世界中でおこなわれた15の研究をレビューした最近の論文で、イヌとその飼い主は見た目と行動が似ているだけでなく、共に過ごす時間が長くなるにつれて性格の類似性が深まっていくことが示された。論文は2024年9月29日付けで学術誌「Personality and Individual Differences」に掲載された。イヌは飼い主に似るという説を裏付ける科学的根拠がまたひとつ加わった。
多くの研究で、ボランティアの被験者にイヌと飼い主の写真を正しく一致させられるかを調査していた。その結果、正解の割合が偶然の確率(チャンスレベル)を上回ることがわかった。
学術誌「Anthrozoös」に2013年に発表された研究では、イヌと飼い主の目の部分だけを見て正しいペアを判断できるかも調査したところ、偶然一致するレベルを上回ることがわかった。
さらに、学術誌「Anthrozoös」に2009年に掲載された別の論文では、女性はイヌの耳と同じくらいの長さの髪であることが多いことがわかった。私(筆者のタラ・ロー氏)のボブと前髪が飼いイヌのスパニエルによく似ていたようにだ。
なぜか? 専門家は、人々が何らかの形で自分に似たイヌあるいは自分を反映するイヌを選んでいるのではないかと考えている。あるいは私のように、無意識のうちにイヌを我が子のように感じているのかもしれない。(参考記事:「犬は人が思っているよりもずっと”人間らしい”」)
また、今回のレビュー研究では、特に外向性や神経症傾向といった性格の特性がイヌと飼い主の間で似ており、性格は共に過ごすうちにさらに似ることが示された。その理由については、飼い主がもともと自分に似たイヌに惹かれるのかもしれないし、共に年を重ねる中でお互いに感情を調整し合ったり、行動を強化し合ったり、共に学んだりするのかもしれないなど様々な説が示されている。(参考記事:「「犬の性格は飼い主に似る」は本当だった」)
「私たちがパートナーを探すときと似ています」と、ドイツ、マックス・プランク地球人類学研究所のイヌ研究グループの博士研究員であるヤナ・ベンダー氏は言う。イヌと飼い主は「多くの人間関係に匹敵するほど非常に親密な関係」を共有している。(参考記事:「「そっくりな人」は遺伝子も似ている? 性格は? 科学の答え」)
飼い主を信頼するように生まれるイヌたち
このレビュー研究の著者は、研究にいくつかの限界があることも指摘した。研究に参加したイヌと飼い主の数が比較的少ない点や、多くのイヌが純血種だったことなどだ。研究者たちは、世界的により一般的な雑種犬に関するデータをより多く必要としている。
さらに、飼い主のバイアスも影響している。イヌの性格を評価する標準的な方法がないため、研究者は飼い主に自分のイヌを評価してもらうしかなく、それは人間の家族を客観的に評価するのと同じくらい難しい。なお、飼っているイヌがいい子かどうかではなく、イヌが特定の状況でどのような行動を取るかについて、より明確な質問をすれば、このバイアスには対処できる。
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