(左から)ステノのダン・アンダーソン氏、ヘビアのジョージ・シブルカ氏、クリオのジャック・ニュートン氏。
Steno, Hebbia, Clio
リーガルテックは、人工知能の進歩もあり、注目を集めている。
弁護士が会計、文書への注釈付け、契約書の作成など、仕事の面倒な部分をアウトソーシングできるツールを求めているため、この分野は長らく活況を呈してきたが、Crunchbaseのデータによると、経済不安によるベンチャーキャピタル(VC)の資金引き上げの一環として、2023年にはこの分野への投資が6年ぶりの低水準に落ち込んだ。
資金調達は2021年と2022年の過去最高水準に比べると低調だが、他の業界のスタートアップが苦戦する中、一部のリーガルテック系スタートアップは新たな資金調達ラウンドに成功している。ただし、生成AI(人工知能)が自社のビジネス提供の中核をなすものであることをアピールすることが条件だ。
生成AIを使って弁護士の契約書作成と交渉を支援するRobin AI、実際に弁護士資格を持つAIを構築したSuperlegal、契約書作成とレビューにAIツールを貸し出すロンドンを拠点とするスタートアップDefinelyは、いずれもここ数カ月でVCから新たな資金を調達している。
Business Insiderは、PitchBookのデータを分析し、投資家から最も多くの資金を調達したリーガルテック新興企業15社を特定した。
リストの中には、Clio、Rocket Lawyer、Everlawのように、それぞれ2008年、2006年、2010年に設立された企業もある。
リストにあるその他のスタートアップはここ数年以内に設立され、すぐにVCの寵児となった。Harveyは生成AIリーガル製品群を提供し、7月に1億ドル(約145億円、1ドル=145円換算)のシリーズC資金調達を行った。
以下のリストに掲載された新興企業は、どのようなタイプの弁護士にサービスを提供し、どのようなタスクの完了を支援するかという点で異なるが、どの企業も現在、ビジネス目標を推進し、顧客を獲得するためにAIを活用している。
以下のリストは、それぞれの新興企業が受けたVCからの資金調達の総額に基づいて整理した。
Clio
Clioの創業者兼CEOのジャック・ニュートン(Jack Newton)氏。
Clio
設立:2008年
本社所在地:カナダ、バーナビー
最新の資金調達:9億ドル(約1305億円、シリーズF、2024年7月)
資金調達総額:12億ドル(約1740億円、同社による)
主な投資家:OMERS Growth Equity, New Enterprise Associates, BlackRock, CapitalG
AIをどのように活用しているか:クラウドベースの法律事務所管理ソフトウェアを提供するクリオは、文書を要約し請求書を作成するためのAIパートナーを昨年提供し始めた。
Icertis
Icertisのサミール・ボダス(Samir Bodas)CEO。
Icertis
設立:2009年
本社所在地:ワシントン州、ベルビュー
最新の資金調達:8000万ドル(約116億円、シリーズF、2021年3月)
資金調達総額:4億8150万ドル(約700億円、同社資料による)
主な投資家:B Capital Group, Ignition Partners, Greycroft
AIをどのように活用しているか:Icertis は契約管理プログラムを構築し、ユーザーがデータを取得して分析するためのさまざまな AI ツールを提供している。
Ironclad
Ironcladの共同創業者のジェイソン・べーミヒ(Jason Boehmig)CEO(左)とカイ・ゴグウィルト(Cai GoGwilt)氏。
Ironclad
設立:2014年
本社所在地:サンフランシスコ
最新の資金調達:1億5000万ドル(約217億円、シリーズF、2022年1月)
資金調達総額:3億3300万ドル(約478億円、同社による)
主な投資家:Sequoia, Accel, Franklin Templeton, BOND, Emergence Capital
AIをどのように活用しているか:Ironcladは、AI を活用した契約書レビューを提供しており、編集だけでなくデータ分析や視覚化も行える。
Rocket Lawyer
Rocket Lawyer
設立:2006年
本社所在地:サンフランシスコ
最新の資金調達:2億2300万ドル(約323億円、シリーズE、2021年4月)
資金調達総額:3億2800万ドル(約475億円、同社資料による)
主な投資家:GV, Wasabi Ventures, LexisNexis Group
AIをどのように活用しているか:Rocket Lawyerは、個人、家族、中小企業に、法人設立、遺産計画作成、法的文書レビューのためのツールを提供している。同社は対話型AIを使って法的手続きをナビゲートし、コストを抑える手助けをする。
Everlaw
Everlawの創業者兼CEOのAJ・シャンカール(AJ Shankar)氏。
Everlaw
設立:2010年
本社所在地:カリフォルニア州、オークランド
最新の資金調達:2億200万ドル(約293億円、シリーズD、2021年11月)
資金調達総額:2億9860万ドル(約433億円、同社による)
主な投資家:Andreessen Horowitz, CapitalG, HIG Growth Partners, K9 Ventures, Menlo Ventures
AIをどのように活用しているか:Everlawのクラウドベース電子情報開示プラットフォームは、法務チームの共同作業と情報発見を支援し、データを精査して法的論拠を構築するAIアシスタントを提供する。
FileVine
Filevine
設立:2015年
本社所在地:ユタ州、ソルトレーク・シティ
最新の資金調達:1億1600万ドル(約168億円、シリーズD、2022年4月)
資金調達総額:2億5800万ドル(約374億円、同社資料による)
主な投資家:Meritech Capital Partners, Album VC, Signal Peak Ventures
AIをどのように活用しているか:FileVineは、弁護士が案件の受付から請求までを管理するのを支援し、AIを使用して法的文書を分析する。
Ontra
設立:2014年
本社所在地:カリフォルニア州、コンコード
最新の資金調達:2億ドル(約290億円、シリーズB、2021年10月)
資金調達総額:2億4000万ドル(約348億円、同社資料による)
主な投資家:Blackstone, Battery Ventures
AIをどのように活用しているか:Ontraはプライベート・マーケット向けにAIを活用した契約の自動化とインサイトを提供している。
Harvey
Harveyの共同創業者、ウィンストン・ワインバーグ(Winston Weinberg)氏とゲイブ・ペレイラ(Gabe Pereyra)氏。
Harvey
設立:2022年
本社所在地:サンフランシスコ
最新の資金調達:1億ドル(約145億円、シリーズC、2024年7月)
資金調達総額:2億ドル(約290億円、同社による)
主な投資家:Google Ventures, Open AI, Kleiner Perkins, Sequoia Capital, SV Angel, Elad Gil
AIをどのように活用しているか:Harveyは弁護士向けに、調査やガバナンスのためのツールを含む複数の生成AI製品を提供している。
ContractPodAI
ContractPodAiの創業者兼CEOのサルヴァルト・ミスラ(Sarvarth Misra)氏。
ContractPodAi
設立:2012年
本社所在地:ロンドン
最新の資金調達:1億1500万ドル(約167億円、シリーズC、2021年9月)
資金調達総額:1億7300万ドル(約251億円、同社資料による)
主な投資家:SoftBank, Dittes Ventures, Insight Partners
AIをどのように活用しているか:ContractPodAIは契約管理のためにAIを使用し、法的プロジェクトやタスクを自動化するためにLeahと呼ばれる生成AIツールを提供している。
LinkSquares
LinkSquaresの創業者兼CEOのヴィシャール・スナク(Vishal Sunak)氏。
LinkSquares
設立:2015年
本社所在地:ボストン
最新の資金調達:1億ドル(約145億円、シリーズC、2022年4月)
資金調達総額:1億6100万ドル(約233億円、同社による)
主な投資家: G Squared, G2 Venture Partners, Sorenson Capital, Catalyst Investors, Jump Capital, First Ascent Ventures, Hyperplane Venture Capital, MassMutual Ventures, Myriad Venture Partners, Bottomline Technologies
AIをどのように活用しているか:LinkSquaresは契約書の検索と分析、交渉の支援、企業の法務部門全体の管理を行うために、法務チームにAIを導入する。
Hebbia
Hebbiaの創業者、ジョージ・シブルカ(George Sivulka)氏。
Hebbia
設立:2020年
本社所在地:ニューヨーク
最新の資金調達:1億3000万ドル(約188億円、シリーズB、2024年7月)
資金調達総額:1億6000万ドル(約232億円、同社による)
主な投資家: Peter Thiel, a16z, Google Ventures, Index Ventures
AIをどのように活用しているか:Hebbiaは、金融、不動産、その他の業界向けに、デューデリジェンスの完了、規制書類の確認、M&A取引の交渉、その他の法的タスクを実行できるAIエージェントを提供している。
Evisort
Evisort
設立:2016年
本社所在地:サンフランシスコ
最新の資金調達:1億ドル(約145億円、シリーズC、2022年5月)
資金調達総額:1億5400万ドル(約223億円、同社資料による)
主な投資家: Amity Ventures, G Ventures, TCV
AIをどのように活用しているか:Evisortは、初の契約書に特化した大規模言語モデル(LLM)を構築し、AIを活用した契約管理プログラムを提供している。
LegalOn Technologies
LegalOn USのダニエル・ルイス(Daniel Lewis)CEOとLegalOnグループCEOの角田望氏。
LegalOn
設立:2017年
本社所在地:東京・サンフランシスコ
最新の資金調達:1億100万ドル(約146億円、シリーズD、2022年6月)
資金調達総額:1億3200万ドル(約191億円、同社による)
主な投資家: Softbank Vision Fund 2, Sequoia China, Goldman Sachs
AIをどのように活用しているか:LegalOnはAIを使って契約書のレビューと契約交渉を行っている。
Steno
(左から)Stenoの共同創業者のグレッグ・ホン(Greg Hong)氏、ディラン・ルーガ(Dylan Ruga)氏、ダン・アンダーソン(Dan Anderson)氏。
Steno
設立:2018年
本社所在地:ロサンゼルス
最新の資金調達:1500万ドル(約22億円、シリーズB、2023年5月)
資金調達総額:1億1400万ドル(約165億円、同社による)
主な投資家: First Round Capital, The Legal Tech Fund, Clio, Rivonia Road Capital, Trinity Capital
AIをどのように活用しているか:法廷レポートや訴訟支援のための技術を提供するStenoは、証言を分析し、洞察や要約を提供できるAIを搭載した文字起こしサービスを提供している。
Proof
Proofの創業者兼CEOのエリック・ヴォークト(Eric Voogt)氏。
Proof Technology
設立:2015年
本社所在地:ボストン
最新の資金調達:3000万ドル(約44億円、シリーズB、2024年2月)
資金調達総額:4200万ドル(約61億円、同社資料による)
主な投資家: Clio, Forward VC, The Legal Tech Fund
AIをどのように活用しているか:Proofは法的文書の送達プロセスをデジタル化し、AIを使用して訴訟や裁判に関するデータを収集し、情報を管理します。