コンパス座
名称:コンパス座
学名:Circinus
小分類:南半球
日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えません
見ごろの季節:春(20時正中は6月)
コンパス座は、全天88星座中4番目に小さな星座です。円を描くコンパスをかたどった星座で、頂点にある3等星から5度ほどに開いた細長い三角形をしています。ケンタウルス座のアルファ星の先にあるため、小さいながら比較的見つけやすいといえるでしょう。1750年代にラカーユによって作られました。この星座が作られた当時は、船乗りたちが世界を股にかけて渡り、新しい土地を発見する大航海時代でした。それで、海図を調べるコンパス座をはじめ、ぼうえんきょう座やはちぶんぎ座、じょうぎ座など航海に関係する道具をかたどった星座がたくさん作られました。
1.見つけ方のポイント
コンパス座は3等星から5等星が細長い三角形を作る小さな星座ですが、見つけ方は比較的簡単です。ケンタウルス座の前足にあたる明るい1等星アルファ星のすぐ先、みなみのさんかく座との間に挟まれた空間を見ると見つかります。
2.神話の内容について
コンパス座は18世紀のフランスの天文学者N・L・ラカーユ(1713〜62年)が、1750年代に作った星座です。彼の発表した南天星図の中に書かれたもので、航海の測量が使うコンパスをかたどったものです。神話とはまったく関係ありません。ラカーユは、アフリカ大陸の南端、現在の南アフリカ共和国のケープタウンに住み、南天の星の研究を行いました。
3.同じ時期に見える星座について
コンパス座が南中する7月の夕方なら、北にはじょうぎ座やさそり座、すぐ東にはみなみのさんかく座、くじゃく座、さいだん座などが見えるでしょう。また、西にはケンタウルス座が見えます。ケンタウルス座の明るい1等星アルファ星は、コンパス座のすぐ隣ですので、コンパス座を見つける良い目印になります。また、南にはみなみじゅうじ座が見えるでしょう。
4.主要都市での観測について
日本では沖縄などで水平線すれすれに昇ります。宮古島や石垣島など、日本の南端なら、全体を見ることができます。
※参考文献:「星座クラブ」沼澤茂美著(誠文堂新光社)、「星のポケットブック」(誠文堂新光社)、「星座天体観測図鑑」藤井旭著(成美堂出版)、「星座・夜空の四季」小学館の学習百科図鑑、「星座博物館・春」、「同・夏」、「同・秋」、「同・冬」、「同・星座旅行」瀬川昌男著(ぎょうせい)、「星空ガイド」沼澤茂美、脇屋奈々代著(ナツメ社)
コンパス座
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/11 12:14 UTC 版)
Circinus | |
---|---|
![]() | |
属格形 | Circini |
略符 | Cir |
発音 | 英語発音: [ˈsɜrsɨnəs] Círcinus, 属格:/ˈsɜrsɨnaɪ/ |
象徴 | 製図用のコンパス[1] |
概略位置:赤経 | 13h 38m 43.2s - 15h 30m 21.5s[1] |
概略位置:赤緯 | -55.44° - -70.62°[1] |
広さ | 93平方度 (85位) |
主要恒星数 | 3 |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 9 |
系外惑星が確認されている恒星数 | 0 |
3.0等より明るい恒星数 | 0 |
10パーセク以内にある恒星数 | 0 |
最輝星 | α Cir(3.19[2]等) |
最も近い星 | α Cir;(54光年) |
メシエ天体数 | 0 |
隣接する星座 |
ケンタウルス座 はえ座 ふうちょう座 みなみのさんかく座 じょうぎ座 おおかみ座 |
コンパス座(コンパスざ、Circinus)は、現代の88星座の1つ。18世紀半ばに考案された新しい星座である。この星座のモチーフは、製図用具のコンパス(両脚規)であり、方位磁針ではない[1][3]。日本では、星座の全域を見ることができない。全天で4番目に小さな星座で、明るい恒星もない。
主な天体
恒星
2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) が認証した固有名を持つ恒星は1つもない[4]。
- α星:見かけの明るさ3.19等の3等星[2]。コンパス座で最も明るい恒星で、りょうけん座α2型変光星[2]。
- β星:見かけの明るさ4.057等の4等星[5]。2015年に、0.56太陽質量の褐色矮星の伴星を発見したとする研究結果が発表された[6]。
- γ星:見かけの明るさ4.96等のB型主系列星のA星[7]と5.59等でF型主系列星のB星[8]の連星[9]。
星団・星雲・銀河
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由来と歴史
コンパス座は、18世紀中頃にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって考案された。1756年に刊行された『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載されたラカーユの星図の中で、フランス語で「le Compas」という名称が描かれたのが初出である[3][12][13]。のちの1763年にラカーユが刊行した著書『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語化された「Circinus」と呼称が変更されている[3][14]。ラカーユは、みなみのさんかく座を測量機器に見立て、じょうぎ座と共に製図用具が並ぶように星図を描いたとされる[3]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Circinus、略称はCirと正式に定められた[15]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
呼称と方言
日本では当初「両脚規」という訳語が充てられていた。これは、1910年(明治43年)2月に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる[16]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも引き継がれ、「両脚規(りゃうきゃくき)」として掲載された[17]。
これに対して、天文同好会[注 1]の山本一清らは独自の訳名を用いた。天文同好会の編集により1928年(昭和3年)4月に刊行された『天文年鑑』第1号では、Circinus に「コンパス」という訳が充てられ[18]、以降の号でもこの訳名が継続して用いられた[19]。
1944年(昭和19年)に天文学用語が見直された際も引き続き「両脚規」が使われることとなった[20]が、戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会は「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[21]とし、このとき Circinus の日本語の学名は「コンパス」と改められた[22]。これ以降は「コンパス」という学名が継続して用いられている。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d “The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年1月9日閲覧。
- ^ a b c "alf Cir". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年1月9日閲覧。
- ^ a b c d Ridpath, Ian. “Circinus”. Star Tales. 2020年4月19日閲覧。
- ^ “IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2023年1月9日閲覧。
- ^ "bet Cir". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月10日閲覧。
- ^ Smith, L. C.; Lucas, P. W. et al. (2015-10-30). “Discovery of a brown dwarf companion to the A3V star β Circini”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (Oxford University Press (OUP)) 454 (4): 4476-4483. arXiv:1509.09226. Bibcode: 2015MNRAS.454.4476S. doi:10.1093/mnras/stv2290. ISSN 0035-8711.
- ^ "gam Cir A". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月11日閲覧。
- ^ "gam Cir B". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月11日閲覧。
- ^ "gam Cir". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月11日閲覧。
- ^ "Circinus Galaxy". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月11日閲覧。
- ^ “超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く” (プレスリリース), (2018年11月20日) 2023年1月11日閲覧。
- ^ Ridpath, Ian. “Lacaille’s southern planisphere of 1756”. Star Tales. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “Histoire de l'Académie royale des sciences” (フランス語). Gallica. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “Coelum australe stelliferum / N. L. de Lacaille”. e-rara. 2023年1月7日閲覧。
- ^ Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年1月5日閲覧。
- ^ 「星座名」『天文月報』第2巻第11号、1910年2月、 11頁、 ISSN 0374-2466。
- ^ 東京天文台 編 『理科年表 第1冊』丸善、1925年、61-64頁 。
- ^ 天文同好会 編 『天文年鑑』1号、新光社、1928年4月28日、3-6頁。doi:10.11501/1138361 。
- ^ 天文同好会 編 『天文年鑑』10号、恒星社、1937年3月22日、4-9頁。doi:10.11501/1114748 。
- ^ 学術研究会議 編「星座名」 『天文術語集』1944年1月、10頁。doi:10.11501/1124236 。
- ^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2。
- ^ 「星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、 13頁、 ISSN 0374-2466。
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