「皆さんが想像している以上に多くの人が不貞を働いている。それは驚くほど…」  そう語るのは、山陰を拠点にする探偵事務所の代表を務める40代の女性だ。匿名でなければ語れない事業を持つ人たちに迫る「顔なき…声」。探偵を取り上げた連載の最終回は、代表自身の歩みや、人間の「性(さが)」に目を向ける。  探偵事務所は島根県内だけで10事務所ほどある。女性が取り仕切る事務所はコロナ禍前、1件で100万円を超す仕事を受けることもしばしばあった。料金は調査時間に単価と実際に掛かった日数を掛け合わせて計算する。しかし、今は1件当たりの単価が落ち「赤字ではないが、大きく黒字も出ない」と明かす。  代表を務める女性は山陰地方の出身だ。この業界に入ったのは15年ほど前。関西の本部に務め、今と同じように不倫・浮気調査を行い、調査技術を磨いた。もともと事務員だったが、自身の離婚を機に何か別のことを始めようと思った。その時に思い浮かんだのがアニメや映画で目にした探偵だった。  とはいえ、物語の世界と現実はやはり違う。「殺人事件になんて当たったことがないし、不倫や浮気の調査ばかり」と苦笑いする。数年前...