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トヨタが5年連続「販売台数世界一」 その数字からどんなことが見えてくる?

2025.02.17 デイリーコラム 世良 耕太
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日本と中国以外は堅調

トヨタ自動車の2024年の年間販売台数は、ダイハツ工業と日野自動車を含むグループ全体で1082万1480台だった。前年比96.3%ではあったが4年連続で1000万台を超えており、フォルクスワーゲン グループの902万7400台(前年比97.7%)を抑え、5年連続で世界トップとなった。

トヨタグループのうちトヨタ(レクサスを含む)に着目して増減を見ていくと、前年比86.2%にとどまった国内(144万1842台)は、認証問題や「プリウス」のリコール(リアドアを開けるスイッチの不具合)による生産停止の影響が響いたと、トヨタは分析している。

一方で、北米は堅調な需要と新型「カムリ」の好調な立ち上がりがあり、前年比104.3%(272万9987台)を記録した。欧州も好調で前年比103.6%(116万6325台)。アジアはインドが前年比135.2%(30万0212台)と大幅な前年超えを記録。オセアニアは前年比107.4%(29万8480台)、中東は前年比103.2%(58万6542台)と、いずれも堅調だ。

アジアではフィリピンやベトナムなどが前年超えを記録したが、量販国である中国は新エネルギー車へのシフトや価格競争激化などの厳しい市場環境にさらされて前年比93.1%(177万5995台)にとどまり、アジア全体を前年割れの前年比96.9%(321万4633台)に導く要因になっている。

堅調に推移した地域もあれば、厳しい市場環境に見舞われた地域もあり、グローバルで見れば数字を落とす結果となった。だが、トヨタ単体では前年比98.6%(1015万9336台)に踏みとどまり、トヨタ側は「前年並み」と表現。1000万台の数字は単なる区切りのいい数字でしかないが、ほぼスバル一社分の販売台数にあたる差を2位のフォルクスワーゲン グループにつけ、トップに君臨している。

2024年のトヨタ グループの総販売台数は前年割れとなったものの、1082万1480台で5年連続世界一に。2位のフォルクスワーゲン グループには約180万台もの差をつけた。(写真はイメージで、2024年以前の元町工場での生産風景)
2024年のトヨタ グループの総販売台数は前年割れとなったものの、1082万1480台で5年連続世界一に。2位のフォルクスワーゲン グループには約180万台もの差をつけた。(写真はイメージで、2024年以前の元町工場での生産風景)拡大
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経営資源の多さが強み

台数をさばくだけでなく、そこから着実に利益を生み出すことで、開発に回す資金が得られる。資金だけでなく人材も含め、トヨタには豊富なリソースがあるから、将来の動向予測に対して広く網を掛けることができるし、「カーボンニュートラルに向かう道はひとつではない」と言い切ることができ、BEV(バッテリー電気自動車)だけでなく、HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)など、あらゆるxEV(電動車)に対して等分にリソースを割くことできる。そこが、トヨタの強みだ。

地域のニーズにあった手が打てるのもリソースが潤沢にあるからであり、トヨタの強みにつながっている。「GRヤリス」のような走る楽しみに特化したクルマを開発するいっぽうで、北米では魅力的なフルサイズピックアップを販売し、中東やオセアニアには「ランドクルーザー」のような生活を支えるタフな製品を送り届け、インドではスズキと共同開発したコンパクトなクロスオーバーSUVの「アーバンクルーザー ハイライダー」やHEVのミニバン「イノーバ ハイクロス」を販売し、同市場での好調な販売実績に結びつけている。

リソースが限られている場合は、「選択と集中」に向かわざるを得ない。北米なのか、アジアの特定の国なのか、中国なのか。集中する地域を絞り込む必要が出てくるし、BEVに賭けるしかない状況に追い込まれもする(BEV一辺倒の場合は、経営判断の誤りのような気もするが)。貧すれば鈍するではないが、持てるものがなければ、やりたいことを広くカバーするのは難しいし、攻めの一手を出しづらい。

「全車EV化」への流れが鈍化するなかで、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、燃料電池車もラインナップするトヨタは強みをみせる。写真は、発売以来さまざまなパワートレインが組み合わされてきたレクサスブランドのSUV「UX」。
「全車EV化」への流れが鈍化するなかで、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、燃料電池車もラインナップするトヨタは強みをみせる。写真は、発売以来さまざまなパワートレインが組み合わされてきたレクサスブランドのSUV「UX」。拡大
大きく販売台数を伸ばしたインドでは、スズキと共同開発したSUV「アーバンクルーザー ハイライダー」(写真)が好調。他社との協業も成果につながっている。
大きく販売台数を伸ばしたインドでは、スズキと共同開発したSUV「アーバンクルーザー ハイライダー」(写真)が好調。他社との協業も成果につながっている。拡大

荒波を乗りこなす

持てるトヨタは持っていることにあぐらをかくことなく、各地域の実情に寄り添った商品をタイムリーに送り出すことで、その地域のユーザーから信頼を勝ち取っている。それが、多少の増減こそあれ安定した販売実績につながっているのだろう。直近では、アメリカのトランプ大統領が発表したカナダとメキシコの製品に対して25%の追加関税を賦課する大統領令の影響が気になるところだろう(3月まで一時停止されることにはなったが)。

筆者はアメリカに根づいている(根づこうと長年努力している)トヨタについては心配していないし、そこも含めて「さすがトヨタ」という目で見ている。アメリカ製の車両での参戦が義務づけられるNASCARは、保守層のファンが多いことで知られている。トヨタは2004年から「タンドラ」でトラックシリーズに参戦し、2007年からは最上位シリーズにカムリで参戦している。シボレー(GM)とフォードに交ざり、アメリカのマニュファクチュアラーとして。

2025年2月5日、トヨタは米国企業の一員としてノースカロライナ州に設立したToyota Battery Manufacturing, North Carolina(TBMNC)の生産準備を完了し、同年4月から北米電動車向けに電池の出荷を始めると発表した。TBMNCはアメリカで11番目の生産事業体であり、トヨタがアメリカで初めて生産するHEV、PHEV、BEV向けの電池工場となる。この工場に関する投資額は約140億ドルで、約5000人の雇用を創出することになる。政権が切り替わったばかりのタイミングで、なんともタイムリーな発表だ。

大企業は巨大船に例えられる。大きな船は舵を切ってもなかなか向きを変えられない。トヨタを見ているとどうも、そうは思えない。クルマに例えるなら、GRヤリスのように機敏に動く俊敏さと、ランドクルーザーのようなタフでどっしりとした安定感を兼ね備えているように見える。だから、自動車業界の荒波をものともしないばかりか、どんな波が来ても軽やかな動きで乗ってしまう。トヨタの快進撃はどこまでも続く気がしてならない。

(文=世良耕太/写真=トヨタ自動車/編集=関 顕也)

2025年2月5日には、海外初のトヨタ内製電池製造会社となる「Toyota Battery Manufacturing, North Carolina」の生産準備が完了し、同年4月から北米市場の電動車向けにバッテリーの出荷を開始することが告げられた。これによりトヨタは、引き続きマルチパスウェイ戦略で多様な選択肢を提供していくと意気込む。
 
2025年2月5日には、海外初のトヨタ内製電池製造会社となる「Toyota Battery Manufacturing, North Carolina」の生産準備が完了し、同年4月から北米市場の電動車向けにバッテリーの出荷を開始することが告げられた。これによりトヨタは、引き続きマルチパスウェイ戦略で多様な選択肢を提供していくと意気込む。
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