エネルギー審議に足りない視点 脱炭素で求められる新たな「E」とは
国のエネルギー政策の審議会では、「S+3E」という言葉がよく登場する。
5月に経済産業省の審議会で始まったエネルギー基本計画改定の議論でも、「S+3Eが根幹」「S+3Eのバランスが重要」といった発言が聞かれる。以前は「3E+S」、さらに前は「3E」だった。
三つのEは、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を指す。2002年にエネルギー政策基本法が施行されて以降、政策の柱になってきた。
Sは安全性(Safety)。東京電力福島第一原発事故後に加わり、3年前の改定議論の終盤から前に置くようになった。「安全が大前提」を強調した形だ。
しかし、それだけでは抜け落ちる論点があるのではないか。そんな問題意識から4年前に始まった研究プロジェクトが今年、報告書をまとめ、新たな原則として「S+4E」を提言した。
四つ目のEは「公平・公正」(Equity&Justice)。「今までの審議は経済面に偏りがちだった。これを加えて参照するようにすれば、多様な議論を促せる可能性がある」と研究代表者の江守正多・東京大教授は言う。
エネルギーの転換は、脱炭素のかぎをにぎる。気候科学を専門にしてきた江守さんは、原発事故後、エネルギー関係の審議をネット中継で見るようになった。経済や技術の観点での議論が多いのに、倫理的な観点は少ないと感じ、「研究として追究したい」と思うようになったという。
研究プロジェクトは脱炭素化技術の普及をめぐる倫理的、社会的な課題を探るのが目的で、個別の技術の是非には踏み込まない。経産省や環境省の審議会の議事録を機械学習も使って分析し、脱炭素化が社会に及ぼす影響について、幅広い分野で活躍する識者へのヒアリングや討論を重ねた。
この結果、従来の議論は省庁…