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人造人間ハカイダー

登録日:2009/12/07 Mon 21:32:08
更新日:2024/12/05 Thu 08:02:43
所要時間:約 5 分で読めます





貴様が正義なら

俺は、だ!



『人造人間ハカイダー』とは、1995年度『東映スーパーヒーローフェア』のメイン上映作品。


【概要】

人造人間キカイダー』に登場したライバルキャラ・ハカイダーを主人公に据えたスピンオフ
原作のハカイダーとは設定が大きく異なっており、ヒーロー物の悪役キャラを主役にした珍しい作品である。

プロデューサーは『キカイダー』でもプロデューサーを務めた吉川進、脚本は『キカイダー』前期メインライターを務めた伊上勝の実子・井上敏樹がそれぞれ担当。
監督は『仮面ライダーZO』や『仮面ライダーJ』で辣腕を振るった雨宮慶太。
ヒーローの超人的な身体能力を押し出しつつ軽快なアクションを披露したこれらと違い、本作のアクションはロボットの持つ重量感とパワーを前面に押し出したものになっており(ハカイダーが敵を殴れば十数m吹き飛び、頭を踏みつければ砕け、壁を殴れば簡単に粉々になる等)、軽快でテンポのいいアクションが重要視されがちな特撮ヒーロー作品群の中において、一種独特な魅力を放っている。
「破壊力●●tとかなのに壁とか殴っても壊れねぇじゃん…」的な、設定と実際の描写との齟齬にモヤッと感を抱いたことがある人には、周囲の物を破壊しながら殴り合ってお互いを吹き飛ばし合うハカイダーとミカエルのラストバトルを是非一度見て頂きたい。
ナイトシーンで撮影された本格的なバイクアクションも見所の一つ。

石ノ森章太郎生前最後の東映特撮ヒーロー作品であり、なおかつ遺作でありながら、テレビシリーズ版『キカイダー』のリメイクを意識した作品である。
原作のハカイダーは真一文字の口をして、特にこれといった表情をしていないが、本作のハカイダーは口をへの字に曲げて、怒ったような表情をしている。

残虐すぎてカットされたシーンや新規エフェクト、劇場公開版で不自然だった部分を補填するシーンを追加したDC版も存在する。
当時複数の漫画家によってコミカライズされたが(余湖裕輝・やまむらはじめ・井荻寿一・坂井孝行等)、いずれも現在まで未単行本化。

【あらすじ】

一見平和な街ジーザスタウンは、独裁者グルジェフの牛耳る狂気の街だった。
逆らう者には容赦なくロボトミー手術が施され、ロボット・ミカエルと重武装兵による恐怖の支配が行なわれていたのである。
長い眠りから覚めたハカイダーは、バイク”ギルティ“にまたがりジーザスタウンへと突入!
ハカイダーと重武装兵の戦闘が開始された。

【登場キャラクター】

誰が作った規律だ?俺はそんなものを、受け入れた覚えはない!
絶海の孤島にある監獄に封じ込められていた戦闘型人造人間。
トレジャーハンター達が監獄に侵入した事で永い眠りから目覚めた。
元はジーザスタウンの治安維持のためグルジェフに開発されたロボットだったが、自我が芽生えたため廃棄処分となる。
しかし処分寸前に数名の科学者によって盗み出され、行方不明となっていた。
非戦闘時にはリョウと呼ばれる人間形態に変身する。ナイフきらーん☆はしない

人間形態では言葉を発しないが、戦闘形態では人間の感情を理解しているかのような発言をする。
信念を持つ者には優しく接するが、信念を持たぬ者や他人の自由を奪う者に対しては激しい怒りを見せる。
ミカエルの正義に対して言った項目冒頭の台詞は原作の『人造人間キカイダー』でハカイダーの発した「貴様が正義なら俺は悪でいよう」のオマージュ


当初は原作でのハカイダーの声優飯塚昭三に本作の声優としてオファーがあったが後に白紙となる。
その後、「やはりオーディションを受けてほしい」と事情が変わり、飯塚はこれを受ける事に。
だが、制作サイドが自分をオリジナルの声優として尊重せずたかだか声優風情と見下し、あまりにぞんざいなふてぶてしい態度にオーディションを降りたという。

装備類・ならびに劇中での詳しい活躍などは名前のリンクから飛べる個別記事参照のこと。

私は正義の下僕……
ジーザスタウン公安司令官。
廃棄されたハカイダーに代わり開発されたロボットで、軍事・警察と言った治安維持の一切を取り仕切る超高性能戦闘ロボット。
スペック上ではハカイダーを遙かに上回り、ディレクターズカット版の最終決戦においてはその能力を存分に発揮し、ハカイダーを圧倒した。

グルジェフの命令にしか従わず、彼の語る正義を信じて疑わない。
犯罪者の自殺を阻止するなど命の大切さを理解している一方で、ハカイダーとの戦闘で生き残った重武装兵をその場で処刑するという残忍な一面を持ち、その血しぶきを全身に浴びる姿は衝撃(なお、劇場公開版にはこのシーンは存在しない)。

ハカイダーとの戦闘ではハカイダーショットを奪い、弾丸を抜いてから銃身で殴りつけるという陰湿な攻撃も平然と行う。
ハカイダーに対しライバル心的な感情を見せるなど、様々な顔を持ち合わせる。
声が同じでもけしてカカシ先生やロム兄さん、009やキカイダー00ではない。
装備類その他に関しては名前のリンクから飛べる個別記事参照のこと。

  • ミカエル戦車
ハカイダーによって首をもぎ取られた後、グルジェフの所有していた小型戦車と合体し、異形の怪物となったミカエル。
ミカエルの意識は消え、グルジェフの持つリモートコントローラーによって操られている。
その構造は二足歩行戦車に近く、カラーリングも純白から青と赤のツートンになっているのが特徴。
ハカイダーの数倍はある体躯に強力な武装、圧倒的なパワーでまるで抵抗を許さずハカイダーを追いつめるも、最後は破壊され、爆散した。
なお、破壊方法は劇場公開版とディレクターズカット版で異なっている(ミカエルの個別記事参照)。
正義……私は……正義……ワタシ、ハ……セイ、ギ……

  • グルジェフ
花がなぜ美しいか解るか? ……それは花が無抵抗だからだ
ジーザスタウン元老院の総督。
口では平和を謳っているが、それは自分に逆らう者を捕らえて洗脳、あるいは抹殺する事で成り立つ「偽りの平和」である。
故にジーザスタウンの殆どの市民はグルジェフの恐怖政治を受け入れてしまっており、自分たちの快楽のみを追い求め、堕落しきっている。
自分の支配力をさらに強めるためにハカイダーを作らせたが制御できず廃棄し、新たにミカエルを作らせた。
口にする理想と実際の行動が悉く乖離したサイコパスで、狂気的な支配体制を敷く暴君であるが、その実態は紛れもない小物
ミカエル戦車が破壊されハカイダーに追い詰められると、惨めにうろたえ命乞いをするが「貴様には…殺す価値など…無い!」とハカイダーに一蹴される。
なおも諦め悪く、背中を向けたハカイダーにミカエル戦車の残骸から拾い上げたキャノン砲を撃とうとするが、ハカイダーに拳を叩き込まれ、死亡。ジーザスタウンの独裁体制は終わりを告げた。
後に、下記のゲーム版にてラスボスとして復活。ミカエルのコピーボディに脳を搭載したサイボーグとしてハカイダーの前に立ちはだかる。
この時のCVは演者である本田ではなく、声優の三木眞一郎が担当している。
名前は宗教用語の「グル」から。なお、『超全集』によると、「シラクラ」という仮称だったらしい。
白い服を着て無菌室で監視、頭にチップを埋め込まれるなどやっている事は当時問題を起こしていたオウム真理教と似ている。
『てれびくん』に掲載された坂井孝行による漫画版では倒されておらず、ラストのコマでジーザスタウンの人々から石を投げつけられた。

  • カオル
お前らが、殺したんだ……。たった一つの希望を……!
反政府ゲリラに身を投じる本作のヒロイン。
ハカイダーに夢で見た“黒い騎士”の姿を重ね、惹かれるが……。
「リョウ」と「カオル」という名前は『仮面ライダーアギト』、シチュは『牙狼』でなんとなくセルフオマージュされたような感じ。
演じた宝生舞はこれをきっかけに『銀狼怪奇ファイル』『ショムニ』などに出演し女優としてブレイクしたが、2010年に引退。

  • キャップ、アミ、キヨ、アンディ、エディ、ラルフ
反政府ゲリラのメンバー達。
自由のためにグルジェフの打倒を掲げているが、実際はグルジェフに成り代わってジーザスタウンを支配するというものであり、ハカイダーからは「元老院と同じようにお前達も醜い」と唾棄された。
直後にミカエル率いる重武装兵の襲撃に遭い、必死の抵抗空しく全滅した。
ちなみに、日本人メンバーのキャップ・キヨはJACの栗原敏と井上清和、アミは河合亜美と、東映特撮常連のメンバーが演じている。
特に井上清和(ハカイダーに手首を掴まれて電撃を浴びせられた人)は70年代の頃から出演経験があるものの殆ど画面に映らないモブ役が大半という方なので、ここまで扱いが大きいのは間違いなく本作が初。


【余談】

スポンサーはセガが担当。
その後、東映とセガのタッグで本作のテレビシリーズが制作される予定だったが、新番組枠という理由で企画が変更され、最終的に『超光戦士シャンゼリオン』として結実した。

また、セガサターンからゲーム版として『人造人間ハカイダー ラストジャッジメント』が発売された。脚本は勿論井上敏樹。
プロフェッサー・ギル、ビジンダー、ワルダーなどがアレンジされて登場。
中でもワルダーは声優がオリジナルである。

後のS.I.C.ハカイダーの大元のデザインになったのは言うまでもないが、それとは別にこの作品用に竹谷隆之が製作した雛形モデルがフューチャーモデルズより一般販売されている。
また、アオシマからギルティとハカイダー(こちらは塗装済みソフビ)のプラモデルがリリースされており、ハカイダーはバイクに乗ってハカイダーショットを構えているもの、地面に片膝をついてハカイダーショットを構えているものの2種類がある。




ハカイダー「俺の修正は、俺が決める。俺は追記する者。裁く者だ」

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最終更新:2024年12月05日 08:02