ビッグホーン(オオツノヒツジ)のオスは角をぶつけあい、シチメンチョウは得意げに縄張りを歩きまわり、ウシガエルは低い声を響かせる。交尾の時期になると、大きな動物がさまざまな方法で愛を語ることはよく知られている。
しかし、小さな動物についてはどうだろう。甲虫もクモもハエも、相手を見つけなければならないことには変わりない。舞台が小さいからといって、ドラマが少ないわけではない。そんなムシたちの、奇妙で激しい愛の世界を見てみよう。
クワガタムシの相撲
クワガタムシには、昔のよろいについているような巨大なアゴがある。ただし、2匹のオスが戦っても、どちらかが死ぬことはほとんどない。
「生物学者たちは、これを自然の武器と呼んでいます」と話すのは、米カーネギー自然史博物館で無脊髄動物の準学芸員を務めるエインズリー・シーゴ氏だ。「すばらしいのは、正しく使えばだれも傷つかないことです」
ただし、どちらかは必ず放り投げられることになる。
おもしろいことに、シーゴ氏によると、オスはメスをめぐって戦うわけではない。戦いの目的は、樹液が出る場所など、メスがやってきそうな場所を守ることだ。
「樹液は甘くおいしい無料の食べもので、酵母が繁殖していることもあります。甘い食べものとおいしい酵母の組み合わせは、まるでヘルシーなシェイクです。こんなことはあまり言いたくはないのですが、女の子たちはこのミルクシェイクに目がないのです」
複数のオスが縄張りを主張すると、実力行使の段階に突入する。といっても、槍を持った騎士のようにぶつかり合うのではなく、相撲のようにがっぷりと組み合う戦いになる。
「これは基本的に力比べで、相手を木から投げ落とす戦いです」
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