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鑑三翁に学ぶ[死への準備教育]

内村鑑三翁の妻や娘の喪失体験に基づく「生と死の思想」の深化を「死への準備教育」の一環として探究してみたい。

[Ⅷ312] 世の変革者(12) / 亡国に民ありて

2024-09-26 19:43:27 | 生涯教育

2022年2月24日にプーチンロシアがウクライナの首都キーウをはじめとする主要都市に侵略を始めてから2年6か月、ウクライナ軍はロシア西部クルスク州で越境攻撃を開始して数週間が経過した。ゼレンスキー大統領は掌握地域を拡大していると強調した。その上でロシア領内への攻撃に欧米が供与した射程が長い兵器を使うことを認めるよう訴えた。

一方ウクライナ東部ドネツク州ではロシア軍が攻勢を強め要衝に迫っているが、この折にプーチン大統領は「核」をちらつかせ始めた。だがこれを使えばロシアという国家が消滅することはプーチンも知っている。核をちらつかせて恫喝し扇動するプーチンを一人のCIA幹部は”チンピラ(bully)”と呼び精一杯の蔑称で牽制した。

他方トルコのエルドアン大統領は2024年9月13日、クリミア半島はウクライナに返還すべきであり、それが欧州の常識であると公式の場で述べた。プーチン大統領は盟友と信じていたエルドアンの発言に驚愕し、それは容認できないと返答した。両の手を血だらけにしてクリミアを分捕った侵略者なのに、ICCから逮捕状が発出されているプーチンは恥知らずで邪悪である。

私はこの連載で「[Ⅳ229] 日本人とか日本社会とか(9) / 精神滅びて亡国の民なり」と題して鑑三翁の日本人観を記した(230330)。鑑三翁の論考の要旨は次のようなものである(現代語訳を抜粋した)。

【国民の精神が失せた時にその国は既に滅びたのである。 国民に相愛の心がなく、人々が互いに猜疑心を持ち、同胞の成功を見ると(妬みの故に)怒り、その失敗と堕落とを聞いて喜び、自分一人だけの幸福を考えて他人の安否を慮ることなく、金持ちは貧しい者たちを救おうとはせず、官僚と企業は相結託して富を寡占して無辜の民、農業や職人等から税を搾り取るようになった。その国の憲法がいかに立派でも、その軍備がいかに完全であり、大臣職の者がいかに賢い人たちであっても、その教育はいかに高尚でも、このような国の民は既に亡国の民であり、辛うじて国家の形骸を残しているだけである。】

まるで令和の今日の日本の政治/経済/社会生活の有り様を前にして、鑑三翁が私の目の前でそれを歎じて記しているかのようだ。人々の間でお互いに謙虚さをもち敬意を払いながら社会を生きるという通念は、まさにこの令和の時代に破綻している。誰あろう国を運営する自民党政府も邪教政党と野合を組み、この国の道徳的/倫理的観念を自らが率先して破壊している。聖書の言葉を借りるならば「もし治める者が偽りの言葉に聞くならば、その役人らはみな悪くなる。」(箴言29:12)という世界が私の眼前に広がる。

自民党の国会議員が率先して法律違反の裏金作りに勤しみ、邪教A及びBと手を組んで選挙協力させて野合政権となし政界の利権を都合よく引き込み日本の政治を動かしている。検察機関の女性幹部は政権政党の法令違反を見逃すことで自民党政府から論功行賞の検事総長のポストを手に入れた。大手不動産業/大手ゼネコン/大手商社/大手広告代理店を強引に重用し、大企業優遇税制を実行し、中間層以下を切り捨て、富者と貧困層の二極分化でこの国を統治しようとしている。この有り様について私はこんな投稿をXにしたことがある。「資本家や企業を金満にすればゼニはそこから滴り落ちてくる‥という古典的trikle -down学説に酔い、小泉安倍竹中らは政策に取り込み、大企業優遇税制・法人税減免を行い、他方で消費増税を実行した。その結果日本はどうなったか‥ゼニは内部留保と配当に回り成金/金満家が急増した。ゼニは市民国民中小零細企業には滴り落ちず、非正規雇用/賞与非対象者は激増し、貯蓄が0円という二人以上世帯の割合は22.0%、単身世帯では33.2%(2021年統計)という悲惨な現実をもたらし貧困世帯は激増した」これが今日日我々日本人の生活の実像である。

検察機関や司法が国の権力に隷従している。したがって「悪しきわざに対する判決がすみやかに行われないために、人の子らの心はもっぱら悪を行うことに傾いている。」(伝道の書8:11) このような政治経済司法界の道徳的破綻が子どもを含めた社会の構成員の道徳的破綻に大きく影響を及ぼしている‥これが現今令和の日本の政治/経済/社会の虚飾を剥いだ裸の姿である。

「このような国の民は既に亡国の民であり、辛うじて国家の形骸を残しているだけである」と鑑三翁が今私の目の前で嘆息している。考えてみれば今から二千数百年も前の預言者たちが異口同音に鑑三翁と同様の事を歎じていたわけで、誠に人間の政治経済社会というものは厄介極まりないものではある。困ったものだ。


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