ダンスもセクハラも捕食も、“何でもあり”なムシたちの愛の世界

大きな動物にも負けない、小さな昆虫やクモたちの激しい愛のドラマ4選

2025.01.22
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クワガタムシの格闘。多くの場合、戦いの目的は、交尾できるメスが集まる場所を守ることだ。昆虫の求愛行動にも、大型の動物に負けないドラマがある。(Photograph By Stephen Dalton, Nature Picture Library)
クワガタムシの格闘。多くの場合、戦いの目的は、交尾できるメスが集まる場所を守ることだ。昆虫の求愛行動にも、大型の動物に負けないドラマがある。(Photograph By Stephen Dalton, Nature Picture Library)

 ビッグホーン(オオツノヒツジ)のオスは角をぶつけあい、シチメンチョウは得意げに縄張りを歩きまわり、ウシガエルは低い声を響かせる。交尾の時期になると、大きな動物がさまざまな方法で愛を語ることはよく知られている。

 しかし、小さな動物についてはどうだろう。甲虫もクモもハエも、相手を見つけなければならないことには変わりない。舞台が小さいからといって、ドラマが少ないわけではない。そんなムシたちの、奇妙で激しい愛の世界を見てみよう。

クワガタムシの相撲

戦いのあと、枝の上でミヤマクワガタの仲間(Lucanus cervus)のオスが後ろからメスに乗り、交尾する。(Photograph By Martin Gabriel, Nature Picture Library)
戦いのあと、枝の上でミヤマクワガタの仲間(Lucanus cervus)のオスが後ろからメスに乗り、交尾する。(Photograph By Martin Gabriel, Nature Picture Library)

 クワガタムシには、昔のよろいについているような巨大なアゴがある。ただし、2匹のオスが戦っても、どちらかが死ぬことはほとんどない。

「生物学者たちは、これを自然の武器と呼んでいます」と話すのは、米カーネギー自然史博物館で無脊髄動物の準学芸員を務めるエインズリー・シーゴ氏だ。「すばらしいのは、正しく使えばだれも傷つかないことです」

 ただし、どちらかは必ず放り投げられることになる。

 おもしろいことに、シーゴ氏によると、オスはメスをめぐって戦うわけではない。戦いの目的は、樹液が出る場所など、メスがやってきそうな場所を守ることだ。

「樹液は甘くおいしい無料の食べもので、酵母が繁殖していることもあります。甘い食べものとおいしい酵母の組み合わせは、まるでヘルシーなシェイクです。こんなことはあまり言いたくはないのですが、女の子たちはこのミルクシェイクに目がないのです」

 複数のオスが縄張りを主張すると、実力行使の段階に突入する。といっても、槍を持った騎士のようにぶつかり合うのではなく、相撲のようにがっぷりと組み合う戦いになる。

「これは基本的に力比べで、相手を木から投げ落とす戦いです」

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