
最近人気のアルコールストーブと風防&ゴトク8モデルを、実際に点火してみた!全モデル動画解説付き!!
燃料の入手のしやすさで世界の僻地を旅するバックパッカーが愛用し、ウルトラライトハイカーがその軽さに目を付け、MYOG(自作)好きに愛され、現在、スローハイカーが注目しているもの。それは、アルコールストーブ。少し手間の掛かる、面倒くささが魅力のシンプルなストーブと風防のおすすめ8モデルを、実際に使って検証してみました!
2023/04/14 更新
本ページはアフィリエイトプログラムを利用しています。
目次
知ってるつもりになっていない!?アルコールストーブって、一体なに?
デイハイク、そして山小屋泊、テント泊で、湯沸かしや調理に使用する「ストーブ」。近年では、簡単着火、安全に使用でき、高火力で素早く湯を沸かせるガスを燃料とする「ガスストーブ」が主流です。
ストーブには、他にもガソリンや灯油を燃料にする「ガソリンストーブ」「マルチフューエルストーブ」や、エスビットに代表される「固形燃料ストーブ」等があります。
その中で、今回紹介する「アルコールストーブ」は、無水エタノールや燃料用アルコールを燃料とするストーブ。
無水エタノールは消毒薬としても使用されるアルコールなので、薬局でも入手できます。世界の辺境地を旅するバックパッカーが、ガス缶よりも燃料を入手しやすいからと、古くから愛用してきました。
ULハイカーが注目し、最近はスローハイカーに人気
他にも、燃料を注入するタンクとストーブ本体が一体となり、ほぼ故障知らずのシンプルな構造も特長です。
軽さを求めるウルトラライト=ULハイカーが、”長期間のハイクになるほど、ガスストーブよりも軽量化できること”に注目。
同時に、アウトドア道具の自作好き=MYOGが流行り、多くの人がアルコールストーブ自作に挑戦しました。
近年ではチタン製のモデルやアルミ製の飲料缶をベースに自作したり、ガレージブランドがさまざまな工夫を凝らしたアルコールストーブを製作、販売しています。
一方で、長くアウトドアを楽しんできた人にとっては、アルコールストーブはどちらかというと古典的なアウトドア道具。
しかし、昨今のコロナ禍のアウトドアブームによって、スローなキャンプ・登山を楽しみたい人達には、「これまであまり見かけたことのない新しい道具」として人気を集めているようです。
人気の理由は、なんと「面倒くささ」
人気を集めている理由は、ガスストーブと比べると「面倒」なこと。その主な面倒なこととは、次の5つです。
手間の掛かることを、面倒と思い、便利を求めるか。
面倒のなかに、手間をかけて「育てる」楽しさを見つけるか。
キャンプ・焚火・登山はそもそも面倒なアクティビティーですから、「育てる」楽しさを面白がる人が多いのだと思います。
例えば、最近人気のアルミ製飯ごうの「メスティン」。焦げ付き防止加工がされていなく、シーズニングと呼ぶ「油ならし」が必要。さらにメスティンによっては、フチが切りっぱなしのためバリ取りをして、ケガの予防する等、面倒なアウトドア道具ですよね。
アルコールストーブを使うために用意しておくモノ
燃料は、無水エタノールや燃料用アルコールです。販売されていたボトルのまま使うのもありですが、上の写真にあるような携帯用ボトルに移し替えたほうが、注入しやすい・必要分だけを小分けして持ち運べる、といった利点があります。
着火には、ライターやマッチを
ガスストーブと違い、自動点火装置のないアルコールストーブは、着火にマッチやライターの用意が必須です。
その中でも、時に風が強く吹く山では、アウトドア用の耐風バーナーがあると便利。
写真右のソト/スライドガストーチ(ST-480C)なら、火傷の心配がなく、安心です。また極細集中炎は、風に強いのが特長。
しかし2500m以上の高所では、トーチが点火しない事例もあるので、マッチやフリント式のライターを予備で用意しておくとよいです。
アルコールストーブの使い方
ではアルコールストーブの使い方を紹介します。今回は、アルコールストーブの定番、トランギア社のミニトランギアを主に使ってみます。
まずアルコールを注入。
この時、くれぐれもタンクの外側にアルコールをこぼしたり、指につかないように注意!
もし燃料をこぼしてしまったら、しっかりと濡れたタオル等で拭き取ることが肝心です。拭き取りが甘いと、上の写真のようにアルコールストーブの外側に引火してしまいます。さらに指にアルコールがついたままだと、着火時に指が燃えるので注意!
テント前室での使用はやめたほうがよい!
また、山では、落ち葉のつもった場所に直置きしての使用は絶対禁止!
アルコールストーブの炎は案外大きく立ち上がり、火力調節も難しいので、テント前室での使用もやめておきましょう。
通常使用の際でも、万が一に備え、風防で囲い、バーナー用断熱シートや金属製のソロテーブル上での使用がマストです。
着火はタンク上部から。ストーブによってはヨコから火を点けることが可能
火が点かない・・・と覗き込むのは厳禁!
「あれ、なかなか点かないなぁ~」と思っても、顔を近づけて覗き込むことは厳禁です。
最悪、前髪やまつげを燃やしてしまうこともあります。
火が点いているかどうかわからない場合は、タンクの上部に手をかざして確認してください。点火していれば、火が見えなくても手の平に温かい空気が当たるのがわかります。
火が点いたら、クッカーをゴトクに載せ、沸騰を気長に待つ!
点火したら、だいたい30秒くらいでアルコールストーブ本体が温まり、燃料用アルコールの気化が促進。火口から炎が出てきます。
点火してすぐにクッカーをゴトクにのせると酸欠で火が消えてしまうことがあるので、私はアルコールストーブ本体の火口から火が出る本燃焼が始まってから、クッカーを載せるようにしています。
今回行なった200mlの湯沸かしテストでは、沸騰までの時間は風がない時は約4分、強風下では約8分掛かりました。
アルコールストーブは風や気温の影響を受けやすいので、効率よく湯沸かしするには、風防で囲んだり風の影響を受けない場所で煮炊きしたり等、工夫が必要です。
消火は専用のフタか、クッカーを被せて。
基本的には消火後、タンク残った燃料用アルコールを入れたまま持ち運ぶことはできません。中蓋の備わっているトランギアとエスビットは、液漏れしにくく、持ち運んでいる人もいるようですが・・・。
さらに残ったアルコールを小分けボトル等に戻そうとすると、本体火口等からアルコールがこぼれてうまくできません。スポイト等で吸い上げるという方法もありますが、最終的には白湯を少量つくりながら、燃やし切るのが燃料をムダにしないベターな方法だと思います。
その燃やし切るという点で、「何mlの燃料でどれだけの湯を沸かせるか」を、風の強弱・気温等を含めて経験によって判断することが求められるのが、アルコールストーブで湯沸かし・調理をする奥深さでもあります。
お待たせしました!いよいよ点火・検証です!!
では、今回集めたアルコールストーブ、風防&ゴトクの8モデル、それぞれがどのように燃焼、湯沸かしができるかの検証です。
全8モデルは以下の通りです。
【アルコールストーブ】
燃焼シーンは動画でも解説しています。
約200mlの水を湯沸かしするテストを含め、点火から消火までの一連をまとめていますので、是非ご覧ください!
①まずは、定番のトランギア/ミニトランギアから!!
アルコールストーブといえば、この北欧スウェーデンのトランギア。
アルコールバーナー本体と専用ゴトク(TR-281)、0.8ℓのソースパン、ミニフライパン、ミニハンドルがセットになったクッカーセットです。コンパクトなセットですが、ソロでの湯沸かし、慣れれば簡単な調理も十分に行えます。
アルコールストーブで調理も行えるクッカーセットというと、同社のストームクッカーの愛用者も多いですが、重量は軽量なウルトラライトでも740g。価格は1万円オーバー。
今回使用したミニトランギアでもできることは多くあり、重量も価格も半分以下。アルコールストーブ初心者は、このミニトランギアからはじめることをオススメします。
では、気になる燃焼シーンを動画で!
検証時には強めの風が吹いていたので、その影響をかなり受けてしまいました。
実際に山で使用する際には、風防で本体を囲めば、より効率的に湯沸かしができるでしょう。
また動画では使用していませんが、消火用のフタは火力調節用に使え、これからの季節は、弱火で長時間燃焼させ、鍋等を楽しむ際に有効です。
トランギア ミニトランギア
②スローの真髄、エスビット/985ml クックセット アルコールバーナー付
エスビットといえば固形燃料を使ったポケットストーブが有名ですが、アルコールストーブも評判です。
これは985mlと470mlのポット、ウインドシールド、真鍮製アルコールバーナー、エスビット固形燃料タブレットトレイのセット。それでいて430gに抑えられた重量は、ソロハイクでも十分に携帯に値するものです。
写真中央奥のストーブ本体は丈夫な真鍮製。右の液漏れを防ぐパッキン付きの中ブタも装備。左の消火&火力調節用のフタは、ハンドル付きで消火や火力調節時に、火傷を防いでくれます。
またフタ部分の刻印がアウトドアらしさを感じさせます。
このセットひとつで調理もできる、燃焼シーンを動画で!
正直に感想を言えば、強い風が吹いているとはいえ約200mlの水の沸騰に5分40秒も掛かるのは、火力が弱い・・・です。でも、なんだか許せてしまうところがあるのも、このアルコールストーブの利点。
焚火的というか、クッカーを燃やす炎を見ていると、なんだかノンビリとした気分になれるんです。スローな山時間を楽しむなら、むしろこの火力弱めのアルコールストーブが、いいのかもしれません。
エスビット クックセット アルコールバーナー付 985ml
③軽さと高火力が魅力のエバニュー/チタンポット500ストーブセットRED
セットすべてがチタン製で、総重量175gという超軽量さが一番の長所。
内容は写真上段左からチタンマグポット500 RED、風防&ゴトク、スタンド、下段左からチタンアルコールストーブ、パワープレート。
このパワープレートは、寒さで火力が上がらない時にアルコールストーブの上に載せて火力を上げるもの。他、アルコールストーブを使用せず、固形燃料や細枝を燃やしてミニ焚火台とする際に、スタンド下部に受け皿としてセットします。
私はアルコールストーブ使用時にこのパワープレートを用いることは、ありません。
アルコールストーブ本体は、他社のものと違う点があります。火口が本体上部のタンク周囲だけでなく、2段目にも備わっていて、この構造が高い火力を生み出しているようです。カタログ値ですと、30mlのアルコールで約5分間燃焼、400mlの湯をわかせます。
しかしそれは条件のよい場合の話。今回検証時に強い風の中では、200mlでも8分掛かりました。が、ほとんど風がなければ2分程という結果も出たので、他のアルコールストーブと比べて高火力であることは、間違いありません。
では、実際にどのように燃焼するかは動画で!
動画内でも説明しましたが、着火は上部スタンドの風防&ゴトクをセットしてからでもOK。その際は、上部スタンドの上からスライドガストーチ等で着火してもよいですが、メーカーは安全のためスタンドのヨコに開けられた着火用の小口から行なうことを推奨しています。
検証時は強風で条件が悪かったこともありますが、無風時でも上部スタンドの上に開けられたいくつもの穴から炎が出て、クッカーの底部に強力な炎をすべて当てられていないため、少し効率が悪いです。もしかすると、セットのチタンマグポット500 REDよりも、底部の直径が広い浅型クッカーを使用した方が、このスタンドのよさを引き出せるかもしれません。
エバニュー チタンマグポット500 ストーブセット
エバニュー チタンマグポット500 ストーブセット
④UL道具の真髄、T’s Stove/ NEW WW サイドB combo
T’s Stoveは、ULハイカーを中心に超軽量コンパクトなアウトドア道具好きが愛用する、アルミ製飲料缶を再利用したアルコールストーブのガレージブランド。
しかしその細やかなつくりは、とても空き缶再利用品とは思えない美しさです。
軽さもさることながら、アルミ製アルコールストーブ本体、ウェルデッドワイヤーというゴトク、風防、燃料用ボトル、ピン留めがセットになり、超コンパクトに収納できることに驚くでしょう。
ストーブ本体の直径が4.5センチと細いのですが、平坦なテーブル等の上に置いて使用すれば、グラつきはありません。
また炎は案外広がりが大きく、コンパクトなケトルや浅型クッカーの方が燃焼効率はよさそうです。
どのように燃えるのか、早速動画で確認!
ご覧の通り、検証時は強い風のためケトルやクッカーの大きさに合わせられる付属の風防が、大変役立ちました。それでも炎は暴れていましたが、湯沸かし時間の速さから、その効果は大きいことがわかります。
小さいながらも高火力・高効率なセットで、価格は3,300円とはコスパが素晴らしい!
道具の軽量コンパクト化を考えているなら、まずはこのアルコールストーブセットを試してみることを、強くオススメします。
T’s Stove/ NEW WW サイドB comboの詳細はこちら
⑤車で踏んでも壊れない!?バーゴ/チタニウム デカゴンストーブ
世界のアウトドア文化を牽引するアメリカで、チタン製品を主にウルトラライトとヘビーデューティなアイテムを多く生みだし、アウトドアギア・ファンを楽しませているバーゴ社。
このチタニウム デカゴンストーブは、チタン製で重量34gながら、踏んでも壊れない驚異の強度を求めて製作されたアルコールストーブだそう。バーゴ社内のテストでは、なんと車で踏んでも壊れなかったとか!
さらにこのストーブは、本体の上に直接クッカーを載せて使用するタイプなので、組み立て等の手間が不要です。
今回はUL的な深型チタンクッカーで湯沸かしをしましたが、火口からの炎が外側に広がるように設計されているので、本体は浅型クッカー等、底部の直径が広いクッカーの方が相性がよいストーブです。
その燃焼シーンを動画で見てみましょう!
風強めのなかで、風防もなく、風の影響は直接的。燃焼効率が悪そうに思えますが、水200mlの沸騰時間は3分50秒。同条件での他ストーブと比べても、少し速く沸きました。とはいえカタログ値では水400mlが5~6分で沸騰とあるので、火力は平均的。
風防で囲い、浅型クッカーに使えば、炎をクッカー底部に当てられ、上手く活用できそうです。
バーゴ チタニウム デカゴンストーブ
さて、ココからは風防&ゴトクを、上記で紹介したアルコールストーブ本体と組み合わせて検証した3モデルの紹介です。
⑥カップにも収納できる軽量ゴトク、エバニュー/チタンゴトクTriveTi
エバニューのチタンアルコールストーブに、このゴトクを十字に組んでセット。既存の同様の構造のゴトクよりも高さがあるため、クッカーの底部によく炎が当たり、燃焼効率がよいのが特長です。
またトランギアやエスビットのアルコールストーブ本体にも使用可能。+13gで最低限の煮炊きができます。
エバニューのチタンアルコールストーブにセットすると、こんな感じです。
では、実際に使用した動画を!
弱い風が吹いていて炎は揺れていましたが、水200mlが約1分30秒と、圧倒的な速さで沸騰しました。結果だけを見ると、チタンポット500ストーブセットREDのアルコールストーブ用スタンドDXよりも、高効率といえます。
たまたま、この検証時だけ風が弱かったのかもしれませんが、やはりクッカーの底部に炎がよく当たると、ムダが少ないのでしょう。風が強い時には風防で囲めばよいので、このゴトクは、かなり使える逸品です!
エバニュー チタンゴトクTriveTi
⑦見た目がクールな、ベルモント/チタントライアングルストーブ
丸いアルコールストーブ本体を三角形の板で囲み、その板にはなにやら機能を感じさせる形状違いの穴が多数開けられていて、ギアっぽさがたまらない風防&ゴトクです。
トランギアやエスビットの本体のように縁のあるストーブはスリットにセットして固定、他のストーブはトライアングルにセットしてから、囲んで使用します。
収納は添付の収納袋に入れます。丸いプレートは固形燃料を使用する際のモノ。アルコールストーブ以外でも使えるのは、もしもの時に安心です。
チタン製なので使用する程に色味が渋くなっていく楽しみもありそうです。
燃焼シーンを見てみましょう!
もう少し風防としての効果を期待しましたが、水200mlの沸騰時間は3分45秒でした。悪くない、でも飛び抜けていい訳でもありませんでした。
ただしゴトクとしての安定感はピカイチ。浅型クッカー、大きめクッカーを使う場合は、選択肢に入れたくなります。ちなみに、シエラカップも安定して載せられるので、小型&深型クッカーでも機能します。
ベルモント チタントライアングルストーブ
⑧ペラペラのシート状に驚く、ミュニーク/X-MESH STOVE (large)
今回使用したラージサイズは写真下のもの。厚さはわずか0.17㎜!光を通すマイクロメッシュ加工が施されたステンレスシート製です。
シートの左右にはスルットとツメがあり、円筒状にして使用します。
今回の検証では、T’s StoveのNEW WW サイドBのアルコールストーブを囲みましたが、このラージサイズならトランギアやエスビット、エバニューのアルコールストーブ本体も囲めます。
へぇ~と感心する燃焼シーンを動画でどうぞ!
いやはや、驚きました。こんなんで大丈夫なんだろうか?と期待値が低かったこともあり、浅型クッカーの底部に広がった炎を確認した時には、「これはスゴい!」と声を出して感心しました。
クッカーを外した直後、X-MESH STOVE内部に広がる炎を見た時には、この風防&ゴトクは間違いなくアルコールストーブのポテンシャルを最大化しているに違いないと確信しました。
メッシュ部分は風を抑えながらも、火に効率よく空気を供給。より強くなった炎を、切れ込み部分から出しているように思えます。
ペラペラのメッシュシートながら、検証時においての機能性は今回紹介した中で最も優秀だといえます。
ミュニーク X-MESH STOVE (large)
アルコールストーブでスローな山時間を楽しんで!
湯を速く沸かすことが目的ではなく、火を自分なりに操ることに楽しさがあるアルコールストーブ。
8モデルを検証する中で、ストーブ、風防&ゴトクそれぞれに個性があり、それを感じるだけでワクワクする時間を過ごせました。
山では時に厳しい条件で苦戦することもあるかもしれません。でも、その中でどうやったら上手く扱えるかを楽しむのがアルコールストーブです。とはいえ、山で初めて使うのではなく、自宅周辺やキャンプで何度か試して、そのアルコールストーブの個性を知って、面倒を楽しめる余裕をつくってからの方が、山で大変な目に遭う可能性は減り、より楽しめると思いますよ!
それでは皆さん、よい山旅を!