エンタメ

松田るかが演技で大切にすること「相手の名前を覚える」その理由とは

『ちむどんどん』『光る君へ』などに出演し、独自の存在感で注目を集めている沖縄出身の俳優・松田るか。 松田るか 映画『かなさんどー』ガレッジセールのゴリこと照屋年之が監督を務める現在公開中の映画『かなさんどー』では、認知症の父(浅野忠信)と亡き母(堀内敬子)の“夫婦の絆”に葛藤する主人公・美花を演じる。 雄大な沖縄の自然を舞台に繰り広げられる夫婦そして親娘をめぐる感動のストーリーとともに、沖縄で生まれ育った彼女のナチュラルな演技が胸を打つ本作。ちなみに「かなさんどー」とは沖縄の方言で「愛おしい」という意味である。

印象に残ったセリフは「大好き」の上位互換

――映画を拝見して自分は「夫婦の絆」について考えさせられました。作品を通じて松田さんが感じたことは何でしょうか。 お母さん、お父さんとして二人を見ていたけど、その前に奥さんであり旦那さんであり、その前は彼氏・彼女であるわけで……。それぞれの関係性が進んでいくなかで、たとえ家族とはいえ全てを知った気になってはいけないな、と思いました。 美花は生まれたときからお父さん、お母さんと一緒に住んでいて、まるで知った気になっていましたが、やっぱり知らないことってあるし、簡単に決めつけてはいけないなと。 ――美花を演じる上で心がけたことは? ストーリー的に現在と過去を行き来するので、感情のだし方で年齢差をつけられたらなと思いながら演じました。若い頃は細かいことにいちいちつっかかったりする感じとかをだして。 ――印象的なシーン、心に残っているセリフを教えてください。 お母さんが言った「私は生まれ変わってもお父さんと結婚するし、またあなたを産む」ですね。「大好きだよ」の上位互換というか(笑)、親から言われたらすごい嬉しいなと思って。 どうしても恥ずかしくて、なかなか直接「愛してるよ」とか「大切だよ」って伝えることって自分もなかったなと。この映画を見てくださった人も、きっと誰か思い浮かぶ顔があると思うので、その人に直接、言葉を贈るきっかけになれたらいいなって思います。

沖縄の風景と幻想的なラストシーンの裏側

松田るか 映画『かなさんどー』――沖縄の風景も印象的で心が洗われました。なかでもたくさんのテッポウユリに囲まれて美花が「かなさんどー」を歌うラストシーンは幻想的でした。 毎年「ゆり祭り」を開催している伊江島リリーフィールド公園(沖縄県)がロケ場所だったのですが、撮影もちょうど満開の日でしたし、雨も降らず、かすかにユリの香りも漂っていて。 島なのでビルとか家屋とか視界をさえぎるものがほとんどなくて、カメラの後ろも海なんですよ。遠くから波の音がザザーッと聞こえてきて、夜の撮影だったのでお客さんもいなくて。現実に引き戻されるものが何もない夢のような空間で、不思議な体験でした。 あのシーンは民謡「かなさんどー」の作家であり歌手の前川守賢さんがわざわざ現場に来てくださって、モニターではなく、遠くに停めてあるハイエースのなかで弾いてくれた三線を小型のイヤホンで聴きながら歌ったんです。ちょっとしたセッションのような感じでした。 ――歌いながら自然と涙も流されてましたね。 監督からは「時間はたっぷりとっていいよ」と言われました。テキパキできるところはテキパキと、ゆっくり時間をかけるところはしっかりとっていうメリハリのある現場でしたね。 「歌いながら込み上げてくるものがあるだろうし、一番は助走に使っていいよ。二番から使うから」と監督に言われたんですけど、蓋を開けてみたら一番から使われてました(笑)。 ――松田さんのプレッシャーを和らげる監督なりの演出だったかもしれないですね。 ご自身が俳優業もやられたり表にでられる方なので、出役の気持ちがわかるからこそ、役者に寄り添った演出や現場づくりを心がけられていて、それが作品にもつながっているのではないでしょうか。
次のページ
理想の夫婦像は「背中を預けられる人」
1
2
3
4
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Xアカウント:@Yuichitter

記事一覧へ
おすすめ記事