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背乗りとは? わかりやすく解説

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背乗り

読み方:はいのり

工作員スパイ他国住民戸籍身分乗っ取って他国民になりすます手口

背乗りの手口としては、貧しい者から戸籍を買うといった方法もあるとされるが、災害乗じて本人名乗ったり、あるいは、本人拉致してすり替わったりといったやり口があるとされる個人レベルでは不動産などの権利略取国家レベルでは諜報活動などの目的で背乗りが行われるという。

背乗り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/18 00:59 UTC 版)

背乗り(はいのり、這い乗り)とは、工作員や犯罪者などが正体を隠すために実在する他人の身分戸籍を乗っ取って、その人物に偽装する行為を指す警察用語[1]

英語圏の機関の間でidentity theftまたはghosting, identity fraudと呼ばれる。

日本で北朝鮮工作機関が「背乗り」を行う場合、対象者の選定は、在日朝鮮人の補助工作員が北朝鮮本国からの指示を受けて行うことが多かったと指摘されている[2]

概要

なりすまし」は警察用語で「背乗り」「這い乗り」ともいい、工作員などが実在する人物の身分を盗用することを指す[1]。背乗りには、既に死亡または失踪している人間の戸籍を不正に取得する場合と、なりすまし対象の人間を拉致したり、殺害した上で身分証明書などを奪ってなりすます場合がある。

たとえば辛光洙事件では、北朝鮮工作員辛光洙が、1980年宮崎県で拉致した原敕晁名義の旅券で海外を旅行し、大韓民国でも工作活動を展開していた[1]1977年宇出津事件でも、拉致犯は年齢を指定して拉致対象者を選んでおり、被害者久米裕は拉致に先立って戸籍謄本がだまし取られているので、背乗り目的の拉致であるとみてよい[1][注釈 1]

ただし、1987年大韓航空機爆破事件の実行犯、金勝一は「蜂谷眞一」名義の日本国旅券を所有していたが、実際の蜂谷眞一は当時日本国内で健在だった人物であり、彼は北朝鮮工作員の宮本明こと李京雨に旅券を貸し与えており、拉致・殺害されないまま、また、死亡も失踪もしていない状態で身分が盗用されたのであった[1][注釈 2]

背乗りは、元々は旧ソビエト連邦の情報機関が古くから用いた方法だといわれており、北朝鮮にはソ連の影響下にあった冷戦時代にもたらされたともいわれている[注釈 3]日本人拉致事件に背乗りを目的としたものが多いのは、日本で工作活動を行うほか、大韓民国など第三国に入国するための日本国旅券を得る目的もある[1][注釈 4]。上述の辛光洙事件1985年発覚の西新井事件は、そうした事例に属する。

背乗り目的の拉致の場合、工作員と年恰好が同じで、旅券を今まで取ったことのない人物、身寄りの少ない人物などの条件にもとづいて対象者があらかじめ選んでおき、戸籍謄本などを入手したうえで拉致犯罪におよんでいる[1]。身寄りのない人が狙われるのは、周囲に気付かれにくく、失踪しても騒がれる心配がないためである[1][5]。拉致被害者は比較的年配の人が選ばれたが、宇出津事件、辛光洙事件、西新井事件のいずれでも、拉致犯罪にかかわった工作員が日本統治時代を経験しており、とりわけ辛光洙や「朴」(チェ・スンチョル)は戦前に日本本土で生活していたこともあって、法的身分さえ得られれば日本人になり切ることは容易だったと考えられる[1][注釈 5]

2016年(平成28年)10月、21年間にわたって不法滞在を行っていた中華人民共和国国籍を持つ男が京都府警察により日本で逮捕された[6]。この中国人男性は、1991年6月6日に就学査証で日本に合法的に入国し、在留期限が1996年5月31日までであったにもかかわらず、日本人になりすましていたもので、検挙理由は入管難民法(出入国管理及び難民認定法)違反であった[6]。この件では、日本の年金手帳が定期的な更新の必要がないことが悪用されていた[7]。男は、実在する日本人の年金手帳を身分証明書として背乗りすることで、本来の持ち主の日本人の名前と身分で生活していたのである[6][7]

事件例

対策

世界各国では国民識別番号が導入されており、日本でも個人番号マイナンバーカードの普及が推進されている。

背乗りを取り扱った作品

小説
漫画
  • 釋英勝『ハッピーピープル I LOVE JAPAN』 - 主人公の山田久と実家にいる家族らが、日本を敵視する“集英国人”に背乗りされる。
  • 安彦良和機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(2001年) - 『機動戦士ガンダム』では、主人公のライバルであるシャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)は素性を隠すために偽名で軍に入隊していたが、リメイク版の『ジ・オリジン』で、その手法が背乗りであったことが描かれている。

脚注

注釈

  1. ^ また、日雇い労働者の多い東京都山谷地区でも拉致未遂事件が発生していたことが報告されている[1]
  2. ^ 独居生活をしていた蜂谷眞一は李京雨に外国旅行に誘われて合法的に旅券を取り、その旅券を李に渡した[1]。彼は1998年養老院で死去している[1]
  3. ^ ただし、人気スパイドラマ名もなき英雄英語版』のモデルといわれ、2000年拷問死した女性工作員の李善実は、戦前日本で生活していた申順女という女性になりすまして韓国国内で工作活動に従事していた[3]。その手口は辛光洙事件において辛光洙がとった手口に似ていると指摘されている[3]
  4. ^ 北朝鮮は1970年代中葉の一時期に偽造日本国旅券を多量に発行して工作活動を行っていたが、当時の中国の公安当局は、日本旅券を所持する朝鮮語話者が少なからず北京経由で出国し、その後、北京を経由して北朝鮮入りするという現象に不審をいだき、北朝鮮当局に警告して工作員を逮捕したため、偽造旅券は使えなくなった[4]。そこで、本物の日本国旅券が必要となったという事情があったという[4]。いずれにせよ、日本の旅券が北朝鮮の工作活動にとって最も安全であるため、日本人拉致工作がなされたのである[4]
  5. ^ また、第二次世界大戦直後の日本では、相当数の戦没者・戦争犠牲者の遺体が特定不能とされたことから、この時期の背乗りも容易だったとみられる。

出典

参考文献

関連項目


背乗り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 09:05 UTC 版)

「小住健蔵」記事における「背乗り」の解説

1985年昭和60年3月発覚した西新井事件主犯北朝鮮工作員チェ・スンチョル通称、「」)は、1980年昭和55年4月小住健蔵戸籍函館市から東京都足立区移した後、小住名義旅券運転免許証不正に取得して「小住健蔵」その人として行動したこの際戸籍移動不審思った小住の姉と妹電話番号調べ小住健蔵電話をかけたが、チェ同居人として電話出て「彼はいま麻雀行っている」などと応対し数回わたって誤魔化し続けたチェ1980年6月16日小住健蔵名義パスポート取得し、それを用いて東南アジアヨーロッパ具体的にイギリス領香港マレーシアタイ王国西ドイツ大韓民国などを計6回訪れたチェ偽名用いて足立区西新井に居を定め日本人女性騙して内縁関係持ち1972年には福島県出身小熊和也戸籍奪って小熊なりすまし小熊名義旅券海外渡航する一方足がつくことを恐れ在日朝鮮人金錫斗(江口智)に小熊拉致命じていた。小熊1976年死去したため、次に狙い定めた相手小住健蔵であったチェ・スンチョルその後もしばらくスパイ活動をしていたが、1983年昭和58年2月4日日本からマレーシア出国したとみられる1985年昭和60年3月1日警視庁公安部外事第二課在日朝鮮人金錫斗(当時49歳)を逮捕したことで事件発覚したチェ・スンチョルに対して旅券法違反などの容疑国際手配されているが、まだ逮捕されておらず、その行方不明である。なお、チェ・スンチョル1978年7月31日新潟県柏崎市蓮池薫当時20歳)・奥土祐木子当時22歳)のカップル拉致し、工作船乗せて北朝鮮に連れ去り2人の自由を奪うという犯罪犯している。 西新井事件発覚チェ・スンチョル指名手配後、警察1985年に「見破られ北朝鮮工作員日本人なりすました大物スパイ」というパンフレット出している。そこには比較具体的なことが記述されており、小住健蔵名義運転免許証パスポート写真付き掲載されている。 小住健蔵本人については、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会通称救う会」)や西岡力は、チェ・スンチョル自身拉致実行犯であり、土台人金錫に対して北朝鮮にいる家族持ち出して脅迫したうえで工作員教育を受けさせ、小熊和也拉致命令をいったん下していた事実もあることから、北朝鮮拉致され可能性が高いとみている。その時期は、1980年6月から数か月前、すなわち1979年から1980年にかけての時期とみている。外事警察また、同じころ北朝鮮拉致され可能性が高いとしている。ほぼ同じ時期起こった原敕晁拉致事件辛光洙事件)では、拉致被害者原敕晁北朝鮮が、拉致被害者田口八重子の「結婚相手」だったが1986年に「夫婦相次いで死亡した説明している人物)もまた家族連絡絶たれており、なりすまし対象として拉致されたと考えられる点でも状況似ている辛光洙場合は、金正日が辛に対して直接、「日本人拉致して北に連行し日本人として完全に変身した後、対韓国工作活動続けよ」との指示下している。なお、チェ・スンチョル部屋保証人になった在日韓国人李京日本名宮本明)は、大韓航空機爆破事件実行犯ひとりでバーレーン国際空港事情聴取中に服毒自殺した金勝一日本人名義の不正旅券知人とらせた人物であり、田口八重子勤めていた店に客として通い、彼女の拉致かかわっていた可能性のある人物である。 2002年平成14年10月クアラルンプールでの日朝交渉では、小住は田中実松本京子とともに日本側が北朝鮮側に安否確認をおこなっている。北朝鮮側は、入国確認できなかったと説明している。2005年平成17年7月24日、「小住健蔵さんの拉致認定未帰還者救出のための経済制裁求め函館集会」が北海道函館市開催された。

※この「背乗り」の解説は、「小住健蔵」の解説の一部です。
「背乗り」を含む「小住健蔵」の記事については、「小住健蔵」の概要を参照ください。

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