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  • ノア・スミス「アメリカ人の平均寿命がまたのびてきてる」(2024年11月13日)

    2010年代に,アメリカの平均寿命は横ばいになって,さらにはわずかながら縮んでしまった.その後,パンデミック期に平均寿命は急落した.コロナウイルスのせいだ(また,そこまで大きい要因ではないけれど,殺人件数や薬物濫用の増加による部分もある).これを受けて,アメリカとその将来についてすごく悲観的な物語がいっそう強まったりもした. ところが,そういう物語がどんどん増えているなかで,トレンドは逆転を遂げている.アメリカの平均寿命はまた伸びつつある.すでに,パンデミック期に失った分は取り戻されている: Source: UN via @StatisticUrban 全体的に,近頃のアメリカは以前よりもちょっとだけ健康に見える.薬物濫用による死亡件数は2023年に減少したし,殺人も2021年後半から減少を続けているし,肥満も減少しつつある. よくあることだけど,アメリカの衰退をささやく噂は大幅に誇張され

    ノア・スミス「アメリカ人の平均寿命がまたのびてきてる」(2024年11月13日)
  • ノア・スミス「高学歴専門職階級はアメリカの現実から遊離してる」(2024年11月10日)|経済学101

    「俺が,現実離れ?」 「いや,現実離れしてんのは,大学院も出てない連中の方だろ」 トランプ勝利から得られる教訓その三先週の共和党大勝利選挙から民主党が学ぶべき教訓について書いてきた.一目では,アイデンティティ政治ではヒスパニック系有権者に訴求できていない件をとりあげ〔日語記事〕,二目では,民主党が雇用ばかりを気にしすぎてインフレへの注意がおろそかだったことを語った〔日語記事〕.そして三つ目は,アメリカの階級についての教訓だ.高学歴専門職階級は,他の同胞たちから遊離しつつある.価値観・信念・情報の取り方で,彼らは他の人たちから距離が開きつつある. ほんの数年前まで確実視されていた人口統計的な傾向の多くが,今回の選挙ではひっくり返った.トランプ派,ヒスパニック系有権者たちを共和党支持に大きく転換させたようだし,大都市圏は他の地域よりもいっそう強く共和党支持に傾いた.でも,今回の選挙でも

    ノア・スミス「高学歴専門職階級はアメリカの現実から遊離してる」(2024年11月10日)|経済学101
  • ノア・スミス「アメリカ人は失業を嫌がる以上にインフレを嫌っている」(2024年11月8日)|経済学101

    トランプ勝利から得られる教訓その二Source: New York Timesご心配なく.ドナルド・トランプの大統領選勝利からうまれる帰結については,いずれたっぷり書くつもりだ.いまは,今回の結果から民主党が――そしてみんなが――学べる教訓に集中したい.すぐさま思いつくのは,次の3点だ: アイデンティティ政治(帰属集団位の政治)では,人種集団を同質の「共同体(コミュニティ)」ととらえて,集団としての苦情に訴えるべく照準を合わせる.でも,アイデンティティ政治は,ヒスパニック有権者を勝ち取るのに効果的な方法ではない(おそらく,アジア系についても同様だ). 人々は失業率よりもインフレの方を気に病んでる. 教育ある専門職階級は,他の同胞たちの実情から危険なまでに遊離している. (都市部の政治に関する4点目を付け加えようかと,いま考えてる.まあ,そのうち.) 昨日の記事では,アイデンティティ政治

    ノア・スミス「アメリカ人は失業を嫌がる以上にインフレを嫌っている」(2024年11月8日)|経済学101
  • ノア・スミス「この大統領選から学べること:アイデンティティ政治は機能していない」(2024年11月7日)|経済学101

    Source: Googleトランプ勝利からえられる教訓その一まあ,ご存じの通り,ぼくが好むような結果にはならなかった. 前々からあけすけに語っていたように,「トランプアメリカにとってロクでもない選択肢だ」とぼくは考えているけれど,アメリカ人がこういう選択を下したのは否定しようもない.目下,トランプは,激戦州(スイングステート)すべてを勝ち取る見込みだ.全米のあらゆる郡で,2020年の実績を上回る結果を見せている.一般投票でも過半数を獲得すると見られている――共和党にとって,2004年から実に20年ぶりのことだ.いまだにぼくは選挙人団という制度が気に入らないけれど,2016年のように,今回の結果を選挙人団制度のせいにするわけにはいかない.それどころか,トランプの勝利はもっと全般的な共和党支持への地滑りによるところがある――共和党は上院を掌握したし,すでに過半数だった下院でもさらに議席を増

    ノア・スミス「この大統領選から学べること:アイデンティティ政治は機能していない」(2024年11月7日)|経済学101
  • ノア・スミス「雑居ビル:商業地区をつくるもっと優れたやり方」(2024年10月21日)|経済学101

    そろそろ,“zakkyo” を学ぶ頃合いだねPhoto by Stefano Huang on Unsplash今回の記事は,もともと X での連続投稿だった.ところが,これを気に入る人たちがたくさんいたので,ブログ用にまとめ直した方がいいなって考えた.主題は,日の都市だ――とりわけ,大半の他国にはない日ならではの小売りスペースの形態について語る. ぼくは大勢の都市計画専門家たちとつきあいがある.だいたい都市計画の人たちは,複合用途の都市開発が大のお気に入りだ――戸建て住宅や集合住宅とお店やレストランが共存しているあり方を,彼らは好んでいる.でも複合用途の開発と一口に言っても,そのかたちはさまざまだ.そして,日は,世界各地の高密大都市とひと味違うことをやっている. 今回の記事では,複合用途開発を2つのタイプに区分する.世界中の高密都市でよく見られる「一階のみ店舗型」では,一階のレスト

    ノア・スミス「雑居ビル:商業地区をつくるもっと優れたやり方」(2024年10月21日)|経済学101
  • ノア・スミス「でっかい問いにノーベル賞:アセモグル・ジョンソン・ロビンソンについて」(2024年10月15日)|経済学101

    アセモグル・ジョンソン・ロビンソンの3人が,経済発展の大統一理論で受賞毎年,ノーベル経済学賞が発表されるたびに,このブログで記事を書いてる.ここ3年だと,2023年のゴールディン,2022年のバーナンキ・ダイアモンド・ディブヴィグ,2021年のカード・アングリスト・インベンスについて,記事を書いた.でも,今年は書かずにすませようかとも思った.なぜって,実は今年の賞についてぼくはあんまり面白く思ってなくて,それでみんなをしらけさせるのはイヤだったからだ.とはいえ,かつては主流マクロ経済学を批判するのがブロガーとしてのぼくの持ち味みたいなものだったし,いったん自分のルーツに戻ってみるのも悪くないかもしれない. 長くこのブログを読んでる人ならきっと知ってるだろうけど,ぼくはノーベル賞全般をあまりよく思っていない.実際には,たいていの大発見は集団での大きな努力および/または小さな漸進的累積のたまも

    ノア・スミス「でっかい問いにノーベル賞:アセモグル・ジョンソン・ロビンソンについて」(2024年10月15日)|経済学101
  • ノア・スミス「アメリカで肥満率がついに下がりだしてる」(2024年10月14日)

    「アセトアミノフェン / ほらお薬だよ / ああキミったら」 ―― The White Stripes 大きな吉報がやってきた.何十年も手が付けられないほど上昇を続けた末に,ついにアメリカの肥満率が下がりだしてる.国民健康栄養調査(医師の診察にもとづくすごく信頼できるデータソース)から得られたデータをジョン・バーン=マードックが分析したところ,2020年以降に肥満率が下がってきているのがわかった: Source: John Burn-Murdoch このグラフにはひとつ問題点があるのには留意したい(折れ線の末尾に矢印を描くと誤解を招くのにいまだにジョンが矢印をつけてるのとは別の問題点だ).実際の国民健康栄養調査データは2年の時間をかけて収集されている.だから,バーン=マードックが「2023年」とラベルを貼ってるデータは,実のところ2021年8月から2023年8月までのデータだ.このちょっと

    ノア・スミス「アメリカで肥満率がついに下がりだしてる」(2024年10月14日)
  • ノア・スミス「中国,マクロ経済の現実に目覚める」(2024年9月30日)

    2週間前の記事で,中国が総需要不足に苦しんでるって話をして,解決法も論じておいた(日語版).その解決法とは,中央政府が A) 銀行と地方融資平台に救済措置をとることと,B) 財政・金融の両方で刺激策を打つことだ. ひょっとして,習近平がぼくのブログを読んだのかもね [n.1].中国は,もっと格的な刺激策を打ち出している: この火曜に,中国人民銀行は,世界中に生中継するという珍しいかたちをとって記者会見を開き,市場心理に息を吹き返させるための先陣を切った.いわばこれまで温存していた武器庫を開いて,株式市場に資金を投入し,借り入れコストを引き下げるという.その翌日にも引き続き前向きなニュースを提供した.すなわち,市中銀行を対象とする1年間の融資の金利〔政策金利〕を記録的な下げ幅で引き下げつつ,政府が異例の現金給付を実施するとともに,仕事のない新卒者の一部を対象に補助金を出すことを発表した.

    ノア・スミス「中国,マクロ経済の現実に目覚める」(2024年9月30日)
  • ノア・スミス「習近平 vs. マクロ経済学」(2024年9月15日)|経済学101

    Art by Gaurav Rathiマクロ嘲るべからず,でございます閣下ここしばらく,中国経済について書いてなかった.〔アメリカの〕選挙ネタばかりひっきりなしに書きつづけるのをいったん中断して,そっちの話もしようか. このところ,英語圏メディアで中国経済に関して議論されてることは,たいてい,《第二次中国ショック》の話だ――中国製製品の輸入が洪水のようにおしよせてる件が,もっぱら議論の的になってる.でも,中国国内では,それとまるっきりちがう話がさかんになってる――長引く不況の議論だ.中国のオンライン応援団たちは,中国がいかにハイテクで現代的かって話や中国製品がいかにすばらしいかって話をまくしたてるかもしれないけれど,当の中国人たちは,自分たちの経済の有様にすごく不満をもっている: Source: The Economist中国の人たちが憤るのもムリはない――ピッカピカの新型電気自動車やら配

    ノア・スミス「習近平 vs. マクロ経済学」(2024年9月15日)|経済学101
  • ノア・スミス「反ネオリベラリズムじゃ足りない」(2024年8月29日)|経済学101

    World Economic Forum, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons悪者叩きは,ものになる新しい政策プログラムの代替にはならないよマット・イグレシアスが「ネオリベラリズムとその敵たち」について記事を連載している.ぜんぶ通して読むのをぜひおすすめしたい.その第1部で,イグレシアスはこう論じている――1980年代に「ネオリベラリズム」への劇的な転換が起きたと広く信じられているものの,実態ははるかに限定的で,反経済成長の NIMBY志向〔「うんうんゴミ処理場は必要だよね,でもうちの地域には作っちゃダメだよ」〕の台頭の方がよほど影響が大きかった.第2部では,貿易保護主義はアメリカがその中国に対抗する軍事的な能力を保持する助けとして役立ちうるものの,人々の生活水準には総じて打撃となることを論じている.第3部では,反ネオリベラルの人たちが思っているよりもそ

    ノア・スミス「反ネオリベラリズムじゃ足りない」(2024年8月29日)|経済学101
  • ノア・スミス「マドゥロとチャベスはいかにしてベネズエラ経済を難破させたか」(2024年8月1日)|経済学101

    Photo by Wilfredor一国を担う身としてしちゃいけないことつい先日,ベネズエラで選挙があった.ベネズエラで長期にわたって大統領の座にあるニコラス・マドゥロが勝利宣言をしたものの,投票結果を不正操作したと広く信じられている.また,野党は,実際の得票数では決定的過半数を自分たちが獲得したと主張している.マドゥロ勝利を承認した国はごく一握りしかないし,その面々も心強くはない――中国ロシア,イラン,北朝鮮,シリア,キューバ,ニカラグア,ボリビアという国々だ [n.1].ラテンアメリカ諸国の大半では――政治的左翼と結びついた多くの国々,チリ,ブラジル,メキシコ,コロンビアなどなどでも――指導者たちが承認を保留しつつ,得票数の集計についてもっといい証拠を示すように求めている. 不正に歪められたらしき選挙結果に憤慨するベネズエラの人々は路上で抗議デモを行っていて,これまでに少数ながら死者

    ノア・スミス「マドゥロとチャベスはいかにしてベネズエラ経済を難破させたか」(2024年8月1日)|経済学101
  • ノア・スミス「TikTok はいまも言論を抑圧している」(2024年8月26日)

    このまとめ記事のシリーズ23回目で,中華人民共和国に批判的な言論を TikTok が抑圧しているのを示すとてもしっかりした証拠に触れておいた: ネットワーク伝播研究所 (NCRI) による新研究で,[中国がプロパガンダ目的に TikTok を利用しているという事態は]すでに起きており,しかも非常に実質のあるかたちでなされていることが裏付けられた.Instagram と TikTok に投稿されたショート動画のハッシュタグを比較することで,どの話題を TikTok のアルゴリズムが押し上げたり抑圧したりしているのかを把握できる(…).一般的な政治的話題(BLM,トランプ,中絶など)に関わるハッシュタグは Instagram に比べて 約 38% の人気を TikTok では得ている.ところが,中国共産党にとって差し障りのある話題の――たとえば天安門事件,香港の抗議運動,一斉検挙などの――ハッ

    ノア・スミス「TikTok はいまも言論を抑圧している」(2024年8月26日)
  • ノア・スミス「エネルギーが潤沢だってことは水が潤沢だってこと」(2024年8月26日)

    グリーンエネルギーは安価なエネルギーでもあるって話を,ここではたくさん書いている.太陽光発電とバッテリーによって,地球を煮えたぎらせずに産業文明を維持できるようになるばかりか,石油時代がはじまっていらい初めてエネルギーテクノロジーが根から改善される.ずっと停滞が続いてきた一人あたりエネルギー使用量も増加してほしいところだ.実のところ,エネルギーは「安上がりすぎてメーターで測るまでもない」ほどになりはしないだろう――人々がエネルギーの新しい使い途をあれこれと見つけていって,需要も伸びるだろうからね.でも,エネルギーはいまよりも潤沢になるはずだ. 「でも,だからどうだっての? 誰がもっとエネルギーを必要としてるって? 豊かな国々に暮らす人たちは,もう住居を明るく照らすのも車で通勤するのもコンピュータを動かすのも冷蔵庫を稼働させておくのも,みんなまかなえてるじゃん.エネルギーにいっそう安上がり

    ノア・スミス「エネルギーが潤沢だってことは水が潤沢だってこと」(2024年8月26日)
  • タイラー・コーエン「マルクス主義の妥当なところは?」(2004年8月24日)

    ブラッド・デロングがマルクス主義の痛烈かつ正確な批判を書いている〔※リンク切れの模様〕.そのうえで,マルクス主義の教説で妥当な部分を誰か5つ挙げてみないかと問いかけている.このぼく以上の適任者っているかな? いま,〔マルクス主義の〕あらゆる主張を現代の文脈で現代の分析用語に翻訳する作業にとりくんでいる真っ最中だ.ぼくらの知るマルクスは,そんなにたくさん書かなかった.それに,そう,彼のアイディアの多くは,〔アダム・〕スミスその他に見いだせる. #1. 資主義システムでは――とくに現代〔の先進国のような経済〕にいたる前は――小規模の生産にくらべて,おうおうにして自律性が低くなる.工業化以降,生活水準は向上していく.でも,メキシコの田舎に暮らす友人たちの多くを見てみると,工場に務めた方がいくぶん高い賃金を稼げそうだけれど,それでも自宅で陶器に絵付けする方を選んでいる.その方が,時間の使い方をず

    タイラー・コーエン「マルクス主義の妥当なところは?」(2004年8月24日)
  • ジョセフ・ヒース「ジョン・ロールズと西洋マルクス主義の死」(2024年8月25日)|経済学101

    その昔,まだ私が学部生だった冷戦末期に,政治哲学で最高に熱い事態が起きていた.それは,英語圏でのマルクス主義の力強い再興だ.その仕事の大半は,「分析マルクス主義」という旗の下で進められていた(別名「たわごと無用のマルクス主義」ともいう).その発端となったのは,ジェラルド・コーエン『カール・マルクスの歴史理論:その擁護』の出版だ(あと,同書出版後にコーエンがオックスフォード社会政治哲学のチェリ講座教授に就任したこと).一方,ドイツでは,ユルゲン・ハーバマースの素晴らしく小さくまとまった『後期資主義における正統化の問題』が出て〔1975年〕,マルクスによる資制のさまざまな危機の分析を現代のシステム理論の言語に翻案して新たな息吹を吹き込む期待が高まった.若い急進主義者にとっては,実に熱い時代だった.誇張抜きに,こう言ってもいい――当時,政治哲学に携わっていたきわめて聡明でとりわけ重要だった人

    ジョセフ・ヒース「ジョン・ロールズと西洋マルクス主義の死」(2024年8月25日)|経済学101
  • ノア・スミス「アメリカの朝」(2024年8月18日)

    ぼくはよく2020年代を1970年代になぞらえてるけれど,両者には少なくともひとつ,大きな違いがある.1970年代には,高いインフレ率と高い犯罪率と不況が10年間ずっと続いた.他方,2020年代はというと,そうした問題はずっと急速に収まりはじめた.たとえば,インフレ率はだいたい 2% 目標にまで下がった.それに,インフレがまたすぐにも再発するとみんなは予想していない――市場価格で測ったインフレ予想は,パンデミック以前の水準にまで戻ってきている.というか,それもちょっぴり下回っている. Source: Justin Wolfers インフレ予想が下がっていると言うことは,FRB が金利を引き下げるとみんなが予想していると言うことだ.そして,金利引き下げ予想は,住宅ローン利率の低下につながる: 住宅ローン利率は,この15ヶ月で最低の水準にまで下がった.これにともない,苦しんでいたアメリカ住宅

    ノア・スミス「アメリカの朝」(2024年8月18日)
  • ノア・スミス「いや,移民はアメリカ人の雇用を奪っていないよ」(2024年8月18日)

    政治的な党派は,それぞれに,自分たちが優位に立てる論点を必要としてる.バイデンのもとで雇用市場は信じられないほどの堅調が続いているので,各種の右派は自分たちに「ちがうちがう,ホントは物事は酷いことになってるんだ」と言い聞かせるための理由を必要としている.そういうお得意の論点のひとつが,これだ――「雇用はみんな外国人にもっていかれているし,アメリカ人は移民に取って代わられている.」 ひどく誤解を招くグラフについては,つねづねみんなに注意喚起してる.上のグラフも,まさにそういうやつだ.このグラフは,以前の記事で誤りを論じてきた.左右に別々の軸を使うことで,アメリカ生まれの人たちの雇用の減少が,外国生まれの人たちの雇用の増加よりもずっとずっと小さいってことが見えなくなってしまっている.というか,アメリカ生まれの人たちの雇用がわずかに減少しているのすら,ひとえに,ベビーブーマー世代の大量退職による

    ノア・スミス「いや,移民はアメリカ人の雇用を奪っていないよ」(2024年8月18日)
  • ノア・スミス「新しい進歩派の経済学: 建設的な批判を少々」(2024年7月29日)|経済学101

    総需要不足に頼らない経済学への進歩的アプローチが必要だSource: Works Progress Administration「ネオリベラリズム」とこれを変えたがっているアメリカの進歩派たちについて,マット・イグレシアスが一連のとても興味を引く記事を書いている.最初の記事で,イグレシアスはこう論じている――ネオリベラル政策革命は,圧倒的で広範囲に及んだと多くの進歩派たちは考えているようだけれど,実際にはそれよりずっと限定されていた(イグレシアスの主張は正しい).2つ目の記事での主張はこういうものだ――アメリカの旧来の対中国貿易政策にあった最大の問題点は,国家安全保障を弱めることになった点だった(この点も正しい).このシリーズで次にくる記事も楽しみだ. ただ,「ネオリベラリズム」をどういう意味で使うべきか,そして,アメリカの昔の政策も「ネオリベラリズム」だったのかどうかについて論議するのも

    ノア・スミス「新しい進歩派の経済学: 建設的な批判を少々」(2024年7月29日)|経済学101
  • ノア・スミス「みんなの認識よりももっと日本は半導体に強みをもっている」(2024年8月18日)

    昨年末に,日の半導体産業への関心がとても盛り上がっていた.伝統的に日はとても強かったけれど,半導体生産の大半は台湾韓国にとられてしまった.それでも,日はいまも才能ある人々の宝庫だし,とてもすぐれた半導体生産ツールや部品をつくっている企業はいまもたくさんある.これに加えて,このところの円安もあり(円安によって日国内に半導体工場を建設するのも海外に日製の半導体を売るのも容易になる),また,工場建設の規制障壁が比較的に少ないこと,低賃金,気前のいい政府の支援などが合わさって,日は半導体産業の未来を築くのに完璧な場所に思える. 半導体部門で日がとても強みをもっていることを裏打ちするかのように,とある日の大学が,半導体生産技術の大きな躍進になるかもしれないものをつくった.現在,最先端の半導体製造には極端紫外線リソグラフィ (EUV) の機械が必要で,これはオランダ企業 ASML だ

    ノア・スミス「みんなの認識よりももっと日本は半導体に強みをもっている」(2024年8月18日)
  • ノア・スミス「なんで Twitter にいるアメリカ人学者たちはあんなにヤな奴なの?」(2024年7月1日)

    ノア・スミス「なんで Twitter にいるアメリカ人学者たちはあんなにヤな奴なの?」(2024年7月1日) Prashant Garg & Thiemo Fetzer の愉快な共著論文が新しく出てきた.主題は,Twitter で投稿してる学者たちについて.著者の Garg が研究結果を要約してる連続ツイートをこちらで読める.一般に,学者たちは読者が予想してるとおりの人たちだ――世間一般の人たちに比べると,より合理的で,それほど回りにとって厄介な人じゃなくて,それほど自己中心的でなく,社会主義寄りで,文化面ではより自由尊重で,気候変動についての懸念が強い: Source: Garg & Fetzer (2024) でも,それは他のいろんな国々の人たちもふくめた学者全般の話だ.アメリカの学者たちは,ヨソの学者たちとはちょっとばかりちがってる.アメリカの学者たちは有意に自己中心的で厄介で感情的

    ノア・スミス「なんで Twitter にいるアメリカ人学者たちはあんなにヤな奴なの?」(2024年7月1日)