コロナワクチン積極的に接種を 「かぜと一緒」は誤解 埼玉医大 関雅文
2024年10月に定期接種が始まった新型コロナウイルスワクチンの接種があまり進んでいないようだ。ワクチンが高価であること、「コロナはもう、かぜと変わらない」という誤解が大きい。患者数はインフルエンザの方が随分多かったが、死者は数倍以上という新型コロナは「感染してはいけない病気」。最も効果的な対策はワクチンだ。高齢者も若年者も積極的に接種してもらいたい。
私は埼玉医大に加えて、東京都内にある診療所でも外来を担当している。診療所はインフルエンザ感染者への対応で精いっぱいだが、県内外から患者が送られてくる埼玉医大は違う。高齢者を中心にコロナ感染で入院する人が増えている。基礎疾患がある患者が目立ち、帰宅できずに入院することが多い。
「ワクチンを打ちましたか」と尋ねると「打っていない」との答えが返ってくることも少なくない。重症化のリスクが高い80代の人でもそうだ。
65歳以上の高齢者、60~64歳で心臓や腎臓、呼吸器の基礎疾患のある人や、エイズウイルス(HIV)による免疫機能の障害がある人は定期接種の対象者で、国や自治体がコロナワクチンの費用の一部を補助する。住んでいる自治体によって違うが、窓口での支払いは数千円程度だろう。
ワクチンを打たないまま感染して重症化すると、肺炎や脳梗塞、心筋梗塞などを起こしやすい。高齢者だけではなく、若年者でも同じ。集中治療室(ICU)に入り、1日当たりの医療費が数百万円ということになりかねない。ワクチン費用とは桁違いだし、亡くなる危険だってある。
今冬、インフルエンザが猛威を振るっている。それに比べればコロナは、と思ってしまうかもしれない。それは大きな誤りと言わざるを得ない。
インフルエンザとコロナは感染の仕方が違う。肺の表面などを焼き尽くすインフルエンザウイルスを、切れ味の鋭い刀を持った侍とすれば、気がつかぬ間に毛細血管から入り込み、床下に潜り込むように広がっていくコロナはさしずめ忍者と例えることもできるかもしれない。
地表を焼き尽くすインフルエンザに対して、コロナはゲリラ豪雨のように地下の下水道やマンホールを水浸しにしてしまう。肺炎を起こせば、水浸しで溺れるような状態になるのだ。
医療従事者はそれぞれに対処しなければならない。数年前のような流行初期と比べれば治療設備は整っているし、ウイルスの毒性も強くはない。コロナに感染してもほとんどはレスキューできるが、やはりワクチン接種が一番大事だ。
日本ではコロナワクチンの定期接種は年1回だが、米国などは高齢者を中心に年2回以上の接種を推奨している。ウイルスの性質が変わりやすく、半年以上前のワクチンは効かない恐れがある。
定期接種の対象に入っていない若年者は全額自己負担なので、1万数千円かかってしまう。国民全体の医療費が膨れ上がるのを防ぐ意味もあるので、もう少し安くしてもらいたい。
発熱などの副反応が強く出やすい人もおり、注意は必要だ。国内外のメーカーがいろいろなワクチンを製造しており、副反応が出にくいものもある。若年者も含めて、主治医に相談するなどした上で、ぜひ積極的に予防接種してほしい。(談)
(新聞用に2025年1月8日配信)