昨年夏以降再開したこのエントリー、今年に入ってからタイトルを一部変更しています。前週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標がロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。
そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー再開の理由です。
<2025年2月5日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・米津玄師「Plazma」
1月29日公開分 1位→2月5日公開分 5位
・Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」
1月29日公開分 2位→2月5日公開分 2位
・ONE OK ROCK「Puppets Can't Control You」
1月29日公開分 10位→2月5日公開分 39位
(上記は"International Version"の公式オーディオ。)
当週におけるストリーミング等動向表はこちら。
前週44位に初登場を果たしたMrs. GREEN APPLE「ダーリン」の別バージョン(18祭Ver.)は、当週100位未満に後退しています。
「ダーリン」は"18祭Ver."が合算対象外ながら、ビルボードジャパンソングチャートで2週連続2位に。ストリーミング再生回数は前週比102.2%となり同指標首位に到達、そしてポイントは同101.9%を記録しています。「ライラック」や「ケセラセラ」といった年末年始に伸びた作品が1割近く下げていることから、聴取行動が新曲に移行していることがうかがえます。これは昨年末リリースの「ビターバカンス」も同様です。
他方、米津玄師「Plazma」はストリーミング再生回数が前週比89.9%、ポイントは同64.7%と推移し、Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」に逆転を許しています。当週4位に初登場した「BOW AND ARROW」に勢いが移ったともいえますが、「ダーリン」は最近の米津玄師さんによる作品の中でも特にダウンロード数が高く、これがポイント推移に作用しています。
<米津玄師 2024年以降リリースシングルの初登場週におけるCHART insight>
・「さよーならまたいつか!」(NHK連続テレビ小説「虎に翼」主題歌)
2024年4月17日公開分 初登場2位 (10,521ポイント)
ダウンロード39,275DL ストリーミング6,335,185回再生
・「毎日」(日本コカ・コーラ「ジョージア」CMソング)
2024年6月5日公開分 初登場6位 (7,167ポイント)
ダウンロード22,225DL ストリーミング4,723,054回再生
・「Azalea」(Netflixシリーズ「さよならのつづき」主題歌)
2024年11月27日公開分 初登場5位 (5,852ポイント)
ダウンロード16,799DL ストリーミング4,836,935回再生
・「Plazma」(劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』主題歌)
2025年1月29日公開分 初登場1位 (11,779ポイント)
ダウンロード40,408DL ストリーミング9,235,562回再生
・「BOW AND ARROW」(TVアニメ『メダリスト』オープニング主題歌)
2025年2月5日公開分 初登場1位 (8,204ポイント)
ダウンロード29,132DL ストリーミング6,823,746回再生
(現時点でミュージックビデオ未公開。)
2024年以降にリリースされた米津玄師さんのシングル曲において、ダウンロード数は「Plazma」が最も高くなっています。また初登場週におけるポイント構成比をみると、「Plazma」のダウンロード指標は「さよーならまたいつか!」並に高いことが解ります。
(なお、動画作成指標はミュージックビデオの公開日に伴い変動する傾向にあります。また「BOW AND ARROW」はデジタル初加算の2週前にUGC(ユーザー生成コンテンツ)の人気を示すTop User Generated Songsチャートで100位以内に登場しています(ただしUGCはソングチャートの構成指標ではありません)。)
「Plazma」のダウンロード数の高さは、タイアップ先の作品が大きく影響しているゆえと考えます。
昨年同時期のブログエントリーにて掲載した表からも解るように、機動戦士ガンダム関連作品では昨年公開の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』主題歌である西川貴教 with t.komuro「FREEDOM」がダウンロード指標で強さを発揮。同作品における関連曲も同様ですが、中でも「FREEDOM」は2024年度ビルボードジャパンソングチャートのダウンロード指標(基となるDownload Songsチャート)にて年間18位を記録しています。
西川貴教 with t.komuro「FREEDOM」の動向を踏まえれば、米津玄師「Plazma」のダウンロード数の高さは米津玄師さんのコアファンのみならず、同曲が主題歌に起用された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』のコアファンも取り込んだ結果と捉えていいでしょう。他方、所有指標であるダウンロードは継続しにくい性質ゆえ、当週のポイント前週比が比較的大きく下がったと考えます。
それでも、ダウンロード全体が徐々に減少する中にあって、米津玄師「Plazma」の初週ダウンロード4万超えは見事な記録です(ゆえに一昨日付のブログエントリー(→こちら)で紹介したNumber_i「GOD_i」の6万DLが如何に強力かも理解できるでしょう)。またストリーミングにおいてもリリース週から高く推移しており、今後「Plazma」がロングヒットするかに注目です。