トランプ大統領は、ロシア・ウクライナ戦争に対し、どのような動きに出るのか。元外務省主任分析官の佐藤優さんは「トランプは国際協調を無視して、単独で得意な取引を用いて、プーチン大統領と直接対話を行いつつ、ゼレンスキーを説得するかもしれない。結果として、世界に一定の平和をもたらす可能性が高い」という――。

※本稿は、佐藤優『いまと未来を読み解く!新 地政学入門』(Gakken)の一部を再編集したものです。

ドナルド・トランプ米大統領
写真=EPA/時事通信フォト
2025年2月3日、米国ワシントンDCのホワイトハウス大統領執務室で大統領令に署名しながら話すドナルド・トランプ米大統領

トランプ政権カムバック

2024年11月の大統領選で、カムバックを果たした共和党のドナルド・トランプ大統領。ロシア・ウクライナ戦争とガザ紛争の停戦に向けた彼の動きが今注目されています。果たして、この2つの戦いを解決するための秘策を、彼は持っているのでしょうか?

イラスト=『いまと未来を読み解く!新 地政学入門』(Gakken)

2024年11月、民主党のカマラ・ハリス候補を破って、ドナルド・トランプは大統領に返り咲きました。トランプの帰還により、「ロシア・ウクライナ戦争」と「ガザ紛争」に大きな動きがあると予想されます。

ロシア・ウクライナ戦争に関しては、選挙中に「自分が当選すれば24時間以内に戦争を終わらせる」とトランプは豪語していましたが、おそらく彼により停戦が早まるでしょう。ガザ紛争に関しては、バイデンの休戦要請を拒否してきたイスラエル首相のネタニヤフも、友好関係にあるトランプの声には耳を傾けるかもしれません。

民主党のバイデンのように西側的な民主主義の理念を他国に押し付けることをせず、トランプは自国の利益を第一に考えるアメリカ・ファーストを実行するでしょう。現実的な利益に基づく「取引(ディール)」を軸とするトランプの姿勢は、世界に一定の平和(恒久的ではないかもしれませんが)をもたらす可能性が高いです。

二国間交渉を重視するトランプ外交

トランプはNATO(北大西洋条約機構)やWTO(世界貿易機関)などの多国間同盟よりも2国間での直接的な外交を好みます。自国の利益を優先するトランプの姿勢は、ロシアや中国、北朝鮮などの強権(独裁)主義国家との親和性が極めて高いのです。