鴻海&シャープ、見えてきた青写真と「切られる社員」「ストックオプション付与社員」の選別――ホンハイによる買収で何が起きるのか
「シャープ従業員の皆様へ」と題され、全社員にPDFで送られた、鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)総裁・戴正呉副総裁の連名による、2016年5月12日付メッセージ後半 |
- Digest
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- 甘い海外拠点は鴻海が仕切る
- 「日本人は全員、日本に帰る」流れ
- 国内は――「シャープはアップルになれ」
- 阿倍野本社の人は「バッサリ」の見通し
- ストックオプション貰えるかも――確実に残される人たち
- 8千人レベルの削減は十分ある
甘い海外拠点は鴻海が仕切る
このGWのレクチャーで、鴻海(ホンハイ)が考えているシャープの未来図が見えてきた。
たとえば、そこで示された、シャープのタイにおけるビジネスモデルを描いた英語の資料によると、冷蔵庫などを生産しているタイの製造子会社「SATL」(シャープタイ工場)は鴻海がレントして運営する、物流は「JUSDA」(鴻海の物流会社)が担う――といった、鴻海側からの、明確で具体的な未来図が描かれている。
各拠点ごとに、拠点長や部長クラス以上に対して、こうした鴻海側のアイデアが示され、その実現可能性や障害について検討するよう、指示を受けた、というのだ。
メッセージ全文 |
鴻海はアップル『iPhone』をはじめとする最先端の製品を受注生産するメーカーとして、ダントツで世界一の規模であり、おそらくは世界一の生産性も誇る。
シャープ買収によるシナジーを生もうと考えたら、生産や物流については、鴻海式のコスト構造に統一するのは、当然といえば当然だ。
「実はシャープは、海外拠点もコスト管理が甘くて、人件費が高いんです。
鴻海のようなブラックな労務管理ではなく、現地では『シャープは甘い』とナメられている。給料を上げて当然、と思われていて、ストでも、国営企業の次に標的となります。
こうした管理が甘いシャープの海外拠点は、3年くらいで切っていくのではないでしょうか」(シャープ社員)
「日本人は全員、日本に帰る」流れ
現段階で示されている未来図は、鴻海からの提案書、という位置づけだ。シャープの拠点がある各国(タイ、ベトナム、インドネシア、中国)、各商品について、「東南アジアの白モノはこうなる」「中国での液晶はこうしたい」といった、ビジネスモデルの変更を提案してきているという。
提案といっても、この夏を過ぎれば、正式にシャープの66%の株式を持つ親会社となるため、むしろ指示書、事業計画書ともいえる。鴻海にレントされた生産子会社は、鴻海から送り込まれた経営陣によって、鴻海の人件費相場に下げられ、下がらないと見るや、切られる可能性は高い。
「家電などコンシューマー商品事業で、アジア・中国での販売会議があると、鴻海の社員が乗り込んできて販売状況や在庫の現物照合データについて聞いて回っています
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3つの構造改革の1番で「鴻海拠点の活用による海外拠点の集約」「グローバルでの人員適正化」が掲げられ、もう一段のリストラは不可避(2016年5月12日付『2015年度決算概要』より)
鴻海はグループ従業員数が106万人(2014年12月)=SocialandEnvironmentalResponsibility(SER)Reportより。これは日立製作所の33万6670人(連結2015年3月時点)、トヨタ自動車の34万4109人(同)の約3倍。
鴻海従業員の学歴別の内訳。院卒以上が54%を占める(台湾の従業員数、2015年4月時点=鴻海精密工業のAnnualReport2014より)
上:「経営信条」は毎朝、全社員が唱和している。下:「経営理念」のほうは、研修で触れる程度。
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読者コメント
郭台銘(テリー・ゴウ)総裁の手によってシャープは否が応でも変わらざるをえないだろう。阿倍野本社ビルもニトリに売ったし。ある意味、産業革新機構の計画の方がマシだったかもしれない。でも全ては手遅れ。判断力のなさ、情報の小出し。全てが負ける要素しかない。日本国内シャープはアップルになれとの事だ。しかしなれないのなら鴻海傘下の中国にあるフォックスコンのような未来しかないのか。いやそれすらないかもしれない。
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