レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は2023年5月の大統領選挙で、3選を果たしたものの、経済政策の失敗から苦戦を強いられた。エルドアンが新内閣で経済の司令塔に任命したメフメト・シムシェキ財務国庫相は、経済合理性への回帰を宣言した。果たしてトルコ経済の正常化は起きているのか。本稿は過去半年の金融政策を中心に概観してこの問いに答える。 トルコ経済は2018年の通貨危機以来、為替相場下落とそれに伴うインフレが慢性化した。エルドアンが、中央銀行に金利引き下げの圧力をかけ続けてきたためである。経済理論によれば金利が下がれば資金需要の増加によりインフレ傾向になるはずだが、エルドアンはその逆に「金利が下がればインフレ率は下がる」と主張した。 実際には、金利が下がると資金需要増に加え為替相場下落(輸入物価が上昇)により、インフレが進んだのである。中央銀行はエルドアンの主張と経済の現実の間の辻褄を合わせ