土砂降りの冬の日。
いつもより早く学校が終わり、電車に乗って帰宅している途中、父に迎えの連絡をしていないことに気がついた。
雨の日のお迎えは父に連絡というのが我が家の決まりごとだったが、普段メールをしない父には電話連絡という手段しかなく最寄り駅に着いたら連絡しようと少し憂鬱になった。
田舎の駅の待合室はとても寒く、出来ることなら待たずに帰りたかった。
改札口を抜け、人が少ない場所に寄り携帯で連絡しようとすると父の姿が見え、慌ててかけよった。
「えっ、何で?」
驚く私に父は、「何でって、お前のお迎えだよ」と呆れながら告げる。さも同然にそう言うが、私は連絡をしていないのにと頭を捻るばかりであった。
「昨日、早く学校が終わるって言ってたろ」
「えっ、うん。ありがとう、でも」
終わる時間は告げていなかったし、雨だって急なことだった。携帯の着信履歴を見ても父からの連絡はなかった。
「少し待ったよ。でも、来るのがわかってたし」
もう少し遅かったら連絡したよ、と言う父に今度は私が呆れた。
車に乗ると車内は暖かく、私が寒い思いをしないようにという父の配慮が感じられた。
「おかえり」
そう告げる父に、緩んだ顔がバレないように引き締める。迎えに来てくれたことが、凄く嬉しかったと気づかれたくはなかった。
しかし、私とは打って変わって父はどこか嬉しそうな顔をしているのできっとバレているのだろう。
「ただいま」
しかたがないので、私も笑った。