今、米国フロリダ州の藪(やぶ)の中で、在来種のヘビを襲う恐ろしい病が広がりつつある。ヘビは皆、口から白っぽくて細長い寄生虫を出して死んでいる。もやしのようなこの寄生虫の名はRaillietiella orientalis)。ヘビの体内に入ると、死に至るまで肺を食べるという。
R. orientalisに感染した在来種のヘビが最初に見つかったのは、2012年、フロリダ州南部でのこと。発見者はフロリダ大学と提携する侵入生態学者のメリッサ・ミラー氏だった。
同氏はその後、感染源を、1990年代半ばにアジアから米国に入ってきた侵略的外来種であるビルマニシキヘビ(Python bivittatus)だと特定した。以来R. orientalisはナンブミズベヘビ(Nerodia fasciata)やブラックレーサー(Coluber constrictor)など、フロリダにいる46種の在来種のヘビのうち、少なくとも19種に感染している。(参考記事:「米国フロリダ州で記録破りの巨大ニシキヘビを捕獲」)
2023年3月に学術誌「Southeastern Naturalist」に発表された論文によると、ヘビの肺寄生虫症はフロリダ州の中央部から北部にかけて急速に拡大しつつある。米国南東部のその他の州にも広がる可能性があるという。(参考記事:「致死的な「ヘビ真菌症」、北米で感染拡大、日本にも侵入」)
この結果は、論文の共同執筆者であるセントラルフロリダ大学大学院の博士課程で学ぶジェンナ・パルミサーノ氏が設立したヘビの肺寄生虫症を監視する団体「Snake Lungworm Alliance and Monitoring(SLAM)」の他、市民科学者や非営利団体、学会、州当局などからの100人を超える協力者が収集したデータに基づくものだ。なお、ヘビのこの感染症を引き起こす寄生虫は、正しくは「舌虫」の一種だが、米国南東部では一般的に「肺線虫」と呼ばれることが多い。
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