「母が死ぬまで待てと?」認知症の口座凍結、親族の困惑
柴田秀並
認知症の人の金融資産が凍結されてしまい、親族と金融機関がトラブルになるケースが相次いでいる。介護費などに充てられず、親族が借金に追い込まれることもある。金融庁が業界に改善を求めているが、対応は道半ばだ。
「老後の足しに」と投資したはずが…
「まるで死ぬのを待てと言わんばかり。いまのうちに母にしてあげたいこともあるのに……」
福島県に住む自営業の女性(48)は3月、証券会社の担当者の電話ごしの言葉に困惑した。70代の母が持っていた投資信託を解約しようとして、断られたからだ。
認知症が進行した母は4年前の2017年5月に、病院に入院。父親は亡くなり、身寄りは女性だけだった。母に預金はほぼなかったが、投資信託だけは持っていた。運用収益が毎月振り込まれ、「老後の生活費の足しに」と購入する高齢者が多い商品だ。
母の介護でお金が必要だった女性が解約を申し出ると、担当者は「本人の意思が確認できれば」と言った。でも電話の受話器を渡した母親は笑うだけ。認知症が進行し、受け答えができない状態だった。
意志能力ない取引、法律で「無効」どうすれば?
民法では意思能力のない状態での取引は「無効」とされる。このため金融機関は、顧客が認知症と知れば、口座を凍結して取引を停止することが多い。
女性は借金をするしかなかっ…