嘘偽りなしのピュア・ハードコア──MILK、待望の1stアルバムを〈KiliKiliVilla〉よりリリース!!

名古屋を中心に活動するハードコア・パンク・バンド、MILK。2014年に〈SummerOfFan〉からリリースの7インチ・シングル『MY E.P.』、2016年に〈Less Than TV〉からリリースしたソノシート『MISFITS E.P.』は発売からあっという間に各地で在庫切れを起こし現在入手困難となる中、待望となっていた1stアルバムをこの度〈KiliKiliVilla〉よりリリース! OTOTOYではアルバムの発売を記念し、バンド単独では初となるインタビューを掲載です!
今の彼らが全て収められた傑作!!
MILK / ALL ABOUT MILK
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 250円(税込) / アルバム 2,000円(税込)
【収録曲】
01. OUTPUNK
02. better youth
03. MINDSET
04. My Say
05. 22
06. WE
07. Role
08. Have mine
09. そこにはいない
10. All I know
11. MISFITS
12. with
MILK - I LOVE IT~with @ 森、道、市場 2017MILK - I LOVE IT~with @ 森、道、市場 2017
INTERVIEW : MILK
数年前から出ると風の噂で聞いていたMILKのフル・アルバムが遂にリリースされた。レーベル設立からずっと暖められていた型番“KKV-003”が付けられたこの『ALL ABOUT MILK』という作品は、その“003”という番号を空けて待ち続ける意味があった作品なのは間違いない。きっとこのアルバムを出そうと彼らに声をかけてすぐにアルバムが出ていたのなら、多分こうはなっていなかっただろう。時の経過が彼らのパンクへのさらなる探究心や愛情を掘り下げたからこそ生まれた12曲は、今まで彼らを可愛くてナードなやつらと定義づけしていたような人たちを蹴散らすようなタイトでスピード感が増したサウンドでありながら、彼らの個性やキャッチーさは決して死ぬことのない絶妙な塩梅を見事に突いたまさに全曲キラー・チューン。
でも何故、“KKV-003”が決まっていたのにここまでアルバムが出なかったのか? そんな疑問に迫るべくアルバムに至るまでや彼らの音作りについて、主に曲作りを担当するヴォーカルの松原正成とギターの稲熊祥大の2人から話を訊きました。
インタヴュー・構成 : 高木理太
待たせちゃってるっていう気持ちも常にあった
──MILKって結成はいつになるんですか?
松原正成(以下、松原)(Vo.) : 結成は2010年で、まだ大学生でした。
──それはサークルか何かで?
松原 : そうですね。その中でMILKを結成して、早い曲をやりたいねって話をして。
──MILKのギターを歪ませなくて音が小さいっていうスタイルは最初から意図してたんですか?
松原 : いや、最初は普通に音デカかったんですよ。今とパートの編成も違かったし。元々5人だったんです。ドラムに金子くんっていう別の人がいて、今のドラムの小嶋くんがギターを弾いてたんですよ。で、その小嶋くんのギターがめっちゃうるさくて(笑)。演奏してても曲の輪郭がなくて、何やってるかわからないみたいな。ライヴを見てたりしても、曲がごちゃごちゃになっててなにやってるかわからない時ってないですか? そうじゃなくて、どういう風な曲を演奏してるかわかるようにしたいなと思って色々やってくうちにああいう風になりましたね。
稲熊祥大(以下、稲熊)(G.) : あとはライヴハウスでPAさんに見てもらうんですけど、僕らだと音をどうやったらくっきり聴かせられるかが分からなかったんで、PAさんに何もしないでもらって、スタジオで練習してる時と同じようにアンプからそのままでやらせてくださいっていうのが始まりで。
──2014年に〈SummerOfFan〉から7インチ・シングルの『MY E.P.』、2016年には〈Less Than TV〉からソノシートで『MISFITS E.P.』をリリースして満を辞してといった感じでアルバムのリリースですけど、今回型番が“KKV-003”ということでリリース自体は結構前から決まっていたんですよね?
松原 : 安孫子(真哉)さん(KiliKiliVilla)からは、まだレーベルに名前もない時から僕らのアルバムを出したいって言ってくれて。めちゃくちゃブチ上がったのはいいんですけど、全然何もやらないっていう(笑)。
──それってベースの木村さんが仕事でフィリピンに行ってしまって、ベースをサポートしてもらわなきゃいけないから実際にアルバムを録るってとことまでに時間がかかってたのかと思ってました。
松原 : それもあるんですけど、それよりも僕ら、というよりも僕がホント眠り過ぎてるというか(笑)。やっぱみんな他のバンドすごいじゃないですか。録音して作品を作ってライヴしてっていう一連の流れがみんなヤバすぎるというか。あのペースではやれないって言ってたらこんなに時間がかかっちゃったっていう(笑)。
──ということはアルバムが出るのが遅れたのは単純に気持ちの問題(笑)?
松原 : やる気はあったし、安孫子さんたちを待たせちゃってるっていう気持ちも常にあったんですけど、眠た過ぎて(笑)。
稲熊 : 銀杏BOYZがすごく好きで、安孫子さんに出したいって言ってもらえたからこそ良いもの、なるべくカッコよくしたいっていうのが絶対的にあって。
松原 : なんでもそうですけど、下手は打てないなと。ちゃんと納得いくものにしたかったし。

──実際に録るまでに自分たちの気持ち作りにここまで時間がかかったってことですね。
稲熊 : 曲を作ったりは全然してて、安孫子さんに送ってたりもしたんですよ。だけどもっとかっこいいの作りたいってなってそれを全部ボツにして曲作り直したりとか。なんで、そういうのプラス寝てるっていう(笑)。
松原 : みんなしっかり考えてるじゃないですか。僕らももちろんやってるんですけど、それを寝ながらやるんで遅くなっちゃったっていう(笑)。
──寝ながらやる(笑)。最初のシングルを出した時はまだ学生だったじゃないですか。そこから社会人になってっていうので、単純にそのリズムを掴むのにも時間がかかったのかなって。
松原 : それもあるね。環境も変わったし。
──環境が変わった中でバンドのやり方として変えたなってところはあります?
稲熊 : 大学の時は必ず週1で練習してたんですけど、今は集まれる時間が少なくなってライヴの前とかしかみんなで集まれなくなってきました。曲もスタジオでみんなで作るよりも僕と松原くんがメインで作るんで、単純に会う時間が減ったから遅れたのかもしれないですね。やっぱりペースは落ちました。
──アルバムの曲はペースを落としてというか今の環境になってからの曲ですか?
稲熊 : そうですね。昔の曲はないです。前と明らかに違うのは、スカスカでかっこいいっていうのでは無くて、最近のハードコアから影響を受けたもっとガツンとした感じにはしたいなとは思いましたね。
かっこいい言い回しよりも本当に自分が思ってること
──アルバムに向けては音的なイメージとして何か参考にしたのはありますか? 前の音源はもっとポップ・パンクの要素が強いなと思ったんですけど、今回はグッとハードコア・パンクになった気がして、その間で微妙に聴いてる音楽もパンクはパンクでも変わったのかなって。
松原 : アルバム録るまでに聴いてたものはタフなのも聴いてましたけど、ポップ・パンクもメロディックなのも聴いてました。それは今でも変わらないですけど、その中から自分たちがどういうのをやりたいかみたいなのがだんだん変わったのかなって感じですね。ガツンとかっこいいやつを元々やりたかったのはやりたかったので。
──最初のEPは若さ故のピュアさがパッケージされてたと思うんですけど、アルバムではそれを昇華して青さは残ってるんだけど大人になった感があるというか。松原君の声もグッと太くなっているし。
稲熊 : 曲的にもそうですし、木村くんてベースがすごい下手だったんですけど(笑)、それが太一くんに変わってもうちょっと演奏もかっちりしたかもしれないですね。
松原 : ドラムの小嶋くんもね。
──ギターのリフのカッコよさとドラムのタイトさが前に出てますよね。
松原 : 曲のフックというか引っかかってくる感じ、自分が聴いてておおってなるようなのを作りたいなって。
稲熊 : 録音の時にギターを目立たせて聴こえるようにしたいっていうのと、ギターだけとかドラムだけとかになるとこ、ブレイクの部分は意識しましたね。
──今回アルバム録る時に参考にした作品はあります?
松原 : 録音する時にこういう風にしたいですみたいな音のイメージを伝える時に、エンジニアさんにはVIOLENT REACTIONを聴いてもらいましたね。テレキャスのチャカチャカした音なんだけど、でも勢いがある感じにしたいなと思って。VIOLENT REACTIONは曲の輪郭が結構はっきりしてるので。仕上がりとしては全然違う感じになりましたけど。
稲熊 : そもそもVIOLENT REACTIONってクリーンのギターだと思って持っていったら、これはめちゃくちゃ歪んでるよって言われて。前提が全然違うっていう(笑)。
──他には何かあります?
稲熊 : 僕が曲作って松原くんに聴かせるんですけど、絶対にカッコいい曲じゃないとアルバムの曲に採用してくれなかったので、絶対にかっこいいって意味で改めてMINOR THREATを聴き直してみたりはしました。リフとか手のストロークを真似たり。
松原 : MINOR THREATってやばいっていうのを再度確認するっていう(笑)。あとはコペンハーゲンのバンドは結構好きでこういう感じにしたいねってのは話してました。今のIceageとかCommunionsみたいな今の超イケてる人たちのルーツというか。曲ごとにこの曲はこんな感じってのはありますね。あとは仙台のTOTAL FURYは最高。ここは見出しにしてください(笑)。
稲熊 : TOTAL FURYのアルバムの速くてカッコいい曲がダッと続くあの感じね。
松原 : この前企画で名古屋来てもらったんですけど、感動的なレベルでかっこよかったですね。ハードコアのアルバムを作るんだったらああいうTOTAL FURYの『13songs』みたいなのが理想かなって。あとハードコアで好きなアルバムを挙げるならBREAKfASTの『眩暈』とV/ACATIONの『with vacation』はアルバムとしてすごい好きですね。速い曲がバッと続いて、途中変な曲があって、最後に遅めのどっしりした曲があってみたいな。でもまあどっちかっていうとバッとした感じにはなりましたけど。
──歌詞もものすごくいいですよね。個人的には「22」を今の松原くんが歌ってる感じがすごく良くて。あの曲の歌詞って22歳当時の松原くんの感情がまんま出てるなと思ってたんですけど、アルバムに入ってるのを聞くと余計にその歌詞にグッと来てしまうというか。
松原 : あの曲は曲名通り22歳の時に作った曲で、22歳なのに子供の時に思ってた22歳と違いすぎてやばいなっていう気持ちをこめて書いた歌詞なんですけど、さらにそっから4年が経過してその時と変わらずヤバいみたいな(笑)。
──曲作りや歌詞を書くのは時間がかかるほうなんですか?
稲熊 : 曲自体は結構できるんですけど、出来てもすぐボツになったり、アルバムに入れられる曲なのかっていう松原君の精査が結構厳しいんですよ(笑)。
松原 : 歌詞は結構悩む事も多いですね。
──どういう言葉を乗せようとかって意識してる部分はあります?
松原 : 曲を先に作るんで曲に合うように歌詞を考えるんですけど、いわゆる“歌詞”を書こうとすると、あんまり思ってないこと、自分はこういうことを本当に思ってるんだろうかっていうことまで歌詞にしちゃうというか。 このリフの中にこういう風に言葉を入れなきゃいけないって考えると、しゃべってるわけではないから思ってないような言い回しになっちゃって、本当にこんな格好いいこと思ってないだろみたいな言い方になっちゃう時があって。韻が踏めててとか、語呂がよくてとかっていう詩的なカッコいい言い回しじゃなくても本当に自分が思ってること、嘘が無い歌詞にはしたいなって。でもそうすると語彙がめちゃ中学生みたいになっちゃうんですけど(笑)。でもかっこいい言い回しよりも本当に自分が思ってることっていうのを優先して書きました。あとはやっぱり自分に向けて、自分で自分のケツを叩くためというか。誰かにこうしろって歌詞じゃなくて自分に向けてってのはありますね。
──なるほど。
松原 : ついついかっこいい言い方にしたくなっちゃうんですけど、多少言い回しがダサくてもっていうのはKillerpass見てていつもそう思いますね。めちゃくちゃ歌詞の語呂が悪いというか字余りになってるんだけど、本当に思ってることを全部歌ってるというか。字余り感がやばいんすよ収まってない(笑)。林さんの言いたい事が収まりきってなくてはみ出しててやばいっていう。
次出すのであれば5人体制でとかもいいかも
──さっきアルバムに入れる曲の精査をかなりしたって言ってましたけど、MILKの中であれをやりたいとかこれをやりたいとかっていう決定権は松原くんが持ってるんですか?
松原 : そうですね(笑)。例えば企画をやるとかでも、どのバンドを呼ぼうとかってメンバーに聞くんですけど、そのバンドを呼ばずに全部自分が呼びたいバンド呼んじゃうっていう(笑)。
──(笑)
松原 : ライヴでやる曲の順番とかも僕が考えてて、ちょっとあんまりだなってなった曲はやらなくなっていって、自然にみんなもその曲を忘れてく(笑)。
──じゃあそういうのを繰り返した結果、松原くんのフィルターを通ったいいものだけが残って今回のアルバムになったと。
松原 : そうですね。それがいいものなのかはわからないですけど(笑)。
──今回のアルバムってベースは全部太一くんなんですか?
松原 : そうです。ソノシートの時はキムが帰って来たタイミングで録ったんですけど、今回のLPは全部太一が弾いて。キムは今もメンバーなんですけど、象徴というか。存在、概念みたいな感じで(笑)。

──いつか戻って来たときはその時は5人でやろうかなとかって思ってます?
松原 : もし次出すのであれば5人体制でとかもいいかもしれないですね。まあ帰ってこなければ4人でやるしっていう(笑)。
稲熊 : でもヘタクソが増えると、音がガチャガチャして嫌だね(笑)。整合性のあるツイン・ギターだったらいいけど。キムが弾けてないようなデタラメだったらノイズになっちゃうというか。キレがなくなるというか。
松原 : キムは今もメンバーですけど、帰って来たらパートはどうするかっていうのは考えておきます(笑)。楽器とかも触ってないはずなんで、本当概念みたいになっちゃってるよね。パートが概念(笑)。
──(笑)。アルバム出して、今後もこのペースを崩さずやっていければって感じですか?
松原 : そうですね。今回は今回で全部を入れた、まさに“ALL ABOUT”って感じでやったんですけど、次はもっとかっこいいものを作りたいですね。
──それは次のビジョンとして何か見えてます?
松原 : まだまっさらっすね。
──じゃあ今はまだ寝てると(笑)。
松原 : やっとアルバム出来たんで、もう少し寝ます(笑)。
レーベル KiliKiliVilla 発売日 2017/11/29
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12.
※ 曲番をクリックすると試聴できます。
RECOMMEND
MILKと同じく名古屋で活動するハードコア・バンド、THE ACT WE ACT。ハードコアに限らず、貪欲に自分たちがいいと思うものを取り込んでいくその姿勢が刻み込まれた傑作2nd。メンバーチェンジを経た現在も止まらず活動中。
こちらもMILKと同じく名古屋で活動するポップ・パンク・バンド、Killerpassの前体制でのラスト・シングル。インタビヴューでも語られているように、ヴォーカルである林の思いがこれでもかとぎっちり詰め込まれた全4曲入り。
今回のインタヴューでもレコメンドしている東京のハードコア・バンド、V/ACATIONが新ベーシスト迎えた新体制での初音源。アフリカン・ビートやオルタナの要素を取り込んだ曲など、新機軸な楽曲を含む全6曲収録。
LIVE SCHEDULE
やさしい友達
2018年1月20日(土)@K.D ハポン
出演 : MILK / 台風クラブ / ばけばけばー / my ex
nurse green vol.36
2018年1月21日(日)@HUCK FINN
出演 : MILK / Hello Hawk / odd eyes / スーベニア / THE ACT WE ACT
DJ : kuro / VIDEOBOX
PROFILE
MILK
2010年に結成し、愛知県を中心に活動中。
これまでに〈SummerOfFan〉から7inch「MY E.P.」、〈LessThanTV〉からソノシート「MISFITS E.P.」をリリースしました。メンバー皆が共通して好きで、影響を受けてるのは愛知県のハードコア・パンクです。楽曲・演奏力・ルックス・メンバーのキャラなどあらゆる面で「ああいうのがやりたい!」「あんな風になりたい!」というイメージと、実際にやれていることのギャップがめっちゃ大きいですが、好きだしやるしかねー! って感じでやってます。