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連分数展開とその計算方法

連分数

分数の分母にさらに分数が含まれている以下のような形のものを連分数と言います:

a0+b1a1+b2a2+b3a3+ a_0+\dfrac{b_1}{a_1+\frac{b_2}{a_2+\frac{b_3}{a_3+\cdots}}}

連分数・連分数展開に関する基本的な知識を解説します。連分数を背景とした入試問題もいくつか出題されています。

連分数と正則連分数

  • 連分数:a0+b1a1+b2a2+b3a3+a_0+\dfrac{b_1}{a_1+\frac{b_2}{a_2+\frac{b_3}{a_3+\cdots}}} の中でも,特に分子 b1,b2,b_1,\:b_2,\cdots が全て 11 であり,a0a_0 が整数,a1,a2,a_1,\:a_2,\cdots が正の整数であるような連分数を正則連分数と言います。

  • 連分数の中でも正則連分数を扱うことが多いので,正則連分数のことを単に「連分数」ということもあります。

  • 正則連分数は a0,a1,a_0,a_1,\cdots の情報だけ持っておけばすぐに復元できます。そこで,分数式を下にズラっと書くと場所を取ってしまうので,正則連分数を以下の右辺のように表記することが多いです: a0+1a1+1a2+1a3=[a0;a1,a2,a3]a_0+\dfrac{1}{a_1+\frac{1}{a_2+\frac{1}{a_3}}}=[a_0;a_1,a_2,a_3]

有理数の連分数展開の例

有理数を正則連分数の形で表してみましょう。

有理数の連分数展開は割り算を繰り返すことで機械的にできます。一般的な議論の前に,連分数展開の具体例です。

3611\dfrac{36}{11} を正則連分数展開せよ。

  • 36361111 で割った商は 33,余りは 33 なので,
    3611=3+311=3+1113\dfrac{36}{11}=3+\dfrac{3}{11}=3+\dfrac{1}{\frac{11}{3}}

  • 111133 で割った商は 33,余りは 22 なので,
    113=3+132\dfrac{11}{3}=3+\dfrac{1}{\frac{3}{2}}

  • 3322 で割った商は 11,余りは 11 なので,
    32=1+12\dfrac{3}{2}=1+\dfrac{1}{2}

以上より,3611=3+13+11+12=[3;3,1,2]\dfrac{36}{11}=3+\dfrac{1}{3+\dfrac{1}{1+\frac{1}{2}}}=[3;3,1,2]

連分数展開とユークリッドの互除法

さきほどの具体例で見たように,有理数の連分数展開はユークリッドの互除法に対応しています。→ユークリッドの互除法の証明と不定方程式

もう少しきちんと説明します。

aabb で割った商を qq ,余りを rr とおくと,

a=bq+ra=bq+r より,ab=q+1br\dfrac{a}{b}=q+\dfrac{1}{\frac{b}{r}} となります。

よって, ab\dfrac{a}{b} を正則連分数展開するには br\dfrac{b}{r} を正則連分数展開すればよい,ことがわかります。このように,aabb の問題を bbrr の問題に帰着させるというのはユークリッドの互除法と同じです!

そして,正則連分数には各段階の商が残ります。これはさきほどの具体例を見れば納得できるでしょう。

有理数は有限正則連分数で表せる

今までの議論から以下の定理がわかります:

有理数     \iff 有限正則連分数で表せる

証明
  • \Rightarrow)ユークリッドの互除法は有限回で終了するので,有理数なら正則連分数展開が有限回で終了する。
  • \Leftarrow)有限連分数は通分を繰り返して普通の分数にできるので有理数である。

無理数の連分数展開

無理数でも同様に連分数展開はできます。

無理数は有理数ではない数であるため,先ほどの定理から無理数は無限に続く連分数で表されます。

2\sqrt{2} を連分数展開してみる。

2=1+(21)=1+1121=1+12+1=1+12+(21)=1+12+12+1=1+12+12+12+1=\begin{aligned} &\sqrt{2}\\ &=1+(\sqrt{2}-1)\\ &=1+\dfrac{1}{\frac{1}{\sqrt{2}-1}}\\ &=1+\dfrac{1}{\sqrt{2}+1}\\ &=1+\dfrac{1}{2+(\sqrt{2}-1)}\\ &=1+\dfrac{1}{2+\frac{1}{\sqrt{2}+1}}\\ &=1+\dfrac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{\sqrt{2}+1}}}\\ &=\cdots \end{aligned}

となり,2=[1;2,2,2,]\sqrt{2}=[1;2,2,2,\cdots] となりそうです。

証明

x=2x = \sqrt{2} とする。

x2=2x^2 = 2 より x21=1x^2 - 1 = 1 である。

x21=(x+1)(x1)x^2- 1 = (x+1)(x-1) であることから x=1+11+x x = 1 + \dfrac{1}{1+x} となる。

右辺の xx に上式を代入すると x=1+11+1+11+x=1+12+11+x\begin{aligned} x &= 1+ \dfrac{1}{1 + 1 + \frac{1}{1+x}}\\ &= 1 + \dfrac{1}{2 + \frac{1}{1+x}} \end{aligned} となる。

以下繰り返すことで 2=[1;2,2,2,]\sqrt{2} = [1;2,2,2,\cdots] となる。

実は,無理数 α\alpha の連分数展開を途中で打ち切ったもの pq\dfrac{p}{q} は,α\alpha の良い近似になります。具体的には,αpq<1q2\left|\alpha-\dfrac{p}{q}\right|<\dfrac{1}{q^2} が成立します。例えば,2\sqrt{2} の例だと,

  • [1;2]=32[1;2]=\dfrac{3}{2} について 232<122\left|\sqrt{2}-\dfrac{3}{2}\right|<\dfrac{1}{2^2}
  • [1;2,2]=75[1;2,2]=\dfrac{7}{5} について 275<152\left|\sqrt{2}-\dfrac{7}{5}\right|<\dfrac{1}{5^2}

となります。誤差が 1q\dfrac{1}{q} ではなく 1q2\dfrac{1}{q^2} という非常に小さい値でおさえられるのがおもしろいです!

より詳しく知りたい方は 実数を分数で近似する【ディリクレのディオファントス近似定理】 をご覧ください。

例えば,2011年東大前期理系問2は,この記事の内容を理解していれば非常に簡単に解けます。

Tag:東大入試数学の良問と背景知識まとめ