NETFLIXにて昨年11月末から配信中の『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』は、J・D・ヴァンスの同名エッセイを原作とした自伝的映画である。主人公のヴァンスは「ヒルビリー」と呼ばれる、都市部のエリートからは蔑視されるような田舎の白人貧困階級出身。その境遇を抜け出そうと努力し、弁護士となり、一流法律事務所に就職する道が開けたとき、母親の問題が持ち上がり……というストーリー。 この映画も原作エッセイも、しばしば「トランプを支持するような白人貧困層とはどのような人々なのか、この映画を見れば(この本を読めば)わかる」という謳い文句で宣伝されている。しかし、この作品は本当に、そのような文脈によって読めるのだろうか。 原作エッセイの副題「アメリカの繁栄から取り残された白人たち」は、邦訳オリジナルであり、原作の副題は”A Memoir of a Family and Culture in Crisis
