かつて、多くの精神障害者は自宅で「鳥かご」のような場所に監置され、治療を受けることなく監禁されていた。昭和25年に成立した精神衛生法は、精神障害者の医療および保護を目的とし、このような悲惨な私宅監置制度を廃止し、入院中心の医療体制をとるものであった。しかし、入院中心の医療体制では、患者の人権救済が不充分であることが意識され、精神障害の早期発見・治療、社会復帰、アフターケアという一貫した医療体制の確立が叫ばれた。施設内治療から社会内治療、すなわち地域精神医療体制を前提とした新たな法制度の必要性が説かれたのである。 法改正の直接のきっかけになったのは、昭和59年に発覚したU精神病院事件である(同病院における患者の過剰収容や無資格診療、無許可解剖、さらには看護職員の暴行による患者2名の死亡など)。この事件を契機に国内外から日本の精神医療体制に対する批判が高まり、それまでの精神障害者に関する総合