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火縄銃

登録日:2010/01/17(日) 01:56:15
更新日:2024/10/19 Sat 23:29:31
所要時間:約 9 分で読めます





【概要】

火縄銃とは種子島とも呼ばれる戦国時代~江戸時代にかけて日本で使用された銃器である。
銃器としての分類はマッチロック式のマスケット*1となるが、海外では「Teppo」や「Tanegashima」などとも呼ばれ日本独自の銃器として扱われることも多い。

【火縄銃の歴史】

【火繩銃の伝来と量産】

1543年、戦国時代日本の種子島へ、ある一つの兵器が二丁、ポルトガル人によって伝来された。

大地を揺らす轟音、そして甲冑を軽々と貫通する鉛の弾。人々はそれを火繩銃と名付けた。

伝来された二丁のうち一丁は新兵器の噂を聞き付けた紀州根来衆の頭領・津田藍物が買い取り、
残りの一丁は種子島の領主にして島津家家臣・種子島時堯(ときたか)の手へと渡った。

時堯はこの兵器を量産すべく、鍛冶屋・八板金兵衛と共に、四苦八苦しつつも一年後に初の国産火縄銃を完成させた。
俗に言う『種子島銃』である。
それまで日本、中国にも存在していなかった「ネジ」の製法にはかなり苦労したらしく、伝説には娘を商人に差し出し製法を聞きだしたなどと言うものもある。
この鉄砲伝来まで日本にはネジが存在していなかったというのは割と有名な話。しかしその後ネジは鉄砲以外では和時計等の一部分野に普及したのみに留まり、旋盤などのネジの生産機械等も存在していなかった。

一方、津田藍物は量産の方法を時尭から聞き、根来の里でも量産を開始。
根来から雑賀や国友へと量産技術は伝えられ、次第に鉄砲はその数を増やす事になる。

おそらく最初に渡された銃は見本のようなもので、武器商人としては気に入って貰ってどんどん買っていただこう…といった商魂が込められていたと思われるが、
紆余曲折有るが色んな意味でHENTAIな日本人はわずか一年で量産に成功した。


【火縄銃の性能】

銃の分類としては「マッチロック式のマスケット(=火縄点火式の先込め式の銃)」となる。詳しくはマスケット銃を参照。
現在の銃器と違い弾薬は一体化しておらず、火薬と弾丸は個別に銃口から入れ内部で突き固めて用いる。
そして、たまに誤解されるが火縄は導火線ではなく着火用の火種である。引き金を引く事でバネ仕掛けに固定された火縄のが火皿に当てられ、火薬に着火して爆発させる。

生産された場所により若干性能は異なる。

一般的に『命中精度が悪く、殺傷力も低い』みたいな認知が有るが、
確かに射程距離や命中精度は銃としてはお世辞にも良いとは言い難いものの、殺傷力については相応の威力を誇る。

弾の重さによって○匁と数え、それに対応した火縄銃は○匁筒と呼ばれる。
そして、普及率が高かったのは細筒とされる二、三匁筒である。これは、下から数えて二、三番目の手頃なサイズと言える。
が、それらですら二匁弾で直径約10.7mm・重量約7.5g、三匁弾は約12.3mm・約11.2gという代物。
銃弾の初速は、上記のサイズであれば大体300~350m/s。
単純な数値だけ見れば、この時点で.357マグナム弾位は威力で超えている。
そもそも火薬量も変えられるので反動と暴発をどうにかできるなら小型の砲筒並になる。

使用する弾は球形のため、空気抵抗を受けやすく失速しやすい。
しかし弾丸自体も鉛で重く柔らかかったため、まともに命中すれば体内で弾丸が変形し、傷口を想像したくない様なダメージを負うし鉛毒の影響も生じる。
もちろん足軽がつけていた様な銅丸が相手なら十分な威力で、命中さえすれば貫通か内部で装甲がめくれたりして基本的には被害が生じたものと思われる。
但し当時の火薬と弾丸などから現代の同口径の銃よりも火力があるかというとそうでもなく、命中角度が悪かったり装甲の厚みを多少増やされるなどしたら防がれたり弾かれやすいのも確かである。


構造が単純なので、火薬さえあればタバコの吸い殻の様な柔らかく砕けやすいものでも弾丸に変えられる。

しかも日本の物は当時の海外の物に比べて高精度の作りである為性能が高く、
現在でも海外で歴史再現を兼ねた古式銃の射撃大会が催される際、高成績を収めるのは日本の銃だったりする。

ローマ教皇「日本征服できそう?。小さな国だからできるでしょ?」
イエズス会「無理っす。うちより高性能な鉄砲めっちゃ配備してます。」

戦国時代末期、日本には全欧州の保有量に匹敵するというとんでもない量の鉄砲が配備されていたという説もあったが、実は根拠がない。現代ではイエズス会側に侵略の意図はほとんど無く、ただ単に新しい貿易相手が欲しかったという説が有力視されつつある。

また、日本の火縄銃の特徴としては「肩当てが無い」。
そのため右利きであれば左腕のみで支えなければならないのだが、これにより仰角が取りやすくなっている。
これは引き金を引く右腕がを引き絞った時の「会」に似ており、弓での修練をそのまま鉄砲に活かす目的があったとされる。

しかし、構造上雨に弱い、そもそも湿気に弱い、すぐ暴発、持ち運びに不便、連射が不可能、整備が難しい、など弱点も多い。

侵略する時ではなく、守り戦にこそ真価を発揮する兵器であるだろう。

【戦の変化?】


当時の戦は人々が多数で斬り合い刺し合うような、いわゆる白兵戦を連想してしまいがちだが、実際は負傷する人間の8~9割は弓による射撃が原因のものであった。しかし、白兵戦がなかったわけではなく、弓には威力が欠けており、粗末な鎧を着込んだ雑兵であっても戦死させるのは難しかったため、戦の最後では白兵戦に依存していた。

そこで弓より威力が高く、かつ飛距離の出る火縄銃が台頭すると、戦の様相が大きく変化した。
……といわれるが諸説あってよくわかってない。

例えば、火縄銃普及より以前の鎧は、小さな革や鉄で出来たピースを綴った小札鎧が主流であり、普及後は対弾性を増すため横に長い板を鋲や紐で組み合わせた板札鎧に変化したとされるが、あくまで戦争の大規模化による簡略化といわれる。火縄銃を防ぐ性能があったとされる、海外伝来の南蛮胴も、その伝来は戦国時代の末期である上、銃弾を防ぐ性能もあったかは怪しかった。

とはいえ、火縄銃普及に変化したものがなかったわけではなく、城郭の壁は防弾を考慮し、砂利などを詰めたものへ変わり、野戦などで用いられた設置式の盾も従来の木製盾では防げないため、竹を束に縛ったモノが併用されるようになった。


火縄銃と戦術の変化について、火縄銃の三段撃ちが上げられることが多い。火縄銃の装填速度を補うために、三列の横隊を組み、他列が射撃を行っている合間に装填を行う戦闘法である。

この戦術は織田信長が長篠の戦いで開発したという話が一般的だが、本当は雑賀や根来衆などが長篠の戦い以前に開発した戦法であるといわれる。
というか実際に信長・家康連合軍が同様の作戦を採ったという記述があるのは、
江戸時代に成立した通俗小説が元であり、お世辞にも信憑性のある資料とは言い難い物が多く、学界では長篠合戦での三段撃ちはなかった、というものが主流である。
信頼性の高い資料とされる『信長公記』などではそもそもどのような戦法を取ったかについての記載はない。

余談だが、戦国時代に使われていた「○○の陣」などと呼ばれる陣形も、陣形の概念は存在したが、軍の編成システムが洗練されていなかったため、陣形を組むのは不可能に近かったという説もある。先述した三段撃ちも指揮官の号令による一斉射撃ではなく、銃手個々人が判断して射撃を行うものだったとされる。

とまあ、戦国時代の合戦、というか日本の軍事史は戦法・戦術方面の研究は戦後ながらく忌避されてきたため、あまり進んでおらず、よくわかってない点が多い。ときには江戸時代の創作も混じっていたりするため、注意が必要なのだ。

戦国時代の合戦の様相を示す際に、兵法書である『雑兵物語』が参考にされることが多いが、『雑兵物語』が押さえている時代は戦国時代の末期も末期であり、全体像を押さえているわけではない。
この項の最初にに記述した合戦における死傷要因が弓によるものという逸話も、軍忠状や注文と呼ばれる記録をもとにしているわけだが、これらの史料に残された負傷記録は戦死は負傷原因が不明であり、戦勝側の負傷者しか記述されていないなど大分偏った記録であり、これもまた合戦の全体像を押さえたものではない。

【江戸時代以後】

戦国期には世界でも有数の銃器大国であった日本だが、江戸時代に入ると国内の銃の進化は大きく鈍化することとなった。
一応火打ち石を使ったフリントロック式も試作されたが、日本には上質な火打ち石が産出されなかった(逆に西欧等では大量に産出されたので採用されたと言える)ので、試作止まり。
江戸時代のメイン需要だった狩猟や害獣退治は火縄銃で十分であり、それ以外にも競技用の射的筒としての需要もあったが、こちらでは火打石を打ち合わせる衝撃で照準が狂うフリントロックは流行らなかったともされている。

その後幕末になると威力はともかく上記の短所から戦争では輸入銃や村田銃などに取って代われて完全に時代遅れの代物となった。
世界の銃器博覧会と化した戊辰戦争は新式の西洋銃*2がメインだったものの、火縄銃を持っていた人を徴兵した記録が残っている他、火縄銃を後装式にするなどの近代化改修的なことが行われていた様子。
また民間の猟師達の間では昭和初期になるまで現役だった。

太平洋戦争末期には来るべき本土決戦に備えて「国民簡易小銃」という名前の火縄銃が市井の町工場での量産され、国民に配られる計画もあった。
精度や戦闘能力は使えるか使えないかというレベルである。

【著名な火縄銃使い】

  • 遠藤秀清、遠藤俊通
謀殺で有名な宇喜多直家の家臣で、日本初の狙撃による暗殺を成功させた兄弟。

  • 稲富祐直
稲富流遁走術砲術の開祖。
八~十匁(17~18.7mm)という大口径の祐直の火縄銃が火を噴けば8町(約870m)以内なら必中だったと言われ、更に具足を2枚着て飛び回れたという。
そんな祐直は、代々仕えていた一色氏が明智光秀に与したために滅ぼされた後細川忠興に仕えた。
だがにビビって的を外すなどいいところがなく、石田三成によって細川屋敷が包囲された時には忠興の最愛の妻・ガラシャの警護を命じられていたにもかかわらず勝手に逃げ出した。
ガラシャを失いブチギレていた忠興から追放&奉公構を食らったが、その後徳川家康に召し出され幕府の鉄砲方として仕えていくこととなった。

  • 杉谷善住坊
六角氏に仕えた火縄銃の名人。六角義賢に命ぜられて*3信長を狙撃するが、信長にかすり傷を負わせただけに終わってしまった。激怒した信長は執念深く善住坊を探し続け、浅井家旧臣の磯野員昌にこれを捕縛させた。善住坊は生きたまま首から下を土中に埋められ、竹製のノコギリで時間をかけて首を切断する鋸挽きの刑に処された。

【著名な火縄銃による死者】

  • 三村家親(上述の遠藤兄弟による狙撃)
  • 真田信綱
  • 真田昌輝
  • 森長可
  • 井伊直政*4
  • 神保相茂(大阪の陣で味方の伊達政宗に射殺された説がある)
  • 板倉重昌(島原の乱で一揆型として参戦していた火縄銃の名手・駒木根友房に狙撃されて戦死)

【フィクションでの火縄銃】

戦国時代~明治初期辺りを舞台にした作品以外で出てくることはあまりない。
技術的にその辺同等の異世界等を舞台にした場合でも、やはり掃除や火縄と言う点で使い勝手が悪いためかもう少し後の時代の銃である事が多い。

【火縄銃使い】

2メートルを超える火縄銃、狭間筒を手にアメリカへと渡ってきた士族。
の扱いは下手だが、銃の腕は確かで柔術の心得もある。

ちなみに舞台となるのは19世紀末、西部開拓時代。
長銃もレバーアクションのウィンチェスターライフルが人気を博していた頃であり、火縄銃なぞ時代遅れも良いところなのだが、「狙撃」という彼のスタイルが図らずも欠点を補っている。

「2」以降は軍刀と火縄の二丁拳銃を武器とする。
ちなみに史実の伊達政宗は、騎馬鉄砲隊の組織の他に火縄銃による日本初の銃殺刑も記録している。

【火縄銃が登場する作品】

史実の人物が異世界に召喚されて軍を率い戦う漫画。現在のところはだが。
劇中では豊久と信長が持ち込んだ戦国時代の現物の他に、信長の作らせた複製が登場。
信長は硝石など火薬を製造させ、更にドワーフたちに火縄銃を複製させ配備した。

なおドワーフ達は火縄銃を独自にアレンジし、大口径の火縄散弾銃も開発している。
劇中で日本刀の鍛治を「変態」呼ばわりしてるけど、この人らも十分変態である。

  • 戦国大戦
鉄砲隊もあり、やはり火縄銃を持つ。
イラストで持っているのは火縄銃なのか…?というものもあるが。

  • 千銃士
マスケット銃なども含む古い銃を擬人化した男子「貴銃士」らを収集・育成するスマートフォンゲーム

シリーズ初期より、錆びた塊から低確率で『鬼ヶ島』という名のライトボウガンが生産できる。
錆びた塊から作れる武器は作中世界において大昔に失われた文明が色濃く反映された不思議な見た目が多いのだが、この鬼ヶ島はどういうことか現実の火縄銃に酷似している。
性能はというとやはり火縄銃だからか拡散弾や徹甲榴弾などの爆発系の弾丸や火炎弾の装填数に優れており、さらに麻痺弾や睡眠弾といった状態異常系の弾も使用可能と妙に器用な一面もある。
しかも見た目に反してリロードや反動性能も悪くない。
上位武器として風化した塊から生産できる『神ヶ島』も存在する。

  • メタルギアソリッド
MGS4において火縄銃が武器として登場した。
+ ...
ステージ上で拾うことは出来ず、ドレビンショップで200000DPという高額で販売されているのみとなっている。
(ヘイブン突入後なら50%OFFとなるので若干買いやすくなる)
だがヘイブン内部で買い、VS蟷螂戦や、その後の仔月光大量発生時において

「新型の性能を試すには丁度よいわ!!」

と意気込んで使用した人間は必ずこう思うだろう

「使えNEEEEEEEEEEEEEEEEE!」


何せこの火縄銃
●連射不可能(単発)
●リロードの際に筒内を掃除しなければならず時間が長い
とかなりリアルな仕様のため、室内で使うならぶっちゃけショットガンを乱射していた方がマシ。














…そう室内で使うならだ。



というのもこの火縄銃、で使ってこそその真価が発揮される。

何故ならこの火縄銃、外で使うとなんと神風を発生させるのだ。

もうちょっと具体的に言うならばだ、竜巻を発生させて、目の前にいる輩を綺 麗 さ っ ぱ り吹き飛ばしてくれるのだ。
つまり、マップ兵器。

想像して欲しい。
火縄銃を構える伝説の傭兵の姿を。そしてPMC共が、唸り声をあげながら突っ込んでくる竜巻にバタバタと薙ぎ倒されてゆく様を・・・

絶 頂 す ら 覚 え な い か ?



DPに余裕があるならば、是非とも買って欲しい一品である。

…何、「無限バンダナステルス迷彩買うのにDPを貯めてるから無理」?

んなもんノーキル、ノーアラートクリアしてGETしろ!



MGSPWでも種子島という名で登場。キーアイテムは火竜の剛翼。素材からしてモデルは上述の鬼ヶ島だろう。

やはり装弾数一発、リロードは時間がかかり移動もできないが、ヒットすると確率で神風が発生。
竜巻で巻き上げ、兵士がヘリにつかまってそのまま回収できる。室内でも使える。

【余談】

殆どの方が、日本の種子島銃はポルトガルから伝来したと習ったはずだが、今はそう言わない。
これは、元となった銃がフィリピン製であり、乗って来た船が中国の物であった為で、これをポルトガル伝来とよぶのは…と言うことである。
またこの時に伝来した銃が、俗に言う散弾銃型のストックの為、日本製のライフル型のストックは幕末維新期まで待たないとない。

なお銃は量産できても、肝心の火薬は輸入硝石に頼るしかなかったのでは…とも言われる。
しかしそれでは数十万丁にもなる莫大な量の銃砲の需要を賄いきれるものか甚だ怪しく、一定の国産も実現していたのでは? とする研究者も多い。*5



追記・修正は山田先生とかち合い弾を作れる人か、お寺の鐘を狙撃できる人がお願いします

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最終更新:2024年10月19日 23:29

*1 「Matchlock」の訳語として「火縄銃」が充てられている

*2 英仏はもちろんアメリカやドイツ,オランダの銃もあった

*3 個人的な腕試しなど諸説あり

*4 正確には、鉄砲傷が完治するのを待たずに関ヶ原合戦後の戦後処理にあたったため、身体に疲労を抱えることとなり、その結果免疫力が低下して破傷風に罹ったとされる。また、破傷風ではなく、弾丸に含まれていた鉛の毒成分が傷口から入り込み、結果として衰弱していき、若死にしたともいわれる。

*5 例えば糞尿からアンモニア成分を抽出することができる。但しその方法が当時知られていたかはまだ研究の余地がある。