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2012/04/12 00:00

気鋭映画監督の作品を彩るWEGの新作

world's end girlfriendが音楽を担当し2011年に台湾、中国、香港、シンガポールで公開された台湾映画、林書宇監督作品「星空 Starry Starry Night」のサウンドトラックが、WEG主宰レーベルVirgin Babylon Recordsよりリリース! 湯川潮音がゲスト・ヴォーカルとして参加したリード・トラック「Storytelling」ほか、ストリングス、ピアノ、チェレスタやシンセサイザーなどを用い、儚く美しいメロディーと共に少女と少年の憧れと冒険、喪失と希望をやさしく描き出した全12曲。OTOTOYでは、高音質版のHQD(24bit/48kHzのwavファイル)でも販売します!


world's end girlfriend / Starry Starry Night - soundtrack

1. Starry / 2. Storytelling (feat. 湯川潮音) / 3. Smile (feat. 湯川潮音) / 4. Three-legged Elephant / 5. The Little Finger / 6. Two of Us / 7. Your Footsteps Are Music / 8. March / 9. Lost a Piece / 10. Night Floater / 11. Puzzle / 12. Our Footsteps Are Music

販売形式 : HQD(24bit/48kHzのwav) / mp3

移りゆく流れの中に眠っている「音」

world’s end girlfriend(以下WEG)は2010年にリリースされた6枚目のアルバム『SEVEN IDIOTS』において、最初にAメロ/Bメロ/サビという、いわば一般的な形式の曲を作り、それを自らの手で徹底的に脱構築することに彼の新機軸を置いた。美しいストリングスの音色が、あるいは壮大なホーン・セクションが鳴り響き、背後から突然打ち鳴らされるブロークン・ビート。それらの渾然一体となった音の洪水は我々の脳内に次々にエラーを誘発させる。つまり、『SEVEN IDIOTS』は形骸化された「誤りを音楽に転用すること」に新たな可能性を見出したという意味で、正にポップ・ミュージック・アルバムであったのである。そして、その『SEVEN IDIOTS』を経て制作された本作『Starry Starry Night-soundtrack』は、2011年に台湾、中国、香港、シンガポールで公開された、新進気鋭の映画監督、林書宇による台湾映画『星空 Starry Starry Night』のサウンドトラックとしてリリースされる。映画のサウンドトラックとは、意識の焦点はスクリーン上の映像にあり、その余白の部分で聴かせる音楽である――と仮定するならば、本作は意識の余白の部分で聴くには余りにも繊細な音響空間を形成している。

冒頭の「Starry」で奏でられる微弱なピアノと流麗なストリングスの音色の連なりは緩やかな緊張感を漂わせる。そしてその緊張感から立ち現われてくるのは、赤裸々な「か弱き美しさ」という志向性なのである。その萌芽は前作にも感じ取ることはできるが、「エラーを音楽に転用する」という強さの影に隠れてしまっていた。その志向は、2曲目の「Storytelling (feat.湯川潮音)」の湯川の伸びやかでナチュラルな歌声をも、どこか儚げな麗しさを持つ歌声へと変化させていく。その「か弱き美しさ」は緻密に作りだされる叙情的なメロディとともに次第にアルバム全体の通奏低音となってゆき、穏やかな気分を誘いながら、静寂の世界を拡張し、そして意識も侵食していく。それは、どこかブライアン・イーノによる『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』を聴き進めるにつれて覚える感覚に似たものがあるのだ。そう、本作はアンビエント・ミュージックまで射程に収めている。

そして、本作をサウンドトラックとして、あるいはアンビエント・ミュージックとして機能させているのは、歌、ストリングス、ピアノ、チェレスタ、シンセサイザーなどの多種多様の楽器を全て共に主役として用い、それらを緻密に構築するWEGの技量である。それを裏打ちするものは映像の中の色彩の変化を音像で描いていくWEGの感性ではないか。あるいは、映像の移りゆく流れの中に眠っている「音」を発見してくる皮膚感覚があるとも言える。その感覚を見事に活かしきった『Starry Starry Night - soundtrack』を聴くと、ざわついた耳は落ち着き、奏でられる「か弱き美しさ」の波にあなたはきっと酔いしれてしまうだろう。(text by 坂本哲哉)

world's end girlfriend archives

『SEVEN IDIOTS』

2010年7月に立ち上げられた、world's end girlfriend自身のレーベル・Virgin Babylon Recordsリリース第一弾となった作品。最初にAメロ/Bメロ/サビという一般的な形式の唄ものを作曲し、その後、ヴォーカル・パートを完全に消去。残されたトラックに破壊と構築を繰り返し施し作り上げられたもの。異様な緻密さの打ち込み(プログラミング)、美しきストリングス、フリーキーなサックス、強力でカラフルなギター… 幾千幾万の音が渾然一体となって鳴り響きます。異形のポップ・ミュージック・アルバム。

『 Hurtbreak Wonderlad (REMASTERING)』

2007年に発売され現在も売れ続けているタイトルが、リマスタリングされ高音質のHQDで登場。リマスタリングを行ったのは、エレクトロニカ・アーティストとしても活躍するKASHIWA Daisuke。初期の作品『ending story』や『dream's end come true』で見せた狂人じみたエディット・ワークと、4thアルバム『The Lie Lay Land』でWEGオーケストラとも言うべき生バンド(ストリングス、ハープ、ドラム、ホーン、ピアノやベース等)の大胆な使用、そしてコラージュ、それらをすべて余す事なく出し切った作品。

『ending story』

2000年にリリースされ、当時まったくの無名ながら、多くの評価と驚異の売上をあげたworld's end girlfriendのデビュー・アルバム。廃盤により入手困難となっていた幻の名盤が、GraphersRockが手掛けた新たなジャケットとともにVirgin Babylon Recordsより再リリース! 初期衝動と数千のサンプリング、ファンタジーと悪意、喜劇と悲劇のカオス。その後の世界へ大きく広がっていったwegの音楽の源泉がここに。

Virgin Babylon Records presents "Virgin Babylon Night"

2012年5月4日(金・祝)@渋谷WWW

出演 :
world's end girlfriend & POLTERGEIST ensemble (+VJ rokapenis)
about tess
Joseph Nothing Orchestra (+VJ Aya Takano)
KASHIWA Daisuke (+VJ RAKU-GAKI) Special Guest : Yuji Katsui(ROVO)
Go-qualia (+VJ Naohiro Yako)

OPEN 16:30 / START 17:30
ADV ¥4,000 / DOOR ¥4,500 (ドリンク代別)

PROFILE

1975年11月1日 長崎県、かつて多くの隠れキリシタン達が潜伏した島「五島列島」に生まれ、10歳の時聴いたベートーヴェンに衝撃を受け音楽/作曲をはじめる。2000年デビュー。その後多くのアルバム作品、リミックス作品を発表。2002年、2005年にはバルセロナで行われる『Sonar Festival』に出演。2004年にはアジア・ツアー。2005年にはEUツアー。2007年にはUSツアーを行う。2008年にはイギリスで開催された『All Tomorrow's Parties』に出演。2009年カンヌ映画祭でも絶賛され世界中で公開された映画「空気人形」の音楽を担当。前作『Hurtbreak Wonderland』(2007年作)は現在も売れ続ける異例のセールスを記録し、ライブやweb上でも圧倒的世界観を提示しつづけている。2010年7月14日、matryoshka、about tess、夢中夢、Ryoma Maeda(aka milch of source)という濃厚なラインナップを率いてVirgin Babylon Recordsを設立。

この記事の筆者
坂本 哲哉

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[レヴュー] world's end girlfriend

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