子を3.5mmステレオミニ端子に変換するアダプターだ。iPhoneの場合はアップル純正品やアップルの公式認定品である「MFi認証」のサードバーティー製モデルを選択しよう。Androidスマホでは、Type-C to 3.5mm音声変換アダプタを利用できるが、スマホとの相性もあるので購入前に仕様を確認しておくと安心。
Lightning端子を3.5mmステレオミニ端子に変換する、アップル純正の変換コネクタ。Lightning端子搭載機器に接続することで、さまざまな外部機器と3.5mmステレオミニ接続できるようになる
サードパーティー製のLightning-3.5mmステレオミニ端子に変換する変換ケーブル。アップルの正規ライセンス「Made for iPhone/iPad/iPod」を取得している。パウダーを混ぜた特殊光沢塗装で、高級感のある外観もポイント
USB Type-C端子を3.5mmステレオミニ端子に変換するアダプター。最大96kHz/24bitのハイレゾ信号にも対応する
また、カーオーディオ/カーナビにUSB端子が装備されているケースでは、基本的にUSBメモリーを接続してメモリー内に保存された音源を再生できるが、なかにはスマホやDAPをUSBケーブルで有線接続して、端末内の音楽を鳴らすことができるものもある。
現在はBluetooth接続が主流ということもあり、iPhoneをLightning to USB Type-Aケーブルで接続するような車両はほとんどなくなってきてはいるものの、長年親しむ愛車に乗っていてこのスタイルを使っている人は今も多いだろう。Androidスマホの場合はUSB Type-C to Type-Aやmicro USB to USB Type-Aケーブルで接続することになるが、いずれにせよこのスタイルは、カーオーディオ/カーナビ側がUSB経由によるスマホ内音楽ファイルの再生機能に対応していることが必須。車両によって非対応の場合もあるので、そのあたりの仕様は事前に確認が必要となる。
本記事は車の中で“手軽に”スマホから音楽再生する方法を紹介しているが、普段使いのBluetoothスピーカーを持っているなら、それを車内に置いてワイヤレス再生するのだってアリだ。車にBluetoothスピーカーを持ち込む最大のメリットは、車のオーディオ環境に左右されずに自分の好きな音で音楽を聞けること。
バッテリー搭載のポータブルスピーカーなら、友達の車でも親の車でもレンタカーでも手軽に持ち込めて、車に乗り込んでからすぐにスマホと接続して音楽を鳴らし、迅速に走り出せる。特に、持ち運びが楽で車内に置きやすい小型モデルがよい。また、最近発売される新車の多くがスマホなどの充電用にUSB端子を搭載するので、BluetoothスピーカーをUSB充電しながら音楽再生することもできる。
コンパクトなモデルを選んで、ドリンクホルダーに設置すると便利。設置してビビリ音が出てしまうときは、ドリンクホルダーとスピーカーの間にハンドタオルなどを挟んで予防しよう。そのほか、ストラップ付きでシート横にぶら下げられる製品なんかもよい
なお、車の中でBluetoothスピーカー再生する場合はエンジン音に負けない音量が欲しいので、持ち運びやすい小型モデルでありつつもアンプの出力が大きく、大音量でも音が歪みにくい製品を選びたい。また、車内の限られた空きスペースに設置する場合が多いので、ステレオ再生の品質にばっちりこだわる必要はないだろう。モノラル再生のモデルも候補としてアリだし、360°サウンドのモデルなども含めて、設置場所や乗車人数に合わせて好みで選ぼう。これらの要素を踏まえた車載専用のBluetoothスピーカーも発売されているので要チェックだ。
ライフスタイルシーンで絶大な人気を持つB&O PLAYの小型Bluetoothスピーカー。すばらしく美しいデザインの筐体が魅力で、しかもIP67仕様の防じん・防水仕様。カラーバリエーションも多く用意されている。音が360°全方向に広がるので、設置場所が自由なのもうれしい
ちなみに近年は、スマホ側にもカーオーディオ/カーナビと連携しやすくなる機能が登場している。iPhone(iOS)の「CarPlay」、Androidの「Android Auto」などがそれだ。以下は、日産自動車の公式動画で、CarPlayとAndroid Autoの使用イメージがわかりやすい。
CarPlayは、iPhoneをカーナビやディスプレイオーディオ(カーナビ機能を省略したモニター付きのカーオーディオ)に接続するための規格。CarPlay対応のカーナビとiPhoneをLightningケーブルまたはBluetoothで接続すると、カーナビの画面デザイン(ユーザーインターフェイス)がCarPlay仕様に変わり、iPhoneのナビ機能を利用したり、iPhone内の音楽の再生が行えるようになる。Siriにも対応するので、音声操作も可能。
Android Autoも、CarPlayに近い機能を持つ規格。こちらも、Android搭載スマホをUSB接続またはBluetooth接続することで、Androidスマホのナビ機能を使ったり、端末内の音楽再生を行うことができるようになる。ちなみにAndroid Autoは専用アプリをインストールしたAndroidスマホ単体で動作するので、カーナビ側が同規格に対応している必要はない。
さて、今回は車の中で“手軽に”音楽再生する方法として、純正のカーオーディオやカーナビと手持ちのスマホ/DAPを組み合わせることを想定して紹介してきた。しかしせっかくなので、車内で音楽を徹底的に高音質で聴けるアイテムも簡単にご紹介しよう。カーオーディオ/AVメーカーから発売されている、後付けタイプのカーオーディオ/カーナビである。
こういったカーオーディオ/カーナビは、高音質なハイレゾ音源の再生ができたり、先述したBluetoothの高音質コーデックに対応していたりするモデルもある。また、音楽ストリーミングサービスに対応しているものもあるなど、とにかく機能が先進的だ。もちろん後付けのAVユニットを導入するのは手軽とはいかないが、車内にいながらにして高クオリティな音楽を聴くことができるようになるので、音質を最優先にこだわりたい人はぜひ注目すべし。
ハイレゾ音源の再生に対応したカーナビ。9V型HDモニターを搭載。ラージサイズのメインユニットとネットワークスティックがセットになっている。車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」に対応するほか、HDMI端子にスマートフォンやAmazon「Fire TV Stick」などを接続可能。道路情報や施設情報を自動でダウンロードする、「自動地図更新」機能も搭載する
ハイレゾ音源の再生など、音楽再生機能が非常に充実したカーナビ。高精細な映像表示を実現する、9V型HDモニターを搭載。192kHz/24bit(PCM)や11.2MHz(DSD)など、情報量の多いファイルも再生できるほか、「MQA」と呼ばれるフォーマットに対応。Bluetoothでは高音質コーデックLDACにも対応する。HDMI入力を持っているため外部機器との接続も簡単で、Android端末の画面をそのまま映し出す「Wireless Mirroring」機能も使用できる
レンタカーやカーシェアリングの人気が上昇していること、そしてスマホやDAPなどの手軽な音楽再生デバイスの普及によって、車の中で音楽を聴く方法も進化している。車好きな皆さんには、ぜひとも車内で手軽に好きな音楽を楽しみながら、ステキなドライブ時間を満喫してほしい。