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複素数の範囲での因数分解の例題4問

複素数の範囲での因数分解についてわかりやすく紹介します。

複素数の範囲で因数分解する方法

まずは,2次式 ax2+bx+cax^2+bx+c を複素数の範囲で因数分解することを考えます。

実は,二次方程式 ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0 の解を x=α,βx=\alpha,\beta とすると,

ax2+bx+c=a(xα)(xβ)ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)

と因数分解できます。α,β\alpha,\beta は二次方程式の解の公式から計算できます。

例題1(二次式)

x22x+3x^2-2x+3 を複素数の範囲で因数分解せよ。

解答

x22x+3=0x^2-2x+3=0 の解は解の公式より x=1±2ix=1\pm\sqrt{2}i

よって,複素数の範囲で因数分解すると,

x22x+3=(x12i)(x1+2i)x^2-2x+3=(x-1-\sqrt{2}i)(x-1+\sqrt{2}i)

ちなみに,x22x+3x^2-2x+3 という式は整数の範囲ではこれ以上因数分解できません。

複素数の範囲で因数分解とは

  • 複素数の範囲で因数分解するとは,複素数係数の多項式の積に(できるだけ細かく)分解する,という意味です。

  • 整数の範囲で因数分解するとは,整数係数の多項式の積に(できるだけ細かく)分解する,という意味です。因数分解の問題で特に指示がない場合は「整数の範囲で」因数分解すればOKです。

どの範囲で因数分解するか? を意識しながらもう1問例題を解いてみましょう。

例題2(四次式)

x4x22x^4-x^2-2 を「整数の範囲で」「実数の範囲で」「複素数の範囲で」それぞれ因数分解せよ。

解答
  • x2x^2 をひとかたまりと見ることにより,
    x4x22=(x22)(x2+1)x^4-x^2-2=(x^2-2)(x^2+1)
    と因数分解できる。整数の範囲ではここまで。

  • さらに,実数の範囲では,(x+2)(x2)(x2+1)(x+\sqrt{2})(x-\sqrt{2})(x^2+1)
    と因数分解できる。

  • さらに,複素数の範囲では, (x+2)(x2)(x+i)(xi)(x+\sqrt{2})(x-\sqrt{2})(x+i)(x-i)
    と因数分解できる。

このように,複素数の範囲では,多項式は必ず一次式の積に分解できます。代数学の基本定理とその初等的な証明

発展例題

例題3

xn1x^n-1 を複素数の範囲で因数分解せよ。

解答

xn1=0x^n-1=0 の解は,(ζ=e2πin\zeta=e^{\frac{2\pi i}{n}} とおくと)ζ,ζ2,,ζn=1\zeta,\zeta^2,\cdots,\zeta^n=1nn 個である。

よって,

xn1=k=1n(xζk)=(xζ)(xζ2)(xζn)x^n-1=\displaystyle\prod_{k=1}^n(x-\zeta^k)=(x-\zeta)(x-\zeta^2)\cdots (x-\zeta^n)

例題4

x2+y2+z2xyyzzxx^2+y^2+z^2-xy-yz-zx を複素数の範囲で因数分解せよ。

解答

ω=1+3i2\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2} とおく(ω2=13i2\omega^2=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2} )と,

x2+y2+z2xyyzzxx^2+y^2+z^2-xy-yz-zx =(x+ωy+ω2z)(x+ω2y+ωz)(x+\omega y+\omega^2z)(x+\omega^2y+\omega z)

(xxについての二次方程式を解くことで導出できますし,1の三乗根オメガの性質を用いて右辺を展開することでも証明できます)

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT130では,例題4の別解や計算ミスを減らすためのコツを紹介しています。

例題4の式,何かの役に立つわけではありませんが,美しいです。