昨日は朝から晩まで、チャーン・サイモンズ理論の深淵に没頭していた。朝食は当然、規定量のオートミールと温かい豆乳。タンパク質と繊維質のバランスは、脳の活動効率に直結するからね。
午前中は、ウィッテン教授が提唱したチャーン・サイモンズ理論と共形場理論の関連性について再考していた。特に、SU(2)ₖ チャーン・サイモンズ理論におけるウィルソンループの期待値が、対応するWZW模型の相関関数と一致するという驚くべき事実は、僕の知的好奇心を大いに刺激する。しかし、僕が今取り組んでいるのは、より複雑なゲージ群、例えばE₈の場合だ。E₈は例外型リー群の中でも最大のもので、その表現論は非常に複雑だ。
午後は、このE₈チャーン・サイモンズ理論における結び目不変量の計算に挑戦していた。特に、結び目理論における「彩色ジョーンズ多項式」の概念を拡張し、E₈の場合に一般化することを試みている。この計算は途方もなく複雑で、通常の数学的手法では手に負えない。そこで僕は、最近開発した新しいアルゴリズム、「超幾何級数を用いた漸近展開法」を応用することにした。この方法を用いることで、今まで不可能と思われていた高次表現における彩色ジョーンズ多項式の漸近挙動を解析的に求めることができる可能性がある。
夕食は、ルームメイトが用意した、おそらく電子レンジで温めただけの代物だったが、僕は研究に没頭していたため、味など全く気にならなかった。食事中も、頭の中ではE₈チャーン・サイモンズ理論のことがぐるぐると回っていた。特に、この理論が量子重力とどのように関係しているのか、という点が僕の最大の関心事だ。一部の物理学者は、チャーン・サイモンズ理論が3次元量子重力の有効理論として現れると考えている。もしそうなら、僕の研究は宇宙の根源に迫る手がかりとなるかもしれない。
夜になって、さらに驚くべき発見があった。僕が開発したアルゴリズムを適用した結果、E₈チャーン・サイモンズ理論における特定の結び目不変量が、数論における「モジュラー形式」と深い関係を持っている可能性が浮上してきたのだ。モジュラー形式は、数論の中でも最も美しい対象の一つであり、楕円曲線や保型形式と密接に関連している。もし僕の予想が正しければ、物理学と数学の間に全く新しい繋がりが見つかるかもしれない。
この発見は、僕を興奮で眠れなくさせた。しかし、興奮している場合ではない。この結果を厳密に証明し、論文にまとめなければならない。今日は一日中、その作業に取り掛かることにしよう。
(追伸)
ルームメイトが僕の部屋に勝手に入ってきて、「落ち着け、壁を叩くのはやめてくれ」と言ってきた。僕はただ、頭の中の数式を整理するために、リズム良く指を動かしていただけなのだが。全く、ルームメイトというのは理解に苦しむ存在だ。