金曜日に飲み過ぎてしまい、この土日は絶不調。もう年も年なのだからアルコールは控えねばならないのだが、一週間どころか先月以来のストレスがたまりっぱなし。おかげでつい度を超してしまった。ほとんどヤケ酒だが、酒でも飲まないとやってられない、という本書の主人公、ダンカン司祭の気持ちがよくわかった点だけが収穫といえば収穫か!?
さて、気持ちを取り直して前回の続きを書くと、メルヴィルの『船乗りビリー・バッド』には、本書とはまったく異なるかたちで裁きの問題が出てくる。イギリスの軍艦の水夫で善良な少年ビリー・バッドが、悪の体現者ともいうべき上官のクラッガートを撲殺。それを裁くのがヴィア艦長だが、ヴィア艦長は、「この薄倖の青年に対する情において忍びざること、(乗員)諸君に劣るものではない」とビリーの善なる立場を認めつつ、「ひとえに、義務を重んじ、法秩序を守ろうとする一心」からビリーに死刑を宣告する。(坂下昇訳)
つまり、その裁きには法と道徳の問題がからんでいるわけだが、ヴィア艦長の下した判決は決して血も涙もないものではなく、処刑直前にヴィアが洩らす「ビリー・バッドよ! ビリー・バッドよ!」という言葉が示すとおり、彼は心の中で泣いている。それなのに、上官殺しが反乱につながることを未然に防ぐべく、艦内秩序を重んじて表向きは非情な決断を下したのである。
これは本来もっと深く掘り下げないといけない問題だが、今日はとてもそんな時間がない。ともあれ、ぼくがここで言いたいのは、そういう過去の超弩級の名作と較べると、この "The Bishop's Man" はいかにも突っ込みが甘く、ほとんど本質論の入口に終始している。終盤に差しかかるまで本当にいい味を出していただけに残念だ。以下、『ビリー・バッド』の昔のレビューを再録しておこう。
Billy Budd, Sailor (An Inside Narrative Reading Text and Genetic Text)
- 作者: Herman Melville
- 出版社/メーカー: University of Chicago Press
- 発売日: 2001/09/01
- メディア: ペーパーバック
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