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ドイツ語

登録日:2009/09/18 Fri 20:23:40
更新日:2024/11/21 Thu 16:12:36
所要時間:約 7 分で読めます





食らえ!必殺!


クーゲルシュライバーッッッ!!!



ドイツ語とは、主にドイツ、およびその周辺で使用される言語である。

【概要】


文字はほぼ英語と同じアルファベット(当のドイツ語では「アルファベート」)を使う。
英語と同じアルファベット26文字のほか、「ウムラウト」と呼ばれる変母音3文字と「エスツェット」1字を加えた計30文字で構成される。

「ウムラウト」とは、母音(a/i/u/e/o)のうち「a」と「o」と「u」の上に2つの点々「ウムラウト」である「」の付いた「ä」「ö」「ü」の3つを指す。
読みもウムラウトの付いていない「a」「o」「u」とはそれぞれやや異なる。
フランス語にも「トレマ」という同型のものがあるが、こちらとは別物。
ちなみにパソコンの仕様や言語設定などでウムラウト文字が出せない場合は、後ろにeを付けた「ae」「oe」「ue」で代用する。

「エスツェット」は「ß」という文字。ギリシア文字のβ(ベータ)によく似ているが、別の文字である。
基本的に語末に使われるため小文字しか使われず、大文字のエスツェットはそれを含む単語を大文字表記で強調する場合くらいしか使わない。そのため正書法への採用も2017年までずれ込んでいる。
ウムラウトと同様、エスツェットが出ない場合は「ss」で代用する。
スイスのドイツ語では1934年にエスツェットが廃止されたため、代用形のssのみを用いるのが標準である。

後述の通り基本的にはローマ字読みとなるので、読むだけなら英語よりも読みやすく、「書いてある通りに読む」とよく言われる。(……とは言ってもあくまで英語と比べたらというだけの話ではあるが)

ちなみに、ドイツ語のキーボード(や古くはタイプライター)では文字の使用頻度の都合で、英語(他)のキーボードとの比較でYとZの位置が逆になっている。
一般的なキーボードの配列を左上の文字であるQから右に読んで俗に「QWERTY配列」と呼ぶが、ドイツ語のキーボードはこれにならって「QWERTZ配列」と呼ばれる。
さらにウムラウトやエスツェットの入力*1に対応しているキーもある。
PC(Windows)の場合は、ドイツ語の言語パックをインストールしたうえで、IMEの言語設定をいじることでドイツ語仕様にできる。


+ ドイツ語アルファベットの読み方
A:アー B:ベー C:ツェー D:デー E:エー
F:エフ G:ゲー H:ハー I:イー J:ヨット
K:カー L:エル*2 M:エム N:エヌ O:オー
P:ペー Q:クー R:エル*3 S:エス T:テー
U:ウー V:ファウ W:ヴェー X:イクス Y:イュプシロン
Z:ツェット Ä, Ae:エー*4 Ö, Oe:エー*5 Ü, Ue:イュー*6 ß, ss:エス・ツェット*7

原則はローマ字読みと同じだが、eiはアイ、ieはイー、euはオイなど若干違うところもある。
よく例として挙げられるのはEinstein(アインシュタイン)。エインステインとは読まない。
しかし規則性があってないような英語とは違い、発音の規則さえ覚えてしまえば、たとえ単語の意味がわからなくてもそれなりに正しい発音になる。
実際にはアクセントを表記せず、母音の長短を中途半端にしか綴ってくれないので、ちゃんと読むには辞書を引く必要がある。
ただ、規則に従ってローマ字風に読んでさえいれば、我々日本人が曖昧な日本語も理解できるように、向こうの人も理解してくれる。
拙くても頑張って話そうとする健気な幼女姿勢を見せる者に対しては人はわりかし寛大に接するものである。

英語のthに相当する発音が無い(というよりこの音を使う言語があまり無い)のも日本人にはありがたい。
rは喉をこするようにして出す音で、訓練しないと発音は難しいが、rの後に子音が来るか単語がrで終わるときは母音化させて「ア」に近い音になるため、登場頻度は見た目よりは少ない。古い発音(舞台ドイツ語)や南方ではいわゆる巻き舌rが使われるので、苦手な場合は巻き舌でもOK。
他にもj,s,w,zも英語と対応する音価が違い、それぞれ英語のy,z(母音が続かない場合/s/*8),v,tsに相当する。例えばJapan(日本)は"ヤーパン"と発音する。
vは基本/v/だが、本来語では/f/と発音する(ただし数は多くない)。

ドイツの代表的な自動車メーカーVolkswagenは"フォルクスヴァーゲン"と読む。この綴りを英語で読めば"ヴォルクスワーゲン"となる。
ところが、日本語での正式名称(カタカナ表記および読み)はなぜか独英混ぜこぜの"フォルクスワーゲン"とされている。
……つまるところ、これは日本語にはvの音が存在しないことへの配慮である。要はリヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)が実際にはヴァーグナーなのと同じ事情。

あとhは基本的に直前の母音を長音化し、[h]と読むことは音節頭に来た場合くらいしか無い。
ウムラウトの発音については、例えばöは「オ」を発音するときの舌の位置を「口の奥側」から「口の前側」に移動するだけで良い(üも同様)。äは「エ」でOK*9
他にも多数細かい読み方はあるが割愛する。




もともとドイツ語と英語は2000年ほど前に西ゲルマン祖語から分化したとされる言語であり、北ゲルマン諸語のスウェーデン語などと共に「ゲルマン語派」に分類される。
そのため英語と共通の語源を持つ語彙が多く、同じ綴りでほとんど同じ意味の単語が多い。
また、綴りが違う語でも、発音に類似性があったり一部の文字に置換があったりする程度で、部分的な一致となるとさらに多くの単語が該当する。

+ 【綴りが同じor類似する単語の一例(独/英)】
  • 私 → ich(イヒ) / I
  • ~です(三人称単数) → ist(イスト) / is
  • ~でない(否定) → nicht(ニヒト) / not
  • 飲む → trinken(トリンケン) / drink
  • 持っている → haben(ハーベン) / have
  • 感謝する → danken(ダンケン) / thank
  • 来る → kommen(コメン) / come
  • すべて(の) → all(アル) / all
  • 良い、好ましい → gut(グート) / good
  • 朝 → Morgen(モルゲン) / morning
  • 夜 → Nacht(ナハト) / night ※Guten Morgen, Gute Nachtで、それぞれ「おはよう」,「おやすみ」(good morning[night])の意
  • 光 → Licht(リヒト) / light
  • 家, 家庭 → Haus(ハオス), Heim(ハイム) / house, home
  • 庭 → Garten(ガルテン) / garden
  • 兄 → der (ältere[großer]) Bruder(ブルーダァ) / (elder[big]) brother
  • 妹 → die (jüngere[kleine]) Schwester(シュヴェスター) / (younger[little]) sister
  • 娘 → Tochter(トホター) / daughter
  • 少女、メイド → Mädchen(メートヒェン) / maiden ※名詞の文法上の性は中性だが、実際の対象は女性
  • 友達 → Freund(フロイント), Freundin(フロインディン) / friend ※freundlichで「親切な」(friendly)。
  • 客 → Gast(ガスト) / guest
  • 狼 → Wolf(ヴォルフ) / wolf
  • 猫 → Katze(カツェ) / cat
  • 竜 → Drache(ドラヘ) / dragon
  • 男 → Mann, Männer(マン, メナー) / man, men
  • 意志(力) → Wille(ヴィレ) / will
  • 胸 → Brust(ブルスト) / breast
  • 手 → Hand(ハント) / hand
  • 足 → Fuß(フース) / foot
  • サッカー → Fußball(フースバル) / football ※米語ではsoccer
  • 本 → Buch(ブーフ) / Book
  • 石 → Stein(シュタイン) / stone
  • 星 → Stern(シュテルン) / star
  • 塩 → Salz(ザルツ) / salt ※オーストリアの都市Salzburg(ザルツブルク)の直訳は「塩の砦(城)」
  • 火, 炎 → Feuer(フォイア), Flamme(フラメ) / fire, flame
  • 風 → Wind(ヴィント) / wind
  • 水 → Wasser(ヴァサァ) / water
  • 氷 → Eis(アイス) / ice
  • 米 → Reis(ライス) / rice
  • 白(い) → weiß(ヴァイス) / white
  • 赤(い) → rot(ロート) / red
  • 王 → König(ケーニヒ) / king ※女王はKönigin(ケーニギン)
  • ワイン → Wein(ヴァイン) / wine
  • 西 → Westen(ヴェステン) / west
  • 北 → Norden(ノルデン) / north
  • ウィーン(オーストリアの首都) → Wien(ヴィーン) / Vienna
  • 牛乳 → Milch(ミルヒ) / milk
  • 英語, 英国の → Englisch(エンリシュ) / english ※グレートブリテン(Great Britain)島はGroßbritannien(グロースブリタニエン)で、ドイツ語でも略称はGB(またはGBR)。
  • 世界 → Welt(ヴェルト) / world ※Weltall(ヴェルトアル)で「宇宙」の意

これら以外に、語源を共有する外来語も多く存在する。なお、以下のリストはドイツ語と英語が歴史言語学的に近いことを示すものではない点に注意。

  • 正常な, 普通の → normal(ノルマール) / normal
  • 時計、時刻、~時 → Uhr(ウーァ) / hour ※意味的な対応としてはclock, o'clockのほうが近い。
  • バラ → Rose(ローゼ) / rose ※Heidenrösleinで「野ばら」。Heideは野原、荒れ地(男性名詞Heideは異邦のもの、異教徒といった意味。)、-leinは小さなものという意味の接尾辞。
  • 虎 → Tiger(ティーガー) / tiger
  • 音符、楽譜、成績 → Note(ノーテ) / note
  • 神経 → Nerv(ネルフ) / nerve
  • 人形 → Puppe(プペ) / puppet
  • 劇場 → Theater(テアータァ) / theater
  • オペラ → Oper(オーパァ) / opera ※(オペラ)作品はOpus(オープス)
  • 演奏会 → Konzert(コンツェルト) / concert
  • 音楽 → Musik(ムジーク) / music
  • 命題, 論文 → These(テーゼ) / thesis
  • 器官, 機構 → Organ(オルガーン) / organ
  • お茶 → Tee(テー) / tea
  • コーヒー → Kaffee(カフェorカフェー) / coffee
  • オレンジ → Orange(オラーンジュ) / orange
  • 貯え, 予備 → Reserve(レゼルヴェ) / reserve
  • 冬 → Winter(ヴィンタァ) / winter
  • 日本, 漆器 → Japan(ヤーパン) / Japan
  • 中国 → China(ヒーナ, キーナ,シーナ) / China
  • スウェーデン → Schweden(シュヴェーデン) / Sweden

ただし、以上の例では一般的に知られる英単語および関係がわかりやすいものを恣意的に選んだにすぎない。実際には
  • 黒い → schwarz / swart(英語では絶滅)
  • 黄色い → gelb / yellow(同源だが分かりづらい)
  • 小さい → klein / clean(英語では意味が違う)
  • 時間 → Zeit / tide(英語では「時間」の義はほぼ絶滅)
のように、関係性が分かりづらいものも多く、英語からの類推だけで学べるような言語では決してないことは強調しておきたい。むしろそこそこ英語を学習した人が知識を活用するなら、フランス語(書き言葉)の方が同源語の割合が多くわかりやすいだろう。


月の名前に関しては英語とほぼ同じ綴りで共通点が多い。ただし発音はドイツ風。

+ 【ドイツ語の月の表記と読み方】
1月:Januar(ヤヌアール) 2月:Februar(フェーブルアール) 3月:März(メルツ) 4月:April(アプリル)
5月:Mai(マイ) 6月:Juni(ユーニ) 7月:Juli(ユーリ) 8月:August(アォグスト)
9月:September(ゼプテンバァ) 10月:Oktober(オクトーバァ) 11月:November(ノヴェンバァ) 12月:Dezember(デツェンバァ)


ドイツ語の面倒なところには、「名詞の性別」と「不定動詞」にある。
とはいっても不定動詞は基本的に規則変化であるため、それを覚えてしまえば楽だが名詞の性別は地雷もあったりする。

例えば父親(Vater)は男性名詞
母親(Mutter)は女性名詞
子供(Kind)は中性名詞
とこのあたりはまあわかるが、

学校少女牛乳。これらの性別はどうだろう。


中性中性なのだが。

ちなみに名詞の性別に対して不定冠詞(ein~、eine~)や定冠詞(der~、die~、das~)を格ごとに(~が、~の、~に、~を)使い分ける必要がある。

+ 定冠詞と不定冠詞の格変化の一例
【定冠詞 (英語の the に相当)】
男性 女性 中性 複数 「てにをは」との対応
1格 (主格:Nominativ) der Vater die Mutter das Kind die Leute ~は, ~が
2格 (属格:Genitiv) des Vaters der Mutter des Kindes der Leute ~の
3格 (与格:Dativ) dem Vater der Mutter dem Kind den Leuten ~に, ~に対して
4格 (対格:Akkusativ) den Vater die Mutter das Kind die Leute ~を
参考までに日本語の「てにをは」との(意味上の)対応関係を示した。
ただし、日本語の「てにをは」(助詞)は、名詞の格を指定する方法には違いないが、名詞(冠詞)そのものを(格)変化させるというやり方を取っているわけではなく、文法的には全く別の仕組みである。

これに関しては、とにかく全ての形を覚えないことには何も始まらない。
このような表を目に焼き付けるなり、「デアデスデームデーン」などとひたすら復唱するなりして、どうにか頭に叩き込むしかない。

【不定冠詞 (英語の a, an に相当)】
男性 女性 中性
1格 (主格:Nominativ) ein Mann eine Frau ein Kind
2格 (属格:Genitiv) eines Mannes einer Frau eines Kindes
3格 (与格:Dativ) einem Mann einer Frau einem Kind
4格 (対格:Akkusativ) einen Mann eine Frau ein Kind
これらはあくまで一例で、弱変化、不規則変化など、他にもさまざまなパターンがある。(どういった変化をするかは単語によって異なる。)

ちなみに、1格~4格という用語は日本のドイツ語学者が発案したもので、あくまで学習上の便宜を図るためにつけられたもの。ドイツ本国ではそれぞれ Nominativ, Genitiv, Dativ, Akkusativ や Werfall, Wesfall, Wemfall, Wenfall と呼ぶ。日本と同じように連番付けした 1. Fall, 2.Fall, 3.Fall, 4.Fall という名称もある。
このページでは伝統にならい1格→2格→3格→4格という順で説明しているが、使用順序と類似性を考慮して、性を男性→中性→女性→複数に、1格(主格)→4格(対格)→3格(与格)→2格(属格)にした順番で説明する出版物・ウェブサイトも多い。

とは言うが辞書で調べればわかるのでそれでついでに覚える、という根気があればドイツ語はパーツの構成を覚えるだけなのでそのあたりはわかりやすい。

ここまで読んだ時点で気づいた勘のいいアニヲタ諸君もおられるかも知れないが、ドイツ語においては名詞の最初の文字は必ず大文字にする習慣がある*10
知らない単語だとしても、その単語が名詞かどうかは文頭に置かれていなければ容易に判別できる。
ついでに言えば、"冠詞"+"なんちゃら"+"名詞"……という形の場合、"なんちゃら"は形容詞だろうとおおよその見当をつけることもできる。
そしてさらに言えば、通常小文字で書く形容詞の語頭を大文字にすると名詞化が起こる。(英語で言う「the+形容詞」のようなもの。)
例えば、gutは「良い」だが、Gutは「良いこと」となる。

初学者にとっては面倒なことこの上ないが、ドイツ語には英語では廃れてしまった格変化が残っているため語順の制約が英語よりも緩い。
つまり、冠詞の格変化の形を見れば、語順に頼らずとも文の要素(いわゆるSVOCMと呼ばれているやつ)の判別が可能だということ。(多少語順を変えても文意が通る。)
しかしながら、語順を好きにいじれるとはいえ、ドイツ人的にしっくりくる、読みやすいor聞きやすい語順というものは一応ある。


ドイツ語の方言は、歴史的に長らく地方分権の時代が続いていたため、方言の多様性でも知られており、それぞれの方言の公的な地位も高い。
主に北部方言と中・南部方言とに分かれ、さらにオランダ方言(オランダ語)、ルクセンブルク方言(ルクセンブルク語)、スイス方言、オーストリア方言などドイツ本国以外で用いられるドイツ語もある。
それぞれの違いは大小様々だが、ドイツ語の方言とするか独立言語とみなすかは、言語学的な差異以上に政治的な事情が大きいようである。
教科書で学ぶドイツ語はいわば標準語にあたり標準ドイツ語と呼ばれる。
今日の標準ドイツ語のルーツは、書き言葉に関してはテューリンゲン・オーバーザクセン(東中部)方言がもとになっていて、そこで書かれたルター訳聖書が各地に伝播する過程で標準文語(書き言葉)の地位を得るに至ったとのこと。
発音については19世紀末に確立された舞台ドイツ語の影響が強く、音だけで見ればハノーファー弁が最も標準ドイツ語に近いようである。
とはいえ、厳密な標準ドイツ語の話者は非常に少なく、ルーツとされる地方・都市の住人でさえも(あくまで標準ドイツ語との比較で)多少訛りのあるドイツ語を話しているのが実際のところである。
こうした事情があるため、(特に発音の差異が大きいと)習ったところと違うところでは通じないことがよくある。



…と、ドイツ語の文法その他諸々を抜きにして、ドイツ語は多く中二病患者やゲームの登場物の名称に好かれる傾向にある。
なぜかと言われれば(おそらく)発音が無駄にかっこいいからである。

数字を数えるだけでも

null(ヌル、0)
eins(アインス(orツ)、1)
zwei(ツヴァイ、2)
drei(ドライ、3)
vier(フィーア、4)
fünf(フュンフ、5)
sechs(ゼクス、6)
sieben(ズィーベン、7)
acht(アハト、8)
neun(ノイン、9)
zehn(ツェーン、10)
elf(エルフ、11)
zwölf(ツヴェルフ、12)
dreizehn(ドライツェーン(orツン, 以下同様)、13)

sechzehn(ゼヒツェーン、16) ※16と17は形が崩れる
siebzehn(ズィ(ー)プツェーン、17) ※語末or子音の前にある「b」の音は無声化して「p」

zwanzig(ツヴァンツィヒ、20)
dreißig(ドライスィヒ、30) ※30だけzがß(エスツェット)になって~ßigになる

sechzig(ゼヒツィヒ、60)
siebzig(ズィ(ー)プツィヒ、70)

と発音する。

21以上99以下の(10で割りきれない)数字は、und(ウント。英語のandに相当)をつけて表記・発音する。このとき一の位を先に言う。
仮に23ならdreiundzwanzig(ドライウントツヴァンツィヒ)と読む。要するに「3と20」という表記法。20をnullundzwanzigなどとは読まない。
(数詞に限った話ではないが)ドイツ語では一つの単語であることを示すためにスペースを空けずにくっつけて書く。おかげで長くなると読みづらい。
100はhundert(フンダァト)と読み、200はzweihundert(ツヴァイフンダァト)。
……だが、101はeinundhundertではなくhunderteinsとする。前後がごちゃごちゃして混乱しやすい。
いくつか野暮ったい例を挙げると、zweihundertzweiundzwanzigは222、dreihundertfünfundsechzigは365である。アラビア数字ならたった3文字で済むのに。

1000はtausend(タウゼント)。1万は英語と似た表記で、zehntausend(ツェーンタウゼント、つまり10千)と書く。同様に10万はhunderttausend(100千)。
一方、100万はeine Million(英語っぽく書けば a million)となり、200万は複数形でzwei Millionenとなる。
例えば、200万ユーロは、英語ではtwo million eurosだが、ドイツ語ではzwei Millionen Euroとなる点が対照的。
なおEuroはドイツ語ではオイロと読む。Europa(欧州)もオイローパ。どうでもいいが、地域名のオイローパは中性名詞だが、女神オイローパは女性名詞。
10億(1000百万)はeine Milliarde、1兆(1000十億)はeine Billion。ちなみにMillion、Milliarde、Billionはいずれも女性名詞である。

序数(第nの~、n番目の~)は、原則、特定の語尾(19までは-t、20以上は-st)をつけるだけという比較的シンプルなもの。
例外は1のerst、3のdritt、7のsiebt、8のachtの4つ。(siebentはやや古い言い方。)
ただし、建物の階数の数え方はアメリカ方式ではなくイギリス(欧州)方式なので注意が必要。
日本語で言う「1階」は「das Erdgeshoss(the ground floor)」で、「2階」が「der[das] erste Stock[werk](the first floor)」。
倍数を表す際には-fach(zweifachはdoppeltで代用可)を、反復数(回数)を表す際には-mal(付加語の場合は-malig)をつける。

西暦の記述は、1099年以前と2000~2099年は普通に数字として読めばおk。
1100~1999まで(と2100~2999年まで)は桁を2つに区切って間にhundertを入れる。1Q984年ならneunzehnhundertvierundachtzig(19*100+4+80)と書き、読む。
幸い、我々アニヲタが生きる時代の表記・読みは比較的易しい。世紀を前後にまたぐと一気に面倒になるが。
今年(2024年)なら、zweitausendvierundzwanzig(ツヴァイタウゼントフィーアウントツヴァンツィヒ)、2000と24。……長い。

それからドイツ語圏では、非英語圏の多くの国と同様、小数点に,(カンマ)を使い、桁の区切りに.(ピリオド)を使う(日本と逆になっている)ため、少々戸惑うかも知れない。
区切る桁数は上記の記数法を見てもわかるように3桁ずつ。(例: 1.234.567.890 Euro、円周率は3,14)

数詞に関してはフランス語ほどではないが英語よりもややこしい部類。

またこの記事の冒頭のセリフ「クーゲルシュライバー(Kugelschreiber)」もなかなか格好いいように感じるが、


要はボールペンである


ほかの単語も格好よく

分度器→ヴィンケルメッサー(Winkelmesser)
セブンイレブン→ズィーベンエルフ (Sieben Elf)
007→ドッペルオーズィーベン (Doppel-O Sieben)
騎士→リッター、リッテル(Ritter)
豚→シュヴァイン(Schwein)
豚の塩漬け→アイスヴァイン
マンモス→マムート(Mammut)
→ボーゲン(Bogen)
メイス→シュトライトコルベン(Streitkolben)
ナイフ→メッサー(Messer)
鳩→タウベ(Taube)
タマネギ→ツヴィーベル(Zwiebel)
稲妻→ブリッツ(Blitz)
雹→ハーゲル(Hagel)
下痢→ドゥルヒファル(Durchfall)

「下痢」ですらコレである

ドイツにある「黒い森」という地名も原語ではSchwarzwald(シュヴァルツヴァルト)となり、かの有名なブリッジストーンもそのままドイツ語に逐語訳するとBrückenstein(ブリュッケンシュタイン)となる。
他にも→ギフト(Gift)・死→トート(Tod)・鮫→ハイ(Hai)などの言い方も面白い。

あとどうでもいいが一部方言では6をセックスと発音するところもある。ニヤニヤするのは日本人と英語圏だろうか。
(もっとも、我々の意味するところのSEXと英語でのそれは、主とするところが異なるが……)

【日常とドイツ語】


日本ではドイツ語は学校の授業科目に含まれておらず自分から学習して初めて出会うイメージが強いため
一見あまり縁がないように見えるが、歴史的な経緯より日本語として根付いたドイツ語由来の言葉は結構多い。

典型的なところだと元素名や医学用語。
前者の例だと「ナトリウム」(Natrium)「カリウム」(Kalium)「チタン」(Titan)はドイツ語由来である。もし英語から借用していれば「ソーディウム」(Sodium)、「ポタシウム」(Potassium)、「タイテイニウム」(Titanium)になったのだろうか。
オスはないのかとネタにされがちな「メスシリンダー」もドイツ語由来で”Messzylinder”→測定”Mess”*11+円筒/シリンダー(Zylinder)が合体したものである。
医学だと「カルテ」(Karte)が有名だが、これ以外に一般にも使われている例として「ギプス」(Gips)*12や「ガーゼ」(Gaze)、「シャーレ」(Schale)は聞いたことがあるだろう。
医学はドイツを中心に発展し日本もドイツ経由で知識を輸入したという事情から、かつてはドイツ語でカルテが記録されることが多かったが、現在は日本語を含む平易な言葉に置き換えられていることが殆ど。

また傾向として「~エン」「~ヘン」で終わる言葉は大体ドイツ語由来のことが多い。
なぜならドイツ語の傾向として~enで終わる単語の割合が多いためである。
この例として「バームクーヘン」はよく聞いたことがあると思うがこれはドイツ語でBaum(木)とKuchen(ケーキ)で「木(の形をした)ケーキ」という意味である。

その他の例だと、フリーは英語だけどアルバイト(Arbeit)もドイツ語由来である。
ただしArbeit(動詞形だと”Arbeiten”)の主な意味は労働、仕事、動きなどで英語のwork(ing)に近く、労働そのものや正社員として働くことを意味し日本語の「アルバイト」とは意味が異なる。
それからスキージャンプの用語であるK点のKはドイツ語の極限点(kritischer Punkt)の頭文字である。
その他にゲレンデ、ピッケル、リュックサック、アイスバーンなど日本で一般的に使われている単語も多い。

【創作におけるドイツ語】


やはりそのカッコイイ語感からか、創作における登場頻度も比較的多め。
ドイツを舞台にした作品はもちろんのこと、SFやファンタジーでもよく登場する。

ジオン公国軍にて使われている。

リック・ドムⅡ(リック・ドム ツヴァイ)
ドムフュンフ
ノイエ・ジール
等々

他に連邦軍のジムはゲムと発音する(偽装ジムのゲム・カモフや鹵獲ジムのゲファンゲナー・ゲム等)。

ただ、ザクⅡはザクツーである。
公国も最初は大日本帝国がモデルだったが、いつの間にか(ギレン・ザビのキャラのせいで)ナチス・ドイツにすりかわった名残だろう。

新機動戦記ガンダムW』のゼクス・マーキスもドイツ語の6からきている。

ガンダムSEED』においても、地球連合系MSの武器の名前にはドイツ語が多用されている*13

機動戦士ガンダム00』では私設武装組織 ソレスタルビーイングの外部組織のMSにドイツ語の名前がついている。

銀河帝国の公用語がドイツ語に 近い ものとなっている。(但し遠い未来の為、現代と微妙に差異がある)
例:黒色槍騎兵=シュワルツ・ランツェンレイター、砲撃の号令=ファイエル(現代ドイツではフォイア)

ドイツ語に由来する固有名詞が多い。
炎魔法を得意とするヴェルトマー公国の騎士団=ロートリッター(赤→炎)
雷魔法を得意とするフリージ公国の騎士団=ゲルプリッター(黄色→雷)
十二魔将=アインス、ツヴァイ、…、ツヴェルフ(1~12)
等々

シリーズを通して人名・地名・アイテム名・モンスター名・技名等にドイツ語が多く使用されている。
例:フラム(炎)、ゼッテル(紙)、フラン・プファイル(炎の矢)、アインツェルカンプ(一騎打ち) 等


【ドイツ語が使用されている国々】


※()内はそれぞれの国名のドイツ語表記と読み
 ドイツ連邦共和国 (Bundesrepublik Deutschland, ブンテスレプブリーク ドイチュラント)
 オーストリア共和国 (Republik Österreich, レプブリーク エースタァライヒ)*14
 スイス連邦 (Schweizerische Eidgenossenschaft, シュヴァイツァリシェ アイトゲノセンシャフト 通称: die Schweiz)
 リヒテンシュタイン公国 (Fürstentum Liechtenstein, フュルステントゥーム リヒテンシュタイン)
 オランダ王国 (Königreich der Niederlande, ケーニヒライヒ デア ニーダァランデ 通称(海外領土を除く本土): die Niederlande)
 ベルギー王国 (Königreich Belgien, ケーニヒライヒ ベルギエン)
 ルクセンブルク大公国 (Großherzogtum Luxemburg, グロースヘルツォークトゥーム ルクセンブルク)

 その他各国のドイツ人コミュニティー(東欧、北欧、ロシア、アメリカ、イタリア北部など)


【オーストリアとオーストラリアの国名表記の由来について】
オーストリアの英語表記は Austria で、オーストラリアは Australia と austr の部分が共通している。
austr は大元を辿ればラテン語 auster 由来で「」を意味する。さらに遡ると PIE *h₂éwsteros に行き着き、これは南……ではなく、語源的に「夜明けの方向」すなわち「」を表す。これに由来する英語(east)とドイツ語(Ostern)では正しく「東」の意味を継承できている。
したがって、オーストリアを意味するドイツ語Österreichは、位置関係通り及び文字通りに「東の帝国」という意味であるが、これをラテン語で書く時に語源意識で東(occidens)ではなく同源のausterを採用してAustriaとしたため、のちにできたAustraliaと語形が一部被ってしまった。
英語に限らず、オーストリアの呼び方にラテン語または英語由来のAustria系を採用している日本語をはじめとした各言語では、二国の名称が類似してしまい、しばしば混乱の元となる。



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最終更新:2024年11月21日 16:12

*1 標準的なものは、『-』(0の右)がß(ss)、『@』(Pの右)がÜ(Ue)、『;』(Lの右)がÄ(Ae)、『:』(Lの2つ右)がÖ(Oe)。なお『@』の文字はAlt Gr(右alt)+Qで出る。

*2 上の歯茎に舌を押し当ててlの音

*3 巻き舌でrの音

*4 音は口を「あ」にして「エ」

*5 音は口を「お」にして「エ」

*6 音は口を「う」にして「エ」

*7 音価は[s]

*8 より正確には、音節末にある or 他の子音の前にある or 無声阻害音の直後にある場合が該当する。例えば Krebse の s は母音の直前だが濁音ではない。

*9 短母音の ä と e は全く同じ発音であり、長母音は äh が "広い方" のエーで、eh が "狭い方" のエーである。しかし特に北部の現代ドイツ語においては(ニュースなどフォーマルな場でさえ)長母音の ä も "狭い方" のエーの方で発音されるようになりつつあるので、発音については ‹ä› = ‹e› だと思ってもほぼ差し支えない。むしろ他の母音をかんがみると、äh を /ɛː/ と読むほうが長短と tense - lax のコントラストの対応が崩れており、体系として例外的な現れ方である。

*10 名詞の最初を大文字にする文化は17世紀から18世紀初頭にかけて英語を含む欧州言語で流行していたが、徐々に廃れ、ドイツ語でのみ例外的に残った。

*11 単独で Mess という単語は存在しないことに注意。あくまで合成語成分として使われている動詞語幹

*12 「ギブス」は誤記

*13 プラント系はラテン語、オーブ系は日本語が多い。

*14 直訳すると「東の王国」。