【航空戦艦】(こうくうせんかん)
戦艦の砲撃能力と航空母艦の航空戦能力を併せ持つ事を目的として設計された艦種。
戦艦が砲撃を行う前段階で艦載機が偵察およびファイタースウィープを行うもので、現存する艦種と比較するとイージス艦が最も近い。
古代から現代にいたるまで、この艦を実現したのは旧日本海軍の「伊勢」と「日向」の二隻だけであり、5、6番砲塔を取り払って格納庫と飛行甲板を作るという方式で造られた。
もっとも、当初からそうすることを意図していたわけではなく、本来は全通甲板を張って純然たる空母にする予定だったが、時間と資材がかかるという理由でこの艦種への改装となった。
結果、艦体の半分の長さでしかない飛行甲板では、着艦はおろか新型機の発艦さえ不可能だったので(彗星二二型等はカタパルトで発艦可能)、爆撃可能な水上偵察機「瑞雲」をカタパルトで発艦させ、任務終了後、着水した機体をクレーンで引き揚げる方式となった。
しかし完成時には艦載機の調達もままならず、最終的に両艦は航空戦艦として活躍しないままに呉の海へと沈んだ。
楽観的に見れば当時の技術力における「理想の艦種」だが、そこまで楽観的に考えている軍事史家は多くない。
一般に、このような「マルチロール化」の目的は性能の向上ではなく、製造や整備や作戦準備を容易にする事である。
そして、当時もっとも高価で希少で、かつ用途も限定された兵器であった戦艦と航空母艦をマルチロール化する事にどのような戦略的利点があったかは、確かめる機会もないまま戦艦の時代が終わった今となっては定かでない。
ただし、艦隊戦ではなく海上偵察・対潜水艦戦を念頭に置いた航空巡洋艦やヘリコプター運用能力を付与した駆逐艦・フリゲートなどは、実際に多数が建造され就役しているので、航空戦艦も(もし早期に就役して実戦参加できたなら)一定の評価を得ていた可能性はある。
航空戦艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 08:42 UTC 版)
航空戦艦(こうくうせんかん、en:Battlecarrier)とは、戦艦としての大口径砲を装備し、かつ航空母艦又は水上機母艦に準じた航空機運用能力を有する軍艦の通称である。
注釈
- ^ (中略)[1] CARRIERS(瑞鶴、瑞鳳、千歳略)**伊勢……1917 29.990 23Knots(converted battleship)**The Chitose and Zuiho were new light carriers, probably of 10,000tons, 30plus knots speed and 30 to 35 plane capacity.(記事おわり)
- ^ 航空巡洋艦について[2] こゝに面白いのは航空巡洋艦の設計のことである。これは古くからアメリカにその思想の發端を見てゐるのであるが、まだ現實の問題としては現はれてゐない。
瑞典 に一寸この思想をとり入れた艦が出來たかに聞いてゐるが、こゝに描いたのもその一例である。/飛行機はカタパルトによつて射出され、歸艦する時ばかり飛行甲板を用ふるもので、巡洋艦としては八吋砲六門を前部甲板に集め、二目標式一二.七糎高角砲十二門(二聯装六砲塔)を飛行甲板の兩側に持ち、航空母艦としては飛行機四十機程度を載せやうといふのである。一寸風變りな設計なのでこゝに引例した。小型航空母艦としては實現可能なものではあるまいか。 - ^ ○[飛行科関係](中略)三.格納庫ノ利用價値[4] 1YB偵察隊ハ対空戰斗ノタメ基地発進ニテ艦隊戰斗ニ協力スル如ク計画セラレタルモ通信不如意ノタメ戰機ニ投ジ得タル偵察殆ンド無キ状況ナリ対空戰斗ノ関係上大部ハ基地派遣ノ要アルモ通時(飛行機)偵察ヲ実施セル爲手持チノ偵察機保有シアルハ極メテ肝要ニシテ大和格納庫ハ其ノ点利用價値極メテ大ナリ/即チ大和搭載機ヲ瑞雲又ハ彗星最小六機搭載ノ事ニ改メ手持ノ偵察兵力トナスヲ要スルモノト認ム(註大和格納庫(出入口ヲモ含ム)ハ零式観測機ハ八機 瑞雲彗星ハ六機格納可能 零式水偵ハ格納出來ズ(終)
- ^ なお、大和型戦艦は実戦では4機もしくは5機を搭載したのが最大である。
- ^ 基準排水量11,733トンの空母龍驤の搭載機数が常用36機+補用12機の48機であり、基準排水量10,050トンでその倍の100機を搭載し、更に20.3cm連装砲+三連装砲を搭載することなどは不可能である。
- ^ この8インチ連装砲塔は太平洋戦争開戦後に5インチ(12.7cm)両用砲に換装する改装が行われているが、レキシントン級のうち「レキシントン (CV-2)」は8インチ砲塔を撤去したものの5インチ両用砲塔への換装が間に合わないまま珊瑚海海戦で戦没し、砲塔の位置には28mm対空機銃(1.1"/75 caliber gun)が搭載されていた。
- ^ ただしアドミラル・クズネツォフ級空母の運用機数が少ないのは、ロシア海軍の予算等の制約による現状での運用状況によるものであり、実際の運用可能数はもっと多い。
出典
- ^ “Here Are Enemy Warships Mentioned in Communique”. Hoji Shinbun Digital Collection. Hawaii Times, 1944.10.31. pp. 02. 2024年4月7日閲覧。
- ^ 国防科学図解兵器 1943, p. 66原本112-113頁(航空巡洋艦について)
- ^ #捷号、大和戦闘詳報(5) pp.48-49(大和格納庫平面図)
- ^ a b #捷号、大和戦闘詳報(4) pp.49-50(格納庫利用価値)
- ^ “Hyuga、Enemy Battleship、Is Found Sunk 5 Other Ships Afire, Sinking After Kure Is Struck Again ”. Hoji Shinbun Digital Collection. Hawaii Times, 1945.07.28. pp. 01. 2024年4月7日閲覧。
- ^ 篠原幸好 / 今井邦孝 (1998年), 未完成艦名鑑, 光栄 p.79-80
- ^ a b 篠原幸好 (1994年), 連合艦隊艦船ガイド, 新紀元社
- ^ 片桐大自 (1993年), 聯合艦隊軍艦銘銘伝, 光人社
- ^ German Naval History>German Kriegsmarine>Z-Plan>Flugdeckkreuzer
- ^ グローバルセキュリティー (2013年2月26日). “Vittorio Veneto CGH Guided Missile Helicopter Cruiser” (英語). 2018年6月10日閲覧。
- ^ 「アメリカ駆逐艦史」『世界の艦船』第496号、海人社、1995年5月、13-135頁。
航空戦艦(aircraft carrier battleship / battlecarrier)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 06:35 UTC 版)
「戦艦」の記事における「航空戦艦(aircraft carrier battleship / battlecarrier)」の解説
戦艦としての大口径砲を装備し、かつ航空母艦または水上機母艦に準ずる航空機運用能力を持っている軍艦のこと。航空母艦の黎明期においては、まだ航空母艦それ自体のコンセプトが固まっていなかったことと、当時はまだ航空機の航続力が小さく航空母艦も砲戦の機会があると考えられたため、一定の水上戦闘能力が必要と考えられ考案された艦である。
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