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物価高なのに「デフレ」と言い続ける政府の魂胆とは なぜ脱却宣言しない? 内閣府の珍妙な回答

2024年11月9日 12時00分 有料会員限定記事
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 物価高が止まらない。主食のコメは高騰し、電気・ガス代の負担も重い。世はまさに「インフレ時代」。しかし、石破政権は「デフレ脱却」を目指して巨額の経済対策を講じるという。物価高対策の必要性に異を唱える人は少ないだろうが、やや引っかかる。デフレとは「物価下落」の意味ではなかったか。実情と真逆の目標を掲げ続ける意味は何なのか。(太田理英子、山田雄之)

10月4日、参院本会議で所信表明演説をする石破首相(佐藤哲紀撮影)

◆【デフレ】物価下落を意味する経済用語

 「デフレ脱却を最優先に実現する」。10月の所信表明演説で、こう掲げた石破茂首相。政府は今月中にも新たな総合経済対策を策定する見通しで、与党公明党、衆院選で大幅に議席を増やした国民民主党との協議を進めている。
 「デフレ(デフレーション)」は経済用語で、本来物価下落を意味する。だが、今国民が直面しているのは激しい物価高だ。
 9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、2021年9月以降、37カ月連続で上昇。物価上昇率は22年4月以降、日銀が目標とする2%を上回っている。コメ類は前年同月比447%上昇と、49年ぶりの伸び率だった。電気・ガス代の高騰も続き、政府の補助終了のため、大手電力10社と都市ガス4社は11月使用分を値上げする。
 円安による輸入価格上昇やロシアのウクライナ侵攻、物流の人手不足などを背景とする物価高。石破首相自身、所信表明演説で「約30年ぶりの物価上昇」にも触れていたが、なぜ—。

買い物客が行き来する立石駅通り商店街=8日午後、東京都葛飾区で

◆街の声は…「聞こえはいいけど」「矛盾しますね」

 街の人は「デフレ脱却」のフレーズをどう受け止めているのか。東京都葛飾区の立石駅通り商店街と立石仲見世商店街で聞いた。
 「政治が何かしてくれそうな、いいキャッチフレーズに聞こえるけど。今がデフレかっていうと、違うよね」。靴店店主の細谷政男さん(75)は腕を組みながら言い放つ。スーパーの商品は値上がりが目立ち、自身の店の靴も上がっている。「物価が上がるのはいいこと」とするが、「賃金上昇が全然、物価の上昇に追いついてない。政府が大きな旗を振るのはいいけど、どこかで政策が間違っているのでは」。
 近所のパート女性(76)は「デフレって言われても、実感はなかった。よく考えたら、矛盾しますね」と、考え込みながらつぶやいた。「『景気回復』とかを掲げた方がいい気がする」
 「野菜が安いと聞いて買い物に来た」という同区亀有の無職女性(58)は、デフレの意味を詳しくわからないという。記者が物価下落を指すと伝えると、「やっぱり政府が信用できない。いつも言うことがころころ変わるし」とあきれた表情をうかべた。

◆「2022年ごろには既に脱した」

 第一生命経済研究所の熊野英生氏は「以前は物価が持続的に下がり続けることをデフレと言ったが、今は市民の節約思考や、賃金が上がりにくい状況を漠然と指している。政府はデフレという言葉を自由自在に使ってきた」とみる。実際は物価上昇率2%を超え始めた22年ごろから「既にデフレは脱した」と指摘する。
 石破首相は先の総選挙中に、新たな総合経済対策の裏付けとなる24年度補正予算について、一般会計の歳出が約13兆円だった23年度補正予算を上回る規模とする考えを示している。「巨額の経済対策をするための大義として使われている言葉が『デフレ脱却』だ」

デフレとなった日本経済の現状を報告する「月例経済報告関係閣僚会議」に臨む森首相(右から2人目)ら=2001年4月、国会で

◆バブル崩壊後、悪循環に

 政府が「デフレ」を公式に認めたのは、2001年3月。景気に関する政府の公式見解を毎月示す「月例経済報告」の中で、初めて「緩やかなデフレにある」と言及した。
 物価が下がって売り上げが落ちると、企業が設備投資や雇用を控える。すると給与が下がって購買意欲が減...

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