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多項式関数の性質の活用~京大特色2020から

京大特色2020 第3問

整数 k,nk,n0k<n0 \leqq k < n を満たすとする。以下の設問に答えよ。

  1. f(x)=xnf(x)=x^ng(x)=xkg(x)=x^k とする。1x<y1 \leqq x < y に対して,次の不等式がなりたつことを示せ。 g(x)g(y)f(x)f(y)<1x \left| \dfrac{g(x)-g(y)}{f(x)-f(y)} \right| < \dfrac{1}{x}

  2. f(x)f(x)g(x)g(x) を実数係数の整式で,f(x)f(x) の次数を nn とし,g(x)g(x) の次数を kk 以下とする。f(x0)f(x_0) が整数となるすべての実数 x0x_0 に対して g(x0)g(x_0) も整数となるとき,g(x)g(x)xx によらず一定の整数値をとることを示せ。

解答

微分を用いて証明します。うまいこと新たな FF を作り,その FF の評価を通して元の不等式を示します。

(1)

証明

xx を固定する。

F(y)=x(xkyk)(xnyn) F(y) = x(x^k-y^k) - (x^n-y^n) とおく。

F(y)=nyn1kxyk1 F'(y) = ny^{n-1} -kxy^{k-1}

k<nk < n より kn1k \leqq n-1 である。また,x<yx < y より nyn1>ny×yn2>kxyk1 n y^{n-1} > n y \times y^{n-2} > k x y^{k-1} であるため F(y)>0F'(y) > 0 である。

よって F(y)F(y)y>xy > x で単調増加である。

ゆえに y>xy > xF(y)>F(x)=0F(y) > F(x) = 0 である。つまり x(xkyk)(xnyn)>0 x(x^k-y^k) - (x^n-y^n) > 0 である。これを整理することで xkykxnyn<1x \dfrac{x^k-y^k}{x^n-y^n} < \dfrac{1}{x} である。(x<yx < y より xnyn<0x^n-y^n < 0 であることに注意)

左辺は正であるため xkykxnyn<1x \left| \dfrac{x^k-y^k}{x^n-y^n} \right| < \dfrac{1}{x} が従う。

(2)

証明のステップ
  1. 十分大きい xx について f(x)(定数) xnf(x) \fallingdotseq (\text{定数}) \ x^n であるため,(1) と同じような不等式があるはずである。とくに条件を強く取りなおして g(x)g(y)f(x)f(y)<1 \left| \dfrac{g(x)-g(y)}{f(x)-f(y)} \right| < 1 という不等式を証明する。
  2. f(x)=Nf(x)=Nf(y)=N+1f(y) = N+1 とすれば g(x)g(y)<1|g(x)-g(y)| < 1 という不等式になる。仮定より g(x),g(y)g(x),g(y) は整数値になるため,g(x)=g(y)g(x) = g(y) が得られる。これを元に背理法を用いて証明をする。

ステップ1

多項式関数の極の数はその次数より小さい。ゆえに xx を十分大きくとると f(x),g(x)f(x), g(x) は単調増加もしくは単調減少する。

fff-f に取り換えた場合, g(x)g(y)f(x){f(y)}=g(x)g(y){f(x)f(y)}=g(x)g(y)f(x)f(y)\begin{aligned} &\left| \dfrac{g(x)-g(y)}{-f(x)-\{ - f(y)\}}\right|\\ &= \left| \dfrac{g(x)-g(y)}{- \{ f(x)- f(y)\}}\right|\\ &= \left| \dfrac{g(x)-g(y)}{f(x)- f(y)}\right| \end{aligned} であるため,f(x),g(x)f(x),g(x) は十分大きな xx で単調増加するとしてよい。このことは f(x),g(x)f(x),g(x) の最高次係数が正であることと同値である。

G(y)={g(x)g(y)}{f(x)f(y)} G(y) = \{ g(x) - g(y) \} - \{ f(x) - f(y) \} とおく。

G(y)=g(y)f(y) G'(y) = g'(y) - f'(y) である。さて k<nk < n より G(y)G'(y) の最高次は n1n-1 次でその係数は na-n af(x)f(x) の最高次係数を aa とおいた)である。

前述した通り,a>0a > 0 であるため na<0-na < 0 である。よって G(y)G'(y) は十分大きい yy について負である。

xx を十分大きく取りなおすことで y>xy > xG(y)<0G'(y) < 0 とできる。

よって y>xy > xG(y)>G(x)=0G(y) > G(x) = 0 である。

こうして {g(x)g(y)}{f(x)f(y)}>0 \{ g(x) - g(y) \} - \{ f(x) - f(y) \} > 0 である。

f,gf,gf(x)f(y),g(x)g(y)<0f(x) - f(y) , g(x) - g(y) < 0 であるため 0g(x)g(y)f(x)f(y)<1 0 \leqq \dfrac{g(x) - g(y)}{f(x) - f(y)} < 1 は従う。

ステップ2

以下 g(x)g(x)kk 次の多項式関数(k>0k > 0)ではないと仮定して矛盾を導く。

NN を十分大きい整数とする。

前の設定から f(x)f(x) は十分大きい xx で単調に増加する。また多項式関数であるため,limxf(x)=\displaystyle \lim_{x \to \infty} f(x) = \infty である。よって f(x)=Nf(x) = N を満たす実数 xNx_N が存在する。

同様に f(xN+1)=N+1,f(xN+2)=N+2,f(x_{N+1}) = N+1, f(x_{N+2}) = N+2 , \cdots となるように xN+1<xN+2<x_{N+1} < x_{N+2} < \cdots を定める。

仮定より g(xN),g(xN+1),g(x_N), g(x_{N+1}) , \cdots は整数になる。

不等式の左辺に x=xNx = x_Ny=xN+1y = x_{N+1} を代入すると g(xN)g(xN+1)f(xN)f(xN+1)=g(xN)g(xN+1)N+1N=g(xN)g(xN+1)\begin{aligned} &\dfrac{g(x_N) - g(x_{N+1})}{f(x_N) - f(x_{N+1})}\\ & = \dfrac{g(x_N) - g(x_{N+1})}{N+1-N}\\ & = g(x_N) - g(x_{N+1}) \end{aligned} となる。

よって, 0g(xN)g(xN+1)<1 0 \leqq | g(x_N)-g(x_{N+1}) | < 1 を得る。 さて,g(xN),g(xN+1)g(x_N),g(x_{N+1}) は整数であるため g(xN)g(xN+1)=0g(x_N) - g(x_{N+1}) = 0 である。

こうして g(xN)=g(xN+1)= g(x_N) = g(x_{N+1}) = \cdots となる。

よって,g(xN)=cg(x_N) = c とおくと,g(x)=cg(x) = c の解が無限にあることとなる。

g(x)=cg(x) = ckk 次方程式であるため解は高々 kk 個であるため矛盾する。

よって g(x)g(x) は定数関数である。

ポイント

今回の問題を解く上でのポイントは

  1. 多項式関数は解も極も有限個 →無限にぐねぐねすることはない
  2. 多項式関数は十分大きい/小さい xx では単調に変化する →概ね f(x)cxnf(x) \fallingdotseq c x^n を見なせる

です。

多項式関数のグラフの形を大雑把に頭に入れておくとベターですね。

特色のなかで一番好きな問題かもしれません。