【REVIEW】きらびやかな夏の終わり、郷愁を誘い出す音――DÉ DÉ MOUSE、配信限定EPリリース
架空のSFアニメの機関室でかかるヒットチャートをイメージした前作『dream you up』から5ヵ月。気鋭のトラックメイカー・DÉ DÉ MOUSEが早くも配信限定EPをリリース。夏の終わりに贈る今作は、列車に揺られるテンポ感 "BPM 105"で統一して作り上げるなど、踊れるだけでは終わらない、ちょっぴり切ない一枚に仕上がった。レヴューと合わせて、どうぞお楽しみください。
配信限定リリース!
DÉ DÉ MOUSE / via alpha centauri
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV / AAC
【配信価格】
単曲 250円(税込) / アルバム価格 1,050円(税込)
【収録曲】
01. festa de centauri
02. wanna dance
03. rigil
04. otters for fete
05. star gazer
【REVIEW】DÉ DÉ MOUSE『via alpha centauri』
2017年は異例の大雨と台風で、せっかくの夏祭りも中止になったところが多かった。荒天で中止になった祭は大きいものだけでも、埼玉の上尾夏まつり、神奈川の赤堀夏まつり、鹿児島のオロシティー夏祭り大会、福岡のわっしょい百万みんなの花火大会……と全国規模に及ぶ。私が唯一立ち寄れた浅草の花火大会でも、生憎の雨で音しか聞こえなかった。さて、そんな消化不良(?)な夏の終わりに、DÉ DÉ MOUSEからとびっきりのプレゼントが到着!銀河鉄道の夜を舞台にした架空のお祭り『ケンタウルス祭』をテーマにした、遊び心溢れるアルバムだ。
表題曲「festa de centauri」は祭囃子をヒントにダンスビートを取り入れたフューチャー・ベース。花火の音に、弾むエレクトロ・サウンド。そして彼の持ち味ともいうべきどこか不思議なコーラスワーク。軸となるメロディは確かに伝統的な日本のお祭り音頭を引用しているのに、スローテンポとキラキラのシンセ・サウンドはあまりそれを感じさせない。むしろ、懐かしさと不思議さが入り混じった、色鮮やかで幻想的な未体験の世界へと連れ出してくれるように思われる。それこそ今回のジャケットイラストを担当した丸紅茜の絵のようだ。 DÉ DÉ MOUSEで祭をテーマにしたトラックというと、「summer twilight」や「milkyway planet」などを思い出すが、今作では今までよりも真正面から”和”へのアプローチを試みた楽曲といえるだろう。都会的な音と祭囃子のビートが絡み合って終焉する曲のラストには、ちょっと涙さえ禁じ得ない。
もちろん、アルバムとしての完成度もずば抜けている。「rigil」は祭が終わった後の暗い道をとぼとぼと帰るような、郷愁感をトロピカル・ハウスで表現している楽曲。店じまいの済んだ舗道にはリンゴ飴のゴミが落ちていたり、花火を見終わって帰るカップルが佇んでいたり。喧騒はあるのにどこか静かで、不意に名残惜しさと寂しさが心に押し寄せる、あの感覚。尺八の音にふと振り向いて、でもそれは想像が見せた錯覚で、誰もいなかった、みたいな。DÉ DÉ MOUSEはいつしかのインタヴューで「多摩の町を歩きながら気持ち良く聴ける音楽」を作りたくてプロジェクトを始めたと言っていた。この音楽には懐かしさと、郊外の整っているのに人のいない寂しさのようなものが詰まっていると思う。
家からは少し遠い街で、祭の記憶と郷愁に思いを馳せて――私なら浅草線に揺られて聴きたい。これは終わった夏の思い出に浸らせてくれるような、そんなアルバムなのだから。 (Text by 阿部文香)
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トラックメイカーとして七尾旅人×やけのはら「Rollin' Rollin'」のアレンジを手がけるなど手広く活動するDORIANの1stフル・アルバム。都会的でロマンティックなダンス・ミュージックで各方面から支持を集めるきっかけになった意欲作。
2015年のBDM青山盆踊りにてDÉ DÉ MOUSEと共演し、同名のコンピに「レオ」が収録されたことで話題になった水カン。同時期にリリースされたフル・アルバムをハイレゾで。
3人組トラックメーカーユニットPa's Lam Systemによる1stアルバム。SSW向井太一を迎えたフューチャー・ハウス「Don't Give Up On My Love」や、トラックメイカーPARKGOLFとのコラボ楽曲を収録している。
LIVE SCHEDULE
<パルTAMAフェス 前夜祭 「DÉ DÉ MOUSE EPリリース記念 サラウンドライブセット」>
2017年9月15日(金) @東京 パルテノン多摩小ホール
時間:OPEN 18:00/START 18:30
<ULTRA JAPAN>
2017年9月16日(土) @お台場 ULTRA JAPAN特設会場
時間:OPEN 10:00/START 11:00
<DÉ DÉ MOUSE china tour>
2017年9月20日(水)~24日(日) @中国5都市(北京,上海,広州,深圳,杭州)
時間:OPEN 20:00/START 20:30
<DÉ DÉ MOUSE SPECIAL>
2017年10月17日(火) @DOMMUNE
PROFILE
DÉ DÉ MOUSE
遠藤大介によるソロプロジェクト。作曲家、編曲家、プロデューサー、キーボーディスト、DJ。また、自身の曲のプログラミングやミックス/マスタリング、映像と多方面に活動し、他作品のプロデュース/ 楽曲提供 / remixも行う。2007年に1stアルバム「tide of stars」でデビュー。サンプリングされたボーカルを再構築するメロディカットアップのキャッチーで不思議なメロディを武器に、多くの人の耳を掴み、ノンプロモーションながら爆発的なヒットとなる。海外でも定期的な活動を行い、これまでにイギリス、ドイツ、フランス、カナダ、アメリカにてツアーを成功させている。先見性と、一聴してデデマウスだと分かるオリジナリティ、遊び心溢れる作品をリリースし続けている。