Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

病名・概念の変遷とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 病名・概念の変遷の意味・解説 

病名・概念の変遷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 14:53 UTC 版)

注意欠陥・多動性障害」の記事における「病名・概念の変遷」の解説

多動落ち着きのない子供古くから知られており、ADHD疾患概念最近になって現れたものではない。後に小児神経医学などの分野注意払われるうになる1775年ドイツ医師、メルヒオール・ヴァイカルドは医学教科書ADHDな行動を記載し現在のADHDの「不注意側面との一致から、おそらく医学文献上のADHD初出とされる1902年小児科医スティルが、王立内科医協会講演で、「道徳的統制欠損」という概念用いながら、攻撃的反抗的になりやすく、注意機能に異常がある43児童症例分析し講義録ランセット誌に掲載される。これらの中には現在のADHD混合型」に合致する例が見られるという。1908年、トレッドゴールドが、早期発生した検出軽度脳損傷「脳微細損傷MBD,minimal brain damage)」という原因仮説発表する加えて北米エコノモ脳炎(1917-18年)の流行があり、その後遺症(脳炎後行障害)との類似性が、なんらかの脳損傷背景に持つ病態という推測生む。 この流れから「脳損傷児(brain-injured child)」(1947年)の概念提唱されたが、50-60年代は、確たる損傷痕跡が見つからないため、ADHDを表す概念として「脳微細損傷MBD,minimal brain damage)」から、やや表現抑えた「脳微細機能障害MBD,minimal brain dysfunction)」が提唱された。70年代には、MBD概念原因となる脳機能障害特定できず、疑問持たれ次第使われなくなる。 行動異常児の脳の形態的異常を見つけようとする中で、1937年チャールズ・ブラッドリー英語版)は薬物療法発見した。彼は腰椎から脳脊髄液抜いて気体入れ脳を撮影する手法(気脳造影)をもちいたが、子供には大変な頭痛残った緩和のため中枢神経刺激薬(アンフェタミン)を試みたところ、頭痛には無効だったが異常行動や学力劇的な改善に驚く。研究進め治療法としての中枢刺激薬発見し性質とは逆に落ち着きが出る子供がいることの理由考察した。また彼ら中枢刺激剤有効な子供群の特徴指摘した。それはほぼ今日ADHD病態であった先駆的な薬物療法研究であったが、精神分析影響広まり心理療法重視されたことなどから、顧みられなかった。ようやく1950年代になって障害生物学的な特定はまだ出来なかったが、発症メカニズム理解創薬のために応用されはじめる。これとは別に1954年にアンフェタミンに似た中枢刺激剤メチルフェニデートリタリン)が発売され当初はうつやナルコレプシー症状用いられたが、最も驚異的な効果示したのはADHD症状あり、か副作用はより少なかったため使われるようになった現在のADHD治療は主にこのような流れをもつ中枢神経刺激薬による薬物療法に依っており、メチルフェニデートは最も頻繁に処方されている。 脳損傷原因とするMBD流れとは別に、50-60年代原因問わず主症状がある障害捉えて多動児、過活動児」、「多動衝動性障害」という概念提案された(操作的診断先駆け)。DSM-II1968年)で、診断概念として「多動性」が初め現れ子供過活動反応」が記載される。この延長上でWHOもICD-91977年)で「多動症候群過活動症候群)」が記載された。 1971年、ウェンダーは、MBD症状に「短く乏し注意集中」という、後に「注意欠如」と呼ばれる障害特徴見出したDSM-III1980年)は、ウェンダーらの成果取り入れ、「注意欠陥障害多動有り・無しの)」(Attention Deficit Disorder with and without Hyperactivity)と記載し、あくまで不注意中心症状見ていた。 DSM-III-R1987年)では「多動を伴う」障害限定し注意欠陥多動性障害」に変更しやや重点を「多動」に戻す。 DSM-IV1994年)は、不注意衝動性多動性が必ずしも揃わない障害を再び認めて下位分類優勢混合診断するように変更した成人や特に不注意面が見過ごされがちな女児などの障害理解反映し、再び「多動偏重抑えた成人女性ADHD扱った洋書翻訳で、端的な病態邦題使った片づけられない女たち』(2003年)が発売されると、これを契機成人ADHDを疑う本人専門医療機関押し寄せ日本における第1次大人のADHDブームのような状況おこった。この邦題は強い印象与え片付けられるならADHDではない、ゴミ屋敷ADHDなどの誤解続いている。 日本発達障害者支援法2005年)で、発達障害とは「自閉症アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害学習障害注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状通常年齢において発現するものとして政令定めるもの」と定義しADHD代表的な発達障害のひとつに挙げた世界では、この時期発達障害」についての正式な医学的な定義定まっておらず、ADHDは、行動衝動性の(DSM)あるいは情緒行動の(ICD)の障害とされていた。一方日本では、特に福祉領域ではDSM-5分類先取りするように、ADHD発達障害として認知されており、法律にも反映された。 DSM-52013年)では用語や診断基準骨格DSM-IVをほぼ踏襲している。近年脳機能研究知見踏まえDSM-III以来一貫しつづけた反抗挑戦障害素行障害グループという分類から、初め神経発達障害グループ位置づけられた。 2013年ごろより来院者が増え日本では第2次大人のADHDブーム状況となった以前違いは、コミュニケーション不調の面から、集団の中であぶりだされ診察求める人や企業不調に気が付き受診勧められる人が多いことである。

※この「病名・概念の変遷」の解説は、「注意欠陥・多動性障害」の解説の一部です。
「病名・概念の変遷」を含む「注意欠陥・多動性障害」の記事については、「注意欠陥・多動性障害」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「病名・概念の変遷」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「病名・概念の変遷」の関連用語

病名・概念の変遷のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



病名・概念の変遷のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの注意欠陥・多動性障害 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS