ペルーの砂漠が十数年でブルーベリーの一大産地になったわけ

今や5年連続で世界最大の輸出国に、直面している新たな課題とは

2024.12.29
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ペルーのラ・リベルタ州にある大規模な多国籍企業の農場で、ブルーベリーを収穫する労働者たち。(Photograph by Alessandro Cinque)
ペルーのラ・リベルタ州にある大規模な多国籍企業の農場で、ブルーベリーを収穫する労働者たち。(Photograph by Alessandro Cinque)

 8月初め、南米ペルー北部ラ・リベルタ州の海岸沿いの砂丘は、青みがかった紫色の果実で覆われていた。ほんの10年余り前には果実の栽培などできないと考えられていた砂漠が、数週間後にはブルーベリーの収穫期を迎える。この乾燥地帯のおかげで、ペルーは今や世界のブルーベリー市場の最前線に立っている。(参考記事:「糖尿病予防に効果的な果物と摂取方法」

 低木の間を歩きながら、農業エンジニアのアルバロ・エスピノーサ氏は身をかがめ、鈴なりの実に目を見張った。なかには驚くほど大きな粒が混じっている。

「このゲージ(測定用の計器)では測れないくらいです」。いくつかの丸い穴が開いたキーホルダー代わりのゲージを取り出しながら、エスピノーサ氏は言う。一番大きな穴は直径2.5センチだったが、それすらも通らないくらい、ブルーベリーの実は大きかった。

直径18ミリを超えるブルーベリーは「ジャンボ」に分類される。特に中国市場では、大きな実に高値が付く。(Photograph by Alessandro Cinque)
直径18ミリを超えるブルーベリーは「ジャンボ」に分類される。特に中国市場では、大きな実に高値が付く。(Photograph by Alessandro Cinque)

 エスピノーサ氏は、約15年前にいち早くペルーでブルーベリー栽培の実験を始めた一人だ。それまで、北半球原産のブルーベリーをペルーで栽培しようと考える人はほとんどいなかった。

「周りから変人扱いされました」と、エスピノーサ氏は振り返る。ところがそれ以来、ペルーのブルーベリー産業はビットコインのような目覚ましい急成長を遂げた。

 2012年にはブルーベリー畑が数平方キロメートルしかなかったペルーは、今や過去5年連続で世界最大の生ブルーベリーの輸出国となった。

ギャラリー:ペルーの砂漠が十数年でブルーベリーの一大産地に 写真14点(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:ペルーの砂漠が十数年でブルーベリーの一大産地に 写真14点(写真クリックでギャラリーページへ)
小さなマルベルデの町は、ブルーベリー産業とともに成長してきた。農場労働者の多くは、職場の近くに家を借りて住んでいる。写真奥には、ペルーのブルーベリーを最初に輸出したカンポソル社のブルーベリー畑が広がっている。(Photograph by Alessandro Cinque)

次ページ:砂漠に強い品種

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