あなたは本をどんなふうに読んでいるだろうか。会話の部分だけを読む人もいれば、長い文章を飛ばしたり、段落の最初と最後の文だけを読んだりするという人もいるかもしれない。一方で、単語を飛ばすことなく一つひとつ読み、同じ箇所を2回、3回と読み返して、何も見落としていないかを確認する人もいる。
デジタル時代は、われわれの本の読み方に大きな影響を与えている。米調査会社ギャラップや日本の文化庁の調査によると、日米ともに人々が読む本の冊数は減っている。一方、総務省情報通信政策研究所の調査では、日本人の平均的なインターネットの利用時間は1日3時間を超えている。
今日では、じっくりと読み込むよりも、ざっと読み飛ばすことの方に、より多くの時間が費やされていることが研究で示されている。時間をかけて深く読み込む能力が失われていると嘆く専門家がいる一方、その力は少しの練習で取り戻せると主張する意見もある。
では、本の「正しい」読み方というものはあるのだろうか? 専門家の意見を聞いた。(参考記事:「「SNS断ち」に短期間でも驚きの効果、専門家が秘訣を伝授、研究」)
飛ばし読みや拾い読みの特徴
専門家によると、単語や文の一部を飛ばして読みながら、全体の要点を把握する「スキミング」は、本の読み方としては一般的だという。米バージニア大学の心理学者ダニエル・ウィリンガム氏は、理解の妨げにならない限り、スキミングや、特定の情報だけを拾い読みする「スキャニング」には何の問題もないと語る。
どのように文章を読むのが最善かを考えるには、まずはそこから何を得たいのかを考慮すべきだと、専門家は指摘する。楽しみのために読む場合や、短時間で読み終わりたいときには、文章の内容を大まかに把握できるスキミングは非常に適していると、米マサチューセッツ総合病院付属保健医療大学コミュニケーション科学・障害学部教授のジョアンナ・クリストドゥルー氏は言う。
たとえば、休暇中、暇つぶしに手に取るような本であれば、スキミングで十分だと言える。場面の細部を思い出したり、複雑な表現や知らない単語の意味をわざわざ理解したりする必要がないからだ。
スキミングは「見出し程度」の理解を得るのに役立つため、最新ニュースを知っておきたい場合などには、スキミングやスキャニング、さまざまな記事に次から次へと目を通すといった読み方をしたくなると、クリストドゥルー氏は言う。
氏によると、読んでいる文章がなじみのあるタイプかどうかが、その人の読み方に影響を与える可能性があるという。たとえば、ミステリー小説をたくさん読む人は、独特の文章構造や物語が引き起こす感情に慣れているため、おそらくはところどころ読み飛ばしても内容を把握できるだろう。
同様に、美術史のような特定の分野に関する本を多く読んでいる人は、専門用語になじんでいるおかげで、その分野の本をより効率的に読み進め、内容をより多く記憶できる可能性が高まると氏は言う。研究では、理解力を保ちながら読書スピードを上げる方法のひとつは、語彙(ごい)を増やすことだと示されている。