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2020/05/16

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  • 望月青果店、お母ちゃんの鬼退治

    小手鞠るい,2011,望月青果店,中央公論新社.(2.20.25)母は私を許してくれたのだろうか?夫の誠一郎、盲導犬の茶々とアメリカで暮らす鈴子。岡山にある実家「望月青果店」には、もう5年戻っていない。ふいに訪れた停電の夜―故郷に置いてきた記憶がよみがえる。捨ててきたはずの故郷と母、交わされた約束。みずみずしくて甘酸っぱい、家族の物語。『レンアイケッコン』以来、3年ぶりの書き下ろし長編。毒親を地で行く母親との確執、盲目のピアニストである夫との穏やかな暮らし、そして、かつて想いあっていた隆史との切ない思い出。主人公、鈴子が抱える、寂しさ、切なさ、苦しさが高解像度で伝わってくる。恋愛小説としても、親子の葛藤を描いた家族小説としても、文句なしの傑作長編小説だ。小手鞠るい,2022,お母ちゃんの鬼退治,偕成社.(...望月青果店、お母ちゃんの鬼退治

  • 未来地図

    小手鞠るい,2023,未来地図,原書房.(2.19.25)奈良の小さな町で、中学教諭として再出発した久児(ひさこ)。しかし、心に巣くう暗い過去が、幸せになろうとする彼女にブレーキをかける。自分で捨てておきながら、探し続けてきたものとはなんだったのか――愛と再生の物語。大人の鑑賞に耐えうる恋愛小説の傑作。ハッピーエンドで終わる恋愛譚は、おしなべて鼻白むだけのことが多いが、本作はちがう。こころに深い傷を負った主人公、久児が、同じく傷を負った直巳にこころを開くくだりが秀逸だ。ストーリーで読ませるだけでなく、美しく、奥深い言葉が読む者の琴線に触れる。未来地図

  • 闇の子供たち

    梁石日,2004,闇の子供たち,幻冬舎.(2.18.25)貧困に喘ぐタイの山岳地帯で育ったセンラーは、もはや生きているだけの屍と化していた。実父にわずか八歳で売春宿へ売り渡され、世界中の富裕層の性的玩具となり、涙すら涸れ果てていた…。アジアの最底辺で今、何が起こっているのか。幼児売春。臓器売買。モラルや憐憫を破壊する冷徹な資本主義の現実と人間の飽くなき欲望の恐怖を描く衝撃作。映画の方がより注目を浴びた本作であるが、原作、映画ともども、ノンフィクションかフィクションか、物議をかもした作品である。幼児売買、幼児売買春、臓器売買・・・裏社会に通じた作者であればこそ、フィクションであるとは言え、裏を取ったうえでのこの内容であるのだろう。エイズを発症してゴミ捨て場に遺棄され、帰り着いた故郷で親に火をつけられて焼かれ...闇の子供たち

  • ポイズンドーター・ホーリーマザー、白ゆき姫殺人事件

    湊かなえ,2018,ポイズンドーター・ホーリーマザー,光文社.(2.17.25)女優の弓香の元に、かつての同級生・理穂から届いた故郷での同窓会の誘い。欠席を表明したのは、今も変わらず抑圧的な母親に会いたくなかったからだ。だが、理穂とメールで連絡を取るうちに思いがけぬ訃報を聞き…。(「ポイズンドーター」)母と娘、姉と妹、友だち、男と女。善意と正しさの掛け違いが、眼前の光景を鮮やかに反転させる。名手のエッセンスが全編に満ちた極上の傑作集!自らの母親が「毒親」であることを告発する娘も、その「毒親」からすれば「毒娘」であるのかもしれない。ハラスメントや犯罪の加害-被害関係においてつきまとう、「当事者は嘘をついているかもしれない」という問題を、表題作はみごとにえぐり出している。湊さんの作風は、劇画、映像向きの、スト...ポイズンドーター・ホーリーマザー、白ゆき姫殺人事件

  • 告白、少女

    湊かなえ,2010,告白,双葉社.(2.16.25)「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。映画と比べて、原作のインパクトはどんなもんかなと思いつつ読んでみたのだが。映画「告白」劇場予告「見たまんま」理解できる映画と違って、小説の出来は、言葉の一つ一つが喚起するイメージの豊穣さに左右される。この手の小説であれば、どうしても桐野...告白、少女

  • 光源

    桐野夏生,2000,光源,文藝春秋.(2.14.25)あんたら、ふた言目には「いい映画」って言うけどさ。俺は映画の奴隷じゃねえよ。『柔らかな頬』から二年。「狂乱」を求めて、光を発し続ける男女を鮮烈に描く。桐野作品には、本書のように、ストーリー展開は地味で、ひたすら人間のドロドロした欲望を事細かに描きつくすものがあるが、そこいらへんは、小説になにを求めるのかによって評価が分かれるところだろう。わたしは、衝撃的な出来事をはさみながら、人間の情念を細部にわたって描きつくす作品が好みなんだが、そうそう自らの好みがすべて充たされるわけではない。光源

  • 身分社会、ザイム真理教と闘う!

    森永卓郎・深田萌絵,2024,身分社会,かや書房.(2.14.25)身分社会の頂点の一つは財務省。森永卓郎は、財務省に下僕のように扱われる「植民地」で長く働いた。深田萌絵はFランクの美術短大卒業後、就職では企業に歯牙にもかけられず、非正規という最低ランクの仕事に就いた。しかし、早稲田大学政経学部卒業後は、あちこちから引っ張りだこだった。その後は身分社会の頂点の一つの外資に。見たのは人間性最低の欲望の世界。現代の身分社会のレベルの低さを頂点と底辺を極めた2人が語り合う。現代は「業績主義」の社会であると思われているが、生まれ(生得属性、身分)と生育環境とが将来の「業績」に強く影響し、その「業績」は同時に属性(身分)に転化し、権力と貨幣資本の圧倒的不平等による支配−服従の関係が生成される。なにもかもあらかじめ与...身分社会、ザイム真理教と闘う!

  • コモングッド──暴走する資本主義社会で倫理を語る

    ロバート・B・ライシュ(雨宮寛・今井章子訳),2024,コモングッド──暴走する資本主義社会で倫理を語る,東洋経済新報社.(2.13.25)著者のライシュがこれまで展開してきた「新しい資本主義」(政府か市場かの二者択一ではなく、市場メカニズムの根幹となる市場のルールそのものを見直してサテナブルな資本主義を構築する)から一歩進んで、「よき市民社会をつくるためには、何が必要か」に焦点を当てた本。50年ほど前から、富と権力をもつ一握りの人々が、さらに多くの富と権力を手中に得ようと、社会に広がる「信頼」を搾取し始め、かつてはコモングッドと定義され、履行されてきた暗黙のルールが浸食されることになった。「私はどんな手段を使ってでも可能な限りの富と権力を手中に集める。慎み深く責任を持つなんていうのは負け犬がすることだ」...コモングッド──暴走する資本主義社会で倫理を語る

  • 絶望ハンドブック

    坂口恭平,2024,絶望ハンドブック,エランド・プレス.(2.12.25)苦しみの底で見つけたものは?『生きのびるための事務』著者がおくる、こころの深淵の歩き方。坂口さんは、双極性障がいの当事者。自我が、躁と鬱状態に引き裂かれ、平常もしくは躁状態の坂口さんが、鬱状態の自分に、延々と問いかけ続ける。気が滅入るような、終わりのないモノローグ。双極性障がい当事者の苦しみがひしひしと伝わってくる。目次第1章絶望の分析絶望へのアプローチ絶望とはなにかほか第2章絶望の渦中で絶望状態の苦しみ脱出1日目ほか第3章絶望の変調絶望と現実道具としての絶望ほか第4章絶望と生きる原点に戻る絶望の世界ほか付録絶望状態のメモ絶望ハンドブック

  • 死にたい気持ちに触れるということ──ソーシャルワーカーが見ている景色

    加藤雅江,2024,死にたい気持ちに触れるということ──ソーシャルワーカーが見ている景色,大月書店.(2.12.25)「困りごと」や「死にたい気持ち」を抱える人たちが話してくれた厳しい現実。その声を、ソーシャルワーカーとして受けとめ、地域で安心できる居場所づくりにも取り組む著者が、とくに若い世代に向けて語りかける。「死にたい気持ち」に取り憑かれている人々に向けて、また、絶望の極みにあった過去の自分自身に向けて、自問自答を繰り返す。延々と続くモノローグを読んで、こころがふっと軽くなる人もいるのだろう。「居場所」とて、そこに強制力がはたらけば、苦痛の場でしかなくなるというのは、そのとおりだろうな。目次はじめに1ソーシャルワーカーという仕事2「自殺」について思うこと3死にたい気持ちに触れるということ4「困りごと...死にたい気持ちに触れるということ──ソーシャルワーカーが見ている景色

  • 【旧作】魂にふれるアジア【斜め読み】

    松井やより,1992,魂にふれるアジア,朝日新聞社.(2.12.25)アジア諸国における貧困、性搾取、児童労働、戦争犯罪、人権弾圧、環境破壊等の問題を告発し続けた松井さんの功績は計り知れない。松井さんが活躍していた1970-80年代には、日本も含めた先進国企業による、グローバルサウスの人々の搾取に対し、直接行動で対抗する運動があった。「東アジア反日武装戦線」もその運動体の一つで、1974年、三菱重工爆破事件を引き起こす。本書でも、アジア諸国の人々を搾取し、環境を破壊して、人権抑圧に加担する企業として、三菱グループのそれが挙げられている。三菱グループの企業だけが、搾取、抑圧、破壊の加害者であったわけではない。しかし、「三菱的なるもの」への嫌悪と忌避は、ずっとつきまとってきた。反吐が出る。「三菱重工」のたかが...【旧作】魂にふれるアジア【斜め読み】

  • 【旧作】あやかしの鼓(夢野久作怪奇幻想傑作選)【斜め読み】

    夢野久作,1998,あやかしの鼓(夢野久作怪奇幻想傑作選),角川書店.(2.11.25)鼓作りの男が想い焦がれた女性へ、嫁ぐ時に贈った自作の鼓。その音色は尋常とは違い、皆を驚かせた。それは恐ろしく陰気な、けれども静かな美しい音であった…。夢と現実とが不思議に交錯する華麗妖美な世界。表題作をはじめ、その粋を集めた夢野文学の入門書ともいえる決定版の一冊。いやあ、おもしろかったね。江戸川乱歩と並び称される夢野久作であるが、『ドグラ・マグラ』の印象が強すぎて、「とっつきにくい」作家として敬遠されてきた向きがある。しかし、こと短編小説に限れば、独特の韻を踏む文体にいつしか引き込まれること必至で、そこに醸し出される奇々怪々な人間と世界の描写は、他の追随を許さない。他の作品も読んでいこうと思う。楽しみだ。【旧作】あやかしの鼓(夢野久作怪奇幻想傑作選)【斜め読み】

  • 手段からの解放

    國分功一郎,2025,手段からの解放,新潮社.(2.10.25)「楽しむ」とはどういうことか?『暇と退屈の倫理学』にはじまる哲学的な問いは、『目的への抵抗』を経て、本書に至る。カントによる「快」の議論をヒントに、「嗜好=享受」の概念を検証。やがて明らかになる、人間の行為を目的と手段に従属させようとする現代社会の病理。剥奪された「享受の快」を取り戻せ。「何かのため」ばかりでは、人生を楽しめない―。見過ごされがちな問いに果敢に挑む、國分哲学の真骨頂!第一章で展開された論文を、第二章の、東大での講話で解説するという構成。「享受の快」までもが、「目的のための手段」と化し、人間の実存が蝕まられているという指摘は、ハーバマスの「生活世界の植民地化」テーゼを想起させるが、本書では、「なにかのためにするのではなく、かつそ...手段からの解放

  • ギャンブル脳

    帚木蓬生,2025,ギャンブル脳,新潮社.(2.10.25)「次こそ当たる!一発逆転!!」。いい加減な予想は、期待を通り越してやがて確信へと変わっていく。そんな時、ヒトの脳ではいったい何が起きているのか。脳内にあふれるドーパミン、二度ともとには戻らない思考回路、ついには薬物中毒よりも深刻な依存状態に…。ギャンブル依存症の患者とその家族の苦しみに、長年向き合ってきた作家にして精神科医が多くの臨床例と最新の知見から解き明かす、恐怖のスパイラル。本書では、人は、どうやってギャンブル依存に陥るのか、とてもわかりやすく解説されている。また、帚木さんは、ギャンブル症を蔓延させる国や警察の作為、無作為について、手厳しく批判する。ギャンブル依存だけでなく、買い物依存、窃盗癖、痴漢、盗撮等、「やめるにやめられない」嗜癖疾患...ギャンブル脳

  • ジオラマ、ロンリネス

    桐野夏生,2001,ジオラマ,新潮社.(2.9.25)ベルリンのガイドで生計を立てる、美貌の男、カール。地方銀行に勤める平凡な会社員、昌明。金のため男に抱かれることに疲れ始めた、カズミ。退屈な生活。上下運動を繰り返す、エレベーターのような日々。しかし、それがある時、一瞬にして終焉を迎える。彼らの目の前に現れた、まったく新しい光景。禁断の愉悦に続く道か、破滅の甘美へと流れゆく河か。累卵の如き世界に捧げる、短編集。九編の短編小説集。人間のこころの不条理、隠微さ、醜悪さを描く試みを、桐野さんは、石ころを剥がして、その下にうごめく生き物たちを観察することに喩える。子供の頃、地面に埋まっている石ころを剥がす遊びに夢中だったことがある。見たところ何の変哲もない石の下に、地上とは全く違う世界が存在しているのが面白くてな...ジオラマ、ロンリネス

  • 「女子」の誕生、女子のチカラ

    米澤泉,2014,「女子」の誕生,勁草書房.(2.7.25)「子ども」や「主婦」と同様、「女子」も近代社会が生み出した存在であり、その「女子」の内実がどう変容してきたのか、それを主にファッション雑誌から探り出し、読み解こうという米澤さんの問題意識は、まことに正道を行くものだ。「女子」がもっとキレイにカワイくなろうとするのは、男のためではない。鏡に映った自分に萌えるため、あるいは、「気分をあげる」ため、である。階層上昇婚を当て込む女子大生をターゲットにした『JJ』等の「赤文字」系ファッション誌はとうに姿を消した。「きさまいつまで女子でいるのか」という問いへの答えは、「いつまでも」、である。コスメや衣服で武装し、「女子」という「鎧」を身にまとう女たちは、おそらく、一生、「わたしに萌える」。年齢や役割、ライフス...「女子」の誕生、女子のチカラ

  • 母親になって後悔してる、といえたなら──語りはじめた日本の女性たち

    髙橋歩唯・依田真由美,2024,母親になって後悔してる、といえたなら──語りはじめた日本の女性たち,新潮社.(2.7.25)どん底の状態はずっとは続かない。NHK「クローズアップ現代」からの書籍化。「母親なんだから」と我慢を強いられ、自らの「理想の母親像」に縛られ、理不尽な目に遭っても口をつぐんできた――「後悔」を口にした日本の女性たちは、どのような人生を歩み、何を経験してきたのか。切実な想いを丁寧に聞き取った、社会現象になった話題書『母親になって後悔してる』の「日本版」というべきインタビュー集。本書は、オルナ・ドーナトの『母親になって後悔してる』に触発されて編まれた、母親業を降りたい、母親なんかにならなければよかったという思いをもつ女性たちへのインタビューの記録である。育児による心身の疲弊、仕事を断念せ...母親になって後悔してる、といえたなら──語りはじめた日本の女性たち

  • 人間標本

    湊かなえ,2023,人間標本,KADOKAWA.(2.6.25)蝶が恋しい。蝶のことだけを考えながら生きていきたい。蝶の目に映る世界を欲した私は、ある日天啓を受ける。あの美しい少年たちは蝶なのだ。その輝きは標本になっても色あせることはない。五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。今こそ最高傑作を完成させるべきだ。果たしてそれは誰の標本か。――幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。イヤミスの女王、さらなる覚醒。15周年記念書下ろし作品。蝶のような「美少年」を殺して「標本」にする。それだけだと、たんなる猟奇譚になってしまうが、最後、真相が二転三転し、思わぬ真犯人が明らかになる。わたしは、ミステリー小説として楽しんだが、「美少年」...人間標本

  • 死神

    田中慎弥,2024,死神,朝日新聞出版.(2.6.25)うだつの上がらない「作家」である私の人生の折々に登場してくる、死神。中学二年生で初めて出会ったあいつのことだけは、これまで作品には書けなかったのだが……。芥川賞作家が描く「死」と「家族」。ユーモラスにして、痛烈な新境地。本作は、希死念慮に取り憑かれた人間の想念を描いた作品だが、言葉や句読点をもう少し工夫すれば、さらっと読める佳作になってたんじゃないかな。あと、もう少し、毒気が欲しい。凡庸の域を超えられていない。死神

  • 【名作】ライ麦畑でつかまえて【再読】

    J.D.サリンジャー(野崎孝訳),1984,ライ麦畑でつかまえて,白水社.(2.5.25)前に読んだのは、村上春樹訳だったが、この野崎孝訳も良い。ドロップアウトを繰り返す17歳の少年、ホールデンが呪詛のように紡ぎ続ける、偽善と虚飾にまみれた大人たちと、その予備軍たる同輩への、汚らしい誹謗の言葉──機関銃のように吐き出されるそれらの言葉は、『桃尻娘』の榊原玲奈や、『チェリー』のニコ・ウォーカーのそれを彷彿とさせる。作品の基本的性格を単純化して言えば、子供の夢と大人の現実との衝突ともいえるだろう。いつの世にも、どこの世界にもある不可避的現象だ。純潔を愛する子供の感覚と、社会生活を営むために案出された大人の工夫との対立。子供にとって、夢を阻み、これを圧殺する力が強ければ強いほど、それを粉砕しようとする反撥力は激...【名作】ライ麦畑でつかまえて【再読】

  • 民主主義ってなんだ?、民主主義は止まらない

    2000年代終わりから2010年代にかけて活性化した、反貧困、反原発、反安保法制の運動は、非階層性の水平的なネットワーキングを特徴とする「新しい社会運動」であった。先人が構築した民主主義を継承し、未来世代にバトンを渡す──その理想に燃えた若者たちが、民主主義と立憲主義の理念と内実を問いながら、ネットワークのノードとしての役割を果たし、安保法制に対抗する情宣、デモ等の活動を展開していく。高橋源一郎さん、内田樹さん等、1960-70年代の社会運動に参画した先行世代の、若者たちへ注ぐまなざしがとてもあたたかい。高橋源一郎・SEALDs,2015,民主主義ってなんだ?,河出書房新社.(2.4.25)安倍政権の暴走に若者が立ち上がった。この国の未来を諦めないために。自由と民主主義を実現する社会に向けた新たなマニフェ...民主主義ってなんだ?、民主主義は止まらない

  • 社会を変えるには

    小熊英二,2012,社会を変えるには,講談社.(2.3.25)現代日本において「社会を変える」とはどういうことなのか?歴史的、社会構造的、思想的に考え、新しい可能性を語る500ページ。〈私はしばしば、「デモをやって何か変わるんですか?」と聞かれました。「デモより投票をしたほうがいいんじゃないですか」「政党を組織しないと力にならないんじゃないですか」「ただの自己満足じゃないですか」と言われたりしたこともあります。しかし、そもそも社会を変えるというのはどういうことでしょうか。〉(「はじめに」より)いま日本でおきていることは、どういうことか?社会を変えるというのは、どういうことなのか?歴史的、社会構造的、思想的に考え、社会運動の新しい可能性を探る大型の論考です。社会変動、民主主義、社会運動の変容について、史実に...社会を変えるには

  • 私に萌える女たち

    米澤泉,2010,私に萌える女たち,講談社.(2.2.25)一九七〇年に産声をあげた女性グラビア・ファッション誌は、二〇一〇年で四〇歳になった。その女性誌に先導されて、大きく生き方を変えてきた日本の女性たち。恋愛・仕事・結婚・出産・美貌―女が望むすべてを手に入れて、強く美しく生きる、たとえば黒田知永子、松田聖子や黒木瞳。もちろん、ごくごく普通の女たちも。二一世紀のポスト・モダンガールの生き方を女性誌の変遷を通して分析する。1970年代以降の女性誌の変遷をたどりながら、女性の価値観とライフスタイルの変容を分析する。キーワードは、「私萌え」。夫も子どもも「いつまでもきれかわいい私」を演出する道具でしかない。「子道具」。笑このように、四〇年の歳月を経て、女性たちは結婚も仕事も出産も美貌も、すべてをあきらめなくな...私に萌える女たち

  • 砂に埋もれる犬、インドラネット

    桐野夏生,2021,砂に埋もれる犬,朝日新聞出版.(1.31.25)貧困と虐待の連鎖――。母親という牢獄から脱け出した少年は、女たちへの憎悪を加速させた。ジャンルを超えて文芸界をリードする著者の新たな傑作。予定調和を打ち砕く圧倒的リアリズム!小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。母親の亜紀は刹那的な欲望しか満たそうとせず、同棲相手の男に媚びるばかりだ。そんな最悪な環境のなか、優真が虐待を受けているのではないかと手を差し伸べるコンビニ店主が現れる――。ネグレクトによって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。その乾いた心の在りようを物語に昇華させた傑作長編小説。人は、虐待を受けて育った子どもが、逆境を乗り越えて、真っ当な人生を送る、そんなストーリーを...砂に埋もれる犬、インドラネット

  • 妊娠したら、さようなら──女性差別大国ニッポンで苦しむ技能実習生たち

    吉水慈豊,2024,妊娠したら、さようなら──女性差別大国ニッポンで苦しむ技能実習生たち,集英社インターナショナル.(1.31.25)なぜ、技能実習生の赤ちゃん遺棄事件は続くのか――。妊娠を理由に職を追われ、帰国させられる外国人の労働者たち。ベトナム人を支援する女性僧侶が、妊婦の悲しみと苦しみに寄り添った記録を綴る。ベトナム人の「失踪」が相次ぎ、「奴隷労働」と国際的に批判された外国人技能実習制度。その廃止は決まったけれど、近年は技能実習生が孤立出産に追い込まれ、赤ちゃんの死体を遺棄する事件が立て続く。どうして「悲劇」は繰り返されるのか?新制度が始まれば、もう起きない?マタハラが許されないこの時代、まるで妊娠したことが罪であるかのように仕事をやめさせられ、日本から追い出される数多くのベトナム人女性たち。寄る...妊娠したら、さようなら──女性差別大国ニッポンで苦しむ技能実習生たち

  • 「ふつうのLGBT」像に抗して──「なじめなさ」「なじんだつもり」から考える

    森山至貴,2024,「ふつうのLGBT」像に抗して──「なじめなさ」「なじんだつもり」から考える,青土社.(1.30.25)「もうLGBTなんてふつう」って言っておけばいいと思ってない?「ゲイコミュニティ」になじめないゲイという立場に留まることから見えてくる、うわべだけのセクシュアルマイノリティ理解を脱するための処方箋。わりと簡単なことを難解な言葉で言い表そうとすることにより、読む側の思考が切断されてしまう難はあるものの、マイノリティに一見配慮しているかのような言説の偽善、マイノリティが隔離されてしまう「居場所」というゲットーの息苦しさ等、よく考え抜かれて指摘されているように思える。「わたしはわたしでしかない」のに、ゲイ、トランス等のカテゴリーに回収されてしまうことへのイライラ、怒りが、ビシバシ伝わってく...「ふつうのLGBT」像に抗して──「なじめなさ」「なじんだつもり」から考える

  • クロスオーバーイレブン

    いやいやいや、なんとも懐かしい。クロスオーバーイレブン1986(1986/05/某日)「真夜中のコーヒーブレイク(?)」NHK-FMまだまだ音源が高価な希少品で、FM雑誌の番組表を見て、お目当ての楽曲をカセットテープにせっせと録音していた、あの時代。パイオニア、ソニー、ダイアトーン(三菱)、トリオ、オーレックス(東芝)、サンスイ等々、幾多のメーカーがこぞってオーディオ機器を量産していた、あの時代。深夜のFM放送は、居間にあったパイオニアのオーデイオ機器ではなく、もっぱら自室のラジオにかじりついて聴いていた。「クロスオーバーイレブン」の語り手は、津嘉山正種さん。多感であったあの頃の自分を久しぶりに思い起こして感傷に浸るwあの頃のラジカセから流れる音楽の、なんと眩しかったこと。自我が音に乗って溶け出して宇宙に...クロスオーバーイレブン

  • メメント・モモ──豚を育て、屠畜して、食べて、それから

    八島良子,2024,メメント・モモ──豚を育て、屠畜して、食べて、それから,幻戯書房.(1.29.25)そこに理由を見出すのは、きっと人が生きやすくなるためでしかない。なぜこのようなことをするのか、命懸けで考えていきたい。コロナ禍の瀬戸内海・百島。愛豚と向き合った333日の記録。行政と折衝を重ね、どう屠ったか。アーティストの八島さんは、子豚を貰い受け、約一年、200kgを超すまで育て上げて、屠殺し、肉を食らう。人は、通常、ペットを食べることはできない。「仲間は食べてはいけない」という禁忌は、「近親者とは性交してはいけない」というインセスト・タブーともども、普遍的なものであるが、八島さんは、あえて、この禁忌を犯す。八島さんは、自らの月経痛についてたびたび言及している。食べ、飲み、排泄するモモの世話をする八島...メメント・モモ──豚を育て、屠畜して、食べて、それから

  • HemiSync

    自室で流す音楽は、あいかわらず、ロック、レゲエ、ジャズのジャンルからアーティスト/アルバムごとに再生しているんだが、久しぶりに、数日前から、夜間、HemiSyncを流している。HemiSyncは、瞑想し、深層意識にアクセスして、変性意識状態を実現するための音楽だ。HemiSyncCosmicConsciousness RelaxingMusicwithHemi-Sync®FrequenciesforExpandedAwareness#binauralうーん、目をつぶってヘッドフォンかイヤホンで聴いたら、効果あるのかもしれないけど、もっぱら、なからリスニングなんで、変性意識に到達するなんて、どうも無理っぽい。でも、まったく耳障りでなく聞き流せる音なんで、受験や資格取得の勉強の環境音楽としては良いのかもしれな...HemiSync

  • 日本の文脈,現代霊性論

    内田樹・中沢新一,2012,日本の文脈,角川書店.(1.28.25)『日本辺境論』の内田樹と、『日本の大転換』の中沢新一。野生の思想家がタッグを組み、いま、この国に必要なことを語り合った渾身の対談集。アタマの切れるお二人なだけに、文句なしにおもしろい。丁々発止というより、論点、話題があっちこっちに飛んで──それが「おばさん」的なのだそうだがポリコレ的にそれはまずいと思うぞ──わけわかめになりそうになりながら、共鳴、共感するほかない、ふわっとした結論に着地する。内田さんの、贈与=人間始原論には、心底、共鳴する。内田(前略)すべての人間的営為は、突き詰めれば、「贈与と反対給付」によって構成されている。労働もそうなんです。労働は労働するに先立って、すでに贈与を受けたことに対する返礼なんです。等価物の交換じゃない...日本の文脈,現代霊性論

  • 最終講義──生き延びるための六講、街場の憂国論

    内田樹,2011,最終講義──生き延びるための六講,技術評論社.(1.27.25)人間はどのように欲望を覚えるのか、どうやって絶望するのか、どうやってそこから立ち直り、どうやって愛し合うのか…。2011年1月22日、神戸女学院大学で行なわれ、多くの人々に感銘を与えた「最終講義」を含む、著者初の講演集。超少子化・超高齢化時代を迎えて日本の進むべき道は?学びのスイッチを入れるカギはどこにある?窮地に追いつめられた状況から生き延びる知恵とは?…いまを生きるための切実な課題に答える。学問の楽しさというものは、自らの知性──脳と身体が最高のパフォーマンスを達成し、自らを縛り付ける常識、認識枠組み、価値前提を自ら打ち壊すことにある。(前略)どうやったら学びのモチベーションを高く維持できるか、そのためには使えるものは全...最終講義──生き延びるための六講、街場の憂国論

  • スムージーとフレンチトースト

    スムージー。いちご、ブルーベリー、バナナ、ハチミツ、牛乳をミキサーにかけて出来上がり。フレンチトースト。両方とも、簡単にできて、おいしい。スムージーとフレンチトースト

  • 貴様いつまで女子でいるつもりだ問題

    ジェーン・スー,2014,貴様いつまで女子でいるつもりだ問題,幻冬舎.(1.26.25)未婚で子なしの女の人生、それもまた悪くはない──このジェーン・スーさんといい、酒井順子さんといい、彼女たちは、アラサー、アラフォー世代シングルの背中をポンと叩いて励ましてくれる頼もしい存在だ。刺すような男の視線から逃れられるアラサー以降は、女性にとって、なんて生きやすいのだろう──そんな実感が、鮮度の高いネタとともに繰り出される軽妙洒脱な筆致から伝わってくる。目次貴様いつまで女子でいるつもりだ問題女子会には二種類あってだなていねいに暮らしオブセッション私はオバさんになったが森高はどうだ三十路の心得十箇条エエ女発見や!カワイイはだれのもの?メガバイト正教徒とキロバイト異教徒の絵文字十年戦争隙がないこと岩の如しファミレスと...貴様いつまで女子でいるつもりだ問題

  • ナニカアル、残虐記、リアルワールド

    桐野夏生,2010,ナニカアル,新潮社.(1.23.25)昭和十七年、南方へ命懸けの渡航、束の間の逢瀬、張りつく嫌疑、そして修羅の夜。波瀾の運命に逆らい、書くことに、愛することに必死で生きた一人の女を描き出す感動巨編の誕生。女は本当に罪深い。戦争に翻弄された作家・林芙美子の秘められた愛を、桐野夏生が渾身の筆で灸り出し、描き尽くした衝撃の長篇小説。評伝小説と呼ぶには、あまりに脚色、創作の部分が大きく、これは、作家、林芙美子の、「こうであった、ありえたかもしれない」人生を描いた、フィクションとして読むべきものであろう。一気に読ませる筆力はさすがというほかない。「ナニカアル」(桐野夏生)−−作家・林芙美子の大いなる謎桐野夏生,2004,残虐記,新潮社.(1.24.25)失踪した作家が残した原稿。そこには、二十五...ナニカアル、残虐記、リアルワールド

  • 「ふつう」の私たちが、誰かの人権を奪うとき──声なき声に耳を傾ける30の物語

    チェ・ウンスク(金みんじょん訳),2024,「ふつう」の私たちが、誰かの人権を奪うとき──声なき声に耳を傾ける30の物語,平凡社.(1.24.25)「一縷の望みにかける思いで電話しました。どうか助けてください」読み書きができず告訴状を提出できない老齢の囚人、精神病院に閉じ込められた外国人労働者、人望が厚い上司から受けた性暴力、コーチの体罰に耐えるスポーツ選手……韓国・国家人権委員会で働く調査官のもとへ届く、悔しさを抱えた人々の訴え。人権を守るために、私たちはいったい何ができるのか?現役の調査官が出会った人々の姿を描く、心揺さぶるノンフィクション。「時に裏切られ、騙されても、市井の人々の痛みと悲しみに寄り添う。人権とは、人間の尊厳とは何かを何度も問い直しながら」──望月衣塑子さん(ジャーナリスト)法律と制度...「ふつう」の私たちが、誰かの人権を奪うとき──声なき声に耳を傾ける30の物語

  • 子どもを森へ帰せ──「森のようちえん」だけが、AIに置き換えられない人間を育てる

    宮台真司・おおたとしまさ,2024,子どもを森へ帰せ──「森のようちえん」だけが、AIに置き換えられない人間を育てる,ホーム社.(1.23.25)ニッポンの教育は、ここから――。いま「森のようちえん」という幼児教育のスタイルが、世界的に注目されています。いわゆる野外保育であり、子どもたちは大人の指示にただ従うのではなく、自然環境に誘われるままに自由に動き回ります。それには日本の里山の環境も、じつにフィットするのです。気候変動や民主主義の機能不全など、国内外でさまざまな課題が立ち現れる中、「森のようちえん」の実践には、世の中を変える可能性があります。それはなぜでしょうか?本書は、社会学者の宮台真司さんと、教育ジャーナリストのおおたとしまささんによる師弟対談をもとに、葭田昭子氏、坂田昌子氏、関山隆一氏らユニー...子どもを森へ帰せ──「森のようちえん」だけが、AIに置き換えられない人間を育てる

  • 書いてはいけない、マンガ 誰も書かない「真実」 日航123便はなぜ墜落したのか、官僚生態図鑑

    『書いてはいけない』では、ジャニー喜多川による1,000人近い少年への性加害とその隠蔽、財務省主導の超緊縮財政政策、そして自衛隊による日本航空123便撃墜(疑惑)と米国従属による日本経済の失速、以上が取り上げられている。『マンガ誰も書かない「真実」日航123便はなぜ墜落したのか』は、『書いてはいけない』第3章とほぼ同一の内容。『官僚生態図鑑』は、本来、非常に優れた資質、能力をもつキャリア官僚(財務省官僚を除く)が、フリンジ・ベネフィットを喪失したがゆえに官僚自らの利益にかなう愚かな政策を推進している現況を指摘する。わたしとしては、ほとんどすでに知っていることばかりであったが、このような極めて真実に近い重大なことがらが未だに広く知られていない事実に戦慄する。森永卓郎,2024,書いてはいけない,三五館シンシ...書いてはいけない、マンガ誰も書かない「真実」日航123便はなぜ墜落したのか、官僚生態図鑑

  • 【旧作】女から生まれる(アドリエンヌ・リッチ女性論)【斜め読み】

    アドリエンヌ・リッチ(高橋茅香子訳),1990,女から生まれる(アドリエンヌ・リッチ女性論),晶文社.(1.21.25)地球上の人間はすべて女から生まれる―。そのことは、女を理想化し、母性神話をはびこらせる一方、女が自分自身の生き方を選択する自由を奪ってきた。男中心の社会のなかで、制度化された「母性」がかかえこむあらゆる問題を検討し、産む性としての女のからだとこころを解放する視点をあきらかにする。3人の息子の母としての体験を問いなおし、歴史的文献を緻密に分析して、「あたらしい古典」としていまや世界中で大きなインパクトをもって読みつがれる、リッチのフェミニズム「母性論」の名著。詩人、アドリエンヌ・リッチは、本書で、月経、性行為、妊娠、出産、授乳・・・自らの身体と向き合い、詩的言語を駆使して父権制に取り込まれ...【旧作】女から生まれる(アドリエンヌ・リッチ女性論)【斜め読み】

  • 文化系女子という生き方──「ポスト恋愛時代宣言」!

    湯山玲子,2014,文化系女子という生き方──「ポスト恋愛時代宣言」!,大和書房.(1.20.25)腐女子とリア充は両立できる!文学、コミック、音楽、ファッション、アート…気がつけば文化系女子ばかり!!!文化系・肉食系バイリンガルの湯山玲子が間違った文化系女子に喝ッ!!!世にはびこる文化系女子図鑑。現代文化と教養についてのキレキレのエッセイ。いま、いちばんイタいのは、カネと権力に執着する男と、そうした下賤な男に貢がれるのを最大の喜びとするクズ女だろう。人生を楽しむノウハウを知る賢い人は、野卑な欲望から脱却し、文化、教養の世界で遊ぶ。そして、そこで学んだ教養を、俗世での高貴な欲望に昇華させる。楽しく美しく生きるとはどういうことか、本書には、文化、教養を極めた人にしかわからない世界が展開されている。目次第1章...文化系女子という生き方──「ポスト恋愛時代宣言」!

  • 女子と貧困──乗り越え、助け合うために

    雨宮処凛,2017,女子と貧困──乗り越え、助け合うために,かもがわ出版.(1.20.25)原発事故母子避難、シングルマザー、キャバ嬢、育児ハラスメント、進学めざす生活保護の女性…くらしとたたかいの現場から。全編取材・書き下ろし。女性の貧困、そのさまざまなかたちが八つの事例に集約されている。たんに事例を紹介するわけではない、雨宮さんが貧困当事者と向き合い考えたことが、当事者の語りと交錯し、力強いメッセージを読む者に突きつける。孤立と冷笑のまえに屈することなく、声を上げること、クレームを申し立てること、そして連帯することの大切さをあらためて思い知る。目次1「自分が適当に育てられたから、自分の子どもはちゃんと育てたかった」―原発事故による自主避難者の加緒理さん。子ども時代の貧困と、事故後の困難2「不幸比べも我...女子と貧困──乗り越え、助け合うために

  • さよなら!ハラスメント──自分と社会を変える11の知恵

    小島慶子編著,2019,さよなら!ハラスメント──自分と社会を変える11の知恵,晶文社.(1.19.25)財務省官僚トップによるセクハラ問題、医学部不正入試問題、スポーツ界を揺るがす数々のパワハラ、アイドルに対する人権無視…。問題は至るところに噴出し、平成の終わり、私たちはやっと目覚めようとしている。そもそも、ハラスメントとはどういうことなのか?なぜハラスメントが起きるのか?ハラスメントのない社会にするために何が必要なのか?自分にできることは何か?ハラスメントと社会について考えるためのヒントを、小島慶子が11人の識者に尋ねる。ハラスメントの在りようは、いまの日本を写し出す鏡でもある。すこしずつ、前に進むために、みんなでいっしょに考えよう!2017-2018年の#MeToo運動以降、セクハラ、性暴力被害を受...さよなら!ハラスメント──自分と社会を変える11の知恵

  • 人間の土

    サン・テグジュペリ(田中稔也訳・挿絵),2024,人間の土,明月堂書店.(1.18.25)「精神の息吹が粘土に吹き渡ってこそ、人間は創りだされるであろう」サン=テグジュペリが『人間の土』を通じてしみじみと訴えたヒューマニティは、今を生きる若者たちの心に果たして届くだろうか。ぜひ届いて欲しい。繰り返される戦争と虐殺の時代に新たな連帯を模索し新世代に贈る祈りの書。まだ飛行機が危険極まりない存在であった時代、サン・テグジュペリは、定期郵便機のパイロットとして、数多くの生死の危険に身を晒した。墜落死した友を悼み、サハラ砂漠に不時着し死に直面した自らの経験を回想する。生命を蕩尽する戦争を憎む一方で、たんなる土くれに終わらぬべく、生死を賭けた飛行に、生命の炎を燃焼させる。話し言葉に近い、思い切った訳文が見事だ。目次第...人間の土

  • 責任

    浅野皓生,2024,責任,KADOKAWA.(1.18.25)雪の深夜の当直中、刑事の松野徹は不審車両に遭遇し職務質問する。運転手の藤池光彦は急発進、徹は追跡するが車は交差点に突っ込み、光彦と通りかかった車の家族四人が死亡する大惨事となる。警察への批判が強まりかけたとき、光彦が事故直前に強盗致傷事件を起こしていたと判明、非難は遺族に集中した。冤罪を疑う光彦の両親から再捜査を嘆願された徹は、自責の念に誘われるように引き受けてしまう。新事実など出てきようがない、はずだったが―。第44回横溝正史ミステリ&ホラー大賞優秀賞受賞作。第一章では、過去の事件の真相を追う刑事、松野徹が主人公であるが、唐突に徹は死に、第二章では、徹の娘、莉帆が主人公となる。そして、事件の裏に、妹を性虐待された兄、藤池光彦の復讐劇があったこ...責任

  • 苦情はいつも聴かれない

    サラ・アーメッド(竹内要江・飯田麻結訳),2024,苦情はいつも聴かれない,筑摩書房.(1.17.25)「美しく書かれ、すっかり惹きこまれた。まさに今、私たちに必要なテキスト。」――アンジェラ・Y・デイヴィス「感動的であり、連帯の源でもある。抗議し、変化のために闘う勇気を与えてくれる。」-ジル・クロージャー、教育社会学「強くお薦めする。上級学部生から教員、専門家まで。」――『チョイス』誌「大学における権力とその濫用についての、慎重かつ洗練された分析。」-バハラク・ユセフィ、カレッジ&リサーチ・ライブラリー組織内のハラスメント、性差別、人種差別に対して声を上げた人々は何を経験するか。本書では大学に苦情を訴えた学生や教授陣など60名以上への調査をもとに、組織・制度・権力が苦情を阻止し無力化するメカニズムを解き...苦情はいつも聴かれない

  • 自分を傷つけることで生きてきた──自傷から回復するための心と体の処方箋

    村松英之,2024,自分を傷つけることで生きてきた──自傷から回復するための心と体の処方箋,KADOKAWA.(1.17.25)学生のうち10人に1人が自傷経験がある時代。なかなか自傷から抜け出せず、大人も自傷する傾向にある。しかし、社会的には自傷に対する偏見もあり、たとえ回復しても友人や家族に言い出せなかったり、傷を隠しながら生きなければならない。著者の村松英之は形成外科医としてリストカットの患者の治療を行いながら、2022年には、日本自傷リストカット支援協会を設立。患者のサポートのほか、医師への啓蒙活動を行ってきた。本書は、当事者へのインタビューを通して、心と体の守り方を紹介する。自傷はいまを耐え抜くための唯一の方法、なかったことにされる「大人の自傷」、回復後こそ大きくなる「傷跡の問題」。大丈夫、あな...自分を傷つけることで生きてきた──自傷から回復するための心と体の処方箋

  • 予告された殺人の記録

    ガブリエル・ガルシア=マルケス(野谷文昭訳),1997,,新潮社.(1.16.25)町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた幻想とも見紛う殺人事件。凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。表紙の絵は、ジェームズ・アンソールの『仮面の中の自画像』。アンソールは、小学生のときに美術館で見て衝撃を受けた画家だ。そのアンソールの絵にふさわしい、禍々しい、ある殺人事件の記録が本書である。創作よりも、1951年に実際に起きたルポルタージュ寄りに書かれた作品であるので、ガル...予告された殺人の記録

  • 百年の孤独

    ガブリエル・ガルシア=マルケス(鼓直訳),2024,百年の孤独,新潮社.(1.15.25)世界46言語に翻訳され、5000万部を売り上げている世界的ベストセラー。宿業を運命づけられた一族の、目も眩む百年の物語。1820年代からの100年間の、マコンドという地でのブエンディア一族の盛衰を描く。入植、内乱、バナナ農園労働者の虐殺、古屋敷をさまよう死者の霊、150年を生きる老婆・・・おびただしい数の人物が現れ、奇矯な人生を生き、死んでいく。リアルな世界にありえないできごとが挿入され、現実と空想の境界が次々に破壊されていく。マジック・リアリズムの傑作だ。ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』読み解き支援キット池澤夏樹制作百年の孤独

  • 愛着障害と複雑性PTSD──生きづらさと心の傷をのりこえる

    岡田尊司,2024,愛着障害と複雑性PTSD──生きづらさと心の傷をのりこえる,SBクリエイティブ.(1.14.25)親との不安定な愛着を抱えた人は、未解決な心の傷である『愛着トラウマ』に苦しんでいる人が少なくない。深刻な虐待だけでなく、心理的な支配を長期にわたって受けつづけ、主体性を侵害されることで、「複雑性PTSD」を生じてしまうのだ。本書では、愛着障害のなかでも、愛着トラウマとそのもっとも深刻な状態である複雑性PTSDについて解説するとともに、克服の極意と最新アプローチをわかりやすく紹介する。愛着障がいと複雑性PTSD。主に親による不適切な関わりが愛着障がいにつながり、障がい当事者は、安全基地が欠落していることから、さらなる虐待や暴力の被害を受けやすくなり、愛着障がいに加えて複雑性PTSDを負ってし...愛着障害と複雑性PTSD──生きづらさと心の傷をのりこえる

  • 瞳のなかの幸福、私たちの望むものは

    小手鞠るい,2019,瞳のなかの幸福,文藝春秋.(1.13.25)カタログ会社で働く35歳の編集者、妃斗美。婚約を破棄された過去を持つ彼女は、これからひとりで生きていくために、大きなものを買って、小さなものを拾った。手に入れたふたつの“幸福”は、彼女に何を与え、何を奪っていったのか。弟から「早く結婚しろ」と無神経なおせっかいを受ける主人公、妃斗美。妃斗美は、2つの大切なものを手に入れる。自分の家とねこ。こんな小さな生き物に、こんなにも大きな力が宿っているなんて。これはマジックだ。これは愛のマジックだ。こんなにも小さくて軽くて、ふわふわしててあたたかくて、やんちゃで愛情深くて、野性味たっぷりの美しい生き物がただそばにいてくれるだけで、人はこんなにも満たされて、こんなにも幸せになれるものなのだ。これが魔法でな...瞳のなかの幸福、私たちの望むものは

  • 天使に見捨てられた夜 (新装版)

    桐野夏生,2017,天使に見捨てられた夜(新装版),講談社.(1.12.25)AVでレイプされ、失踪した一色リナの捜索依頼を受けた村野ミロは、行方を追ううちに業界の暗部に足を踏み入れた。女性依頼人が殺害され、自身に危険が及ぶ中、ようやくつかんだリナ出生の秘密。それが事件を急展開させた…。乱歩賞受賞直後に刊行された圧巻の社会派ミステリー。「ミロシリーズ」第2弾!女性探偵、ミロが主人公のハードボイルド小説シリーズ、第二作。ろくでもない男への情愛に自らを傷つけながら、隣人のゲイ、「トモさん」との友情を育むミロのこころの成長が印象に残る。最後は、あっと驚くような結末に至る。極上のサスペンスが味わえる作品だ。天使に見捨てられた夜(新装版)

  • ポリティコン 上・下

    桐野夏生,2014,ポリティコン上・下,文藝春秋.(1.10.25)上理想社会の実現を目指し、東北の寒村に建設された唯腕村は、もはや時代遅れとなったユートピア思想の残滓である。村の人間関係に倦み、強烈に女を求める青年・高浪東一は、謎の男と村に流れ着いた美少女・マヤを我がものにしようともがき、自らの運命を狂わせてゆく。理想郷を舞台に繰り広げられる、絶望郷のごとき愛憎劇!下村の理事長となった東一は、危険なビジネスに手を染め、マヤとも愛人契約を結ぶ。だが、心の渇きは癒されず、あるまじき手段で関係を断ち切ってしまう。十年の後、都会の片隅に沈んだヤマは、憎むべき東一の成功を知る。再会した二人を待ち受けるのは、破滅か新天地か―。性愛の暗部を容赦なく抉った衝撃作!本作の主な舞台である唯腕村は、武者小路実篤等による「新し...ポリティコン上・下

  • 家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか

    アンジェラ・サイニー(道本美穂訳),2024,家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか,集英社.(1.10.25)《各界から絶賛の声、多数!》家父長制は普遍でも不変でもない。歴史のなかに起源のあるものには、必ず終わりがある。先史時代から現代まで、最新の知見にもとづいた挑戦の書。――上野千鶴子氏(社会学者)男と女の「当たり前」を疑うことから始まった太古への旅。あなたの思い込みは根底からくつがえる。――斎藤美奈子氏(文芸評論家)家父長制といえば、“行き詰まり”か“解放”かという大きな物語で語られがちだ。しかし、本書は極論に流されることなく、多様な“抵抗”のありかたを丹念に見ていく誠実な態度で貫かれている。――小川公代氏(英文学者)人類史を支配ありきで語るのはもうやめよう。歴史的想像力としての女性...家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか

  • なぜ働いていると本が読めなくなるのか

    三宅香帆,2024,なぜ働いていると本が読めなくなるのか,集英社.(1.9.25)【人類の永遠の悩みに挑む!】「大人になってから、読書を楽しめなくなった」「仕事に追われて、趣味が楽しめない」「疲れていると、スマホを見て時間をつぶしてしまう」……そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないか。「仕事と趣味が両立できない」という苦しみは、いかにして生まれたのか。自らも兼業での執筆活動をおこなってきた著者が、労働と読書の歴史をひもとき、日本人の「仕事と読書」のあり方の変遷を辿る。そこから明らかになる、日本の労働の問題点とは?すべての本好き・趣味人に向けた渾身の作。日本人の読書と労働の歴史を読み解くユニークな論考。まあまあおもしろかったのだけど、長時間労働に縛り付けられたら、とてもとても本を読む余裕などもて...なぜ働いていると本が読めなくなるのか

  • 引き裂かれた自己──狂気の現象学

    R.D.レイン(天野衛訳),2017,引き裂かれた自己──狂気の現象学,筑摩書房.(1.8.25)世界から隔絶されているように感じられ、絶望的な孤独のなかで自分自身が分断されていく―統合失調症とはそうした病である。しかし、患者の世界に徹底的に寄り添い、彼らの声に真摯に耳を傾けていくなかでみえてくるのは、苛烈な現実に身を置かざるをえなかったひとりの人間が、それでもなんとか生きようと苦闘する、その姿である。従来の精神医療のあり方に疑問を抱き、反精神医学運動の旗手となった異才の精神科医R.D.レイン。その主著にして、ドゥルーズ=ガタリらの現代思想や、今日のサブカルチャーにも多大な影響を与えつづける古典的名著。統合失調症の治療となると、もっぱら抗精神病薬の処方である昨今であるが、オープンダイアローグ、妄想・幻覚・...引き裂かれた自己──狂気の現象学

  • ユリゴコロ

    沼田まほかる,2014,ユリゴコロ,双葉社.(1.7.25)ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題された4冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか―。絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!各誌ミステリーランキングの上位に輝き、第14回大藪春彦賞を受賞した超話題作!快楽殺人に取り憑かれた女性、彼女は自分の母なのか?末期がんの父親をもつ主人公は、快楽殺人とその衝動を綴ったノートを発見し、読み耽る。父親のトラウマとなった男の子の死は、快楽殺人者、母の所業であった。そうとも知らず、父は母と一緒になり家族をつくる。幾重にも張り巡らされたできごとの伏線、それが新たなできごとによって徐々につ...ユリゴコロ

  • 海を抱く──BAD KIDS

    村山由佳,2003,海を抱く──BADKIDS,集英社.(1.7.25)超高校級サーファーであり誰とでも寝る軽いやつと風評のある光秀。一方、まじめで成績優秀、校内随一の優等生の恵理。接点のほとんどない二人がある出来事をきっかけに性的な関係をもつようになる。それは互いの欲望を満たすだけの関わり、のはずだった。それぞれが内に抱える厳しい現実と悩み、それは体を重ねることで癒されていくのか。真摯に生きようとする18歳の心と体を描く青春長編小説。二人の主人公、恵理と光秀──高校生の女の子と男の子の繊細なセクシュアリティのありようが、とてもリアルに描かれている。大人の鑑賞に耐えられる青春小説の傑作だ。過去の記憶と重ね合わせ、甘酸っぱく切ない感傷に浸れるかもしれない。海を抱く──BADKIDS

  • マタハラ問題

    小酒部さやか,2016,マタハラ問題,筑摩書房.(1.6.25)働く女性が妊娠・出産・育児を理由に退職を迫られたり、嫌がらせを受けたりする「マタニティハラスメント(マタハラ)」。労働局へのマタハラに関する相談は急増し、いまや働く女性の3人に1人がマタハラを経験していると言われている。本書は「NPO法人マタハラNet」代表による「マタハラ問題」の総括である。マタハラとは何なのか。その実態は、どのようなものなのか。当事者の生の声から問題を掘り下げる。以下は、小酒部さんが立ち上げたNPO、「マタハラNet」に寄せられた、マタハラ発言の数々である。「相談なしに妊娠するな」「堕ろす覚悟で働け」「妊娠するとわかっていたら、君なんか雇わなかった」「妊娠したの?迷惑だ」「あなたがどうなろうが私は知らない。妊娠は自己責任だ...マタハラ問題

  • 【旧作】お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門【斜め読み】

    若桑みどり,2003,お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門,筑摩書房.(1.6.25)コレット・ダウリングの『シンデレラ・コンプレックス』が刊行され、話題をよんだのは一九八二年。すでに二十年以上になるが、その間、「白雪姫」「シンデレラ」「眠り姫」などのプリンセス・ストーリーは、ますます大量に生産され、消費されている。大量に消費されるからその影響力も絶大である。本書では、ディズニーのアニメを題材に、昔話にはどんな意味が隠されているかを読み解く。いつの間にか思い込まされている「男らしさ」「女らしさ」の呪縛から、男も女も自由になり、真の男女共同参画社会を目ざす。若桑さんは、勤務先の女子大での授業、「ジェンダー文化論」にて、学生に、ディズニーのアニメ、「白雪姫」、「シンデレラ」、「眠り姫」を...【旧作】お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門【斜め読み】

  • 【旧作】性と愛の日本語講座【斜め読み】

    小谷野敦,2003,性と愛の日本語講座,筑摩書房.(1.6.25)「恋愛」という言葉が近代になってつくられたことはよく知られている。では「恋人」はどうか。徳川時代には「情夫・情婦」というのがあったが、それはどういう意味で使われたのか?「情欲」や「不倫」はいつ頃生まれたのか?また「逢い引き」は?本書では、『太陽の季節』『チャタレイ夫人の恋人』等の文学作品、各時代に流行った歌謡曲やマンガ等を材料に、時に外国語との比較を交えながら、性と愛にまつわる日本語の意味の由来や変遷をたどり、日本語の面白さを発見していく。色恋、セクシュアリティに関連する言葉、その変遷をたどる。小谷野さんは、冒頭、「パートナー」という言葉への違和感を吐露しているが、わたしも同じように感じてきた。パートナーという言葉には、「たんに排他的な性交...【旧作】性と愛の日本語講座【斜め読み】

  • マンゴーと手榴弾──生活史の理論

    岸政彦,2018,マンゴーと手榴弾──生活史の理論,勁草書房.(1.5.25)沖縄戦の最中に手渡された手榴弾と、聞き取りの現場で手渡されたマンゴー。「こちら側」と「あちら側」の境界線を超えて行き来する、語りと記憶と「事実」。ストーリーの呪縛から逃れ、孤独な人生について、過酷な世界について、直接語り合おう。「約束としての実在論」へ向けた、ポスト構築主義の新しい生活史方法論。構築主義の極北には、価値相対主義の断片、その集積のみが残る。調査対象者の語りがすべてかぎかっこに括られ、いかなる一般化、普遍化も禁欲されるとすれば、提示されるものは、個別的にして一回性の断片のみである。「構築されたもの」を削ぎ落としたあとに、それでも残る「本質」を希求する、というわけでもない。断片に宿る普遍性をできるだけ盛ることなく提示す...マンゴーと手榴弾──生活史の理論

  • 日本いまだ近代国家に非ず

    小室直樹,2015,日本いまだ近代国家に非ず,ビジネス社.(1.4.25)政治家の本分は、国民に最低生活、心身の安全、私有財産を保障、保全すべく、立法、既存法令の改正、廃止を行うところにあり、行政官僚の役割は、法令に則り細則を定め、公僕としてつつがなく法令を執行するところにある。ところが、日本では、政治家には立法の能力も意欲も欠落しており、官僚が、省益と自らの昇進をかけて、政治家を操り立法行為までをも担う。ないがしろにされるは、国民の生活、生命、財産、である。家産官僚制の残滓を引きずったまま、いまだ近代官僚制の鉄則さえ遵守されず、公益が官僚共同体の私益に蹂躙される現実が、小室政治学によって鮮やかに解き明かされている。目次プロローグ誤解だらけのデモクラシー理解第1章大いなる資質を具えた政治家とは―田中角栄だ...日本いまだ近代国家に非ず

  • 小室直樹 日本人のための経済原論

    小室直樹,2015,小室直樹日本人のための経済原論,東洋経済新報社.(1.3.25)稀代の社会科学者にして数多くのベストセラーを輩出した小室直樹氏。その経済論の代表的著作『小室直樹の資本主義原論』と『日本人のための経済原論』を合本して復刻。経済学の基本、日本経済、日本社会の問題点を、博覧強記の著者が古今東西の逸話を取り混ぜながら解説。目指すところは「あなた自身が経済学者になれ」。著者の数ある著作の中で、まず最初に手にしたい小室思想の入門書。『ハゲタカ』著者・真山仁による解説文掲載。『資本主義論』と『経済原論』の合本、総700ページ近い大著。現代経済学の最良のテキストであるとともに、資本主義の駆動原理、官僚制の逆機能等、経済を活性化あるいは沈滞させる社会的要因についての考察がひかる。小室先生の経済学には、社...小室直樹日本人のための経済原論

  • 【旧作】猫のいる日々、不思議な猫たち【斜め読み】

    大佛次郎,1994,猫のいる日々,徳間書店.(1.2.25)大佛先生ほど、たんなる猫好きにとどまらず、数多くの猫たちの福祉に貢献した人はいない。捨て猫に餌と寝場所を提供し、その数、つねに15匹前後、生涯に500匹ほどの猫の面倒を見たという。本作には、猫にまつわるエッセイと、猫の童話とが収録されているが、どれも猫好きには興趣が尽きない内容だ。ジャック・ダン、ガードナー・ドゾワ編(深町真理子・浅倉久志・酒井昭伸・田中一江・山口緑・小川隆・羽田詩津子ほか訳),1999,不思議な猫たち,扶桑社.(1.2.25)猫―ひとびとからこよなく愛されながら、冷酷な動物として忌み嫌われ、神としてあがめられるいっぽう、悪魔の手先として虐殺までされた、不思議な生きもの。最も身近な存在でありながら底知れぬ謎をもつ猫は、人間の想像力...【旧作】猫のいる日々、不思議な猫たち【斜め読み】

  • 【旧作】ネコのこころがわかる本、なぜ、猫はあなたを見ると仰向けに転がるのか?(キャット・ウォッチング1)【斜め読み】

    ネコの魅力は、徹底して自己本位で、けっして無条件では人間に媚びない点にある。ミャーと鳴いて、からだを擦り寄せてくるときは、ちゅーるをあげないといけないし、ツメ研ぎの上に寝転がるときは、おしりをぽんぽん叩いてやらないといけない。連綿と受け継がれてきた野生と、幼年期の社会化と人間との共生で培われてきた社交性、この両者の気まぐれな表出、これが最大のネコの魅力だ。地位獲得のための闘争と、その結果としての独裁者や社会的追放者が存在するのは、すべての動物種のなかでイヌとサル、それにヒトの社会だけである。ある社会集団に所属することによる利益は、すべての個体にとって平等というわけにはいかない。なぜなら、ヒトをも含む動物界において、生物学的にもっとも優れた社会が同時に民主的であるとはかぎらないからである。したがって、その社...【旧作】ネコのこころがわかる本、なぜ、猫はあなたを見ると仰向けに転がるのか?(キャット・ウォッチング1)【斜め読み】

  • 女性失格、九死一生

    小手鞠るい,2021,女性失格,文藝春秋.(12.31.24)女とは何か?人はどうやって女になっていくのか?岡山の片田舎に生まれた女の子が、性に目覚める。進学校に進み、京都の有名私立大学に進学。そこで男たちと次々に「共犯関係」を結んでいくが、同時に性の対象とされることにも息苦しさを感じていた。そこから逃れるために結婚をするが、それでも女という性から逃れることができず不倫にのめり込む。結局は離婚してしまい、ボロボロになり……。女という性をやめられず、女という性から逃れられない「生」の先には何が見えるのか?太宰治の『人間失格』を下敷きに、「女性が女性であることで覗きこむ深淵」を照らし出す意欲作。女という着ぐるみを身にまとって生きることの悲しみを、太宰治の『人間失格』になぞらえて描き出す。自らのジェンダーロール...女性失格、九死一生

  • 夜の谷を行く

    桐野夏生,2020,夜の谷を行く,文藝春秋.(12.30.24)山岳ベースで行われた連合赤軍の「総括」と称する凄惨なリンチにより、十二人の仲間が次々に死んだ。アジトから逃げ出し、警察に逮捕されたメンバーの西田啓子は五年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。しかし、ある日突然、元同志の熊谷から連絡が入り、決別したはずの過去に直面させられる。連合赤軍事件をめぐるもう一つの真実に「光」をあてた渾身の長編小説!1971-72年に連合赤軍が引き起こした「山岳ベース事件」。当時小学生だったわたしには、TVで中継される「あさま山荘事件」の印象だけが強烈に残ったが、12名の若者が「総括」のもとでリンチの果てに殺害された「山岳ベース事件」を、のちに、書物により知るところとなる。「山岳ベース」から逃げ出した西田啓...夜の谷を行く

  • とめどなく囁く

    桐野夏生,2019,とめどなく囁く,幻冬舎.(12.29.24)塩崎早樹は、相模湾を望む超高級分譲地「母衣山庭園住宅」の瀟洒な邸宅で、歳の離れた資産家の夫と暮らす。前妻を突然の病気で、前夫を海難事故で、互いに配偶者を亡くした者同士の再婚生活には、悔恨と愛情が入り混じる。そんなある日、早樹の携帯が鳴った。もう縁遠くなったはずの、前夫の母親からだった。『柔らかな頬』と同様の、とある失踪者をめぐるサスペンス長編小説。主人公、早樹の心理描写が実に繊細でつい感情移入してしまうことだろう。あまり劇的なことは起こらないのに、ぐいぐい物語世界に没入させる筆力は、さすがというほかない。とめどなく囁く

  • 柔らかな頬

    桐野夏生,1999,柔らかな頬,講談社.(12.28.24)「現代の神隠し」と言われた謎の別荘地幼児失踪事件。姦通。誰にも言えない罪が初めにあった。娘の失踪は母親への罰なのか。四年後、ガン宣告を受けた元刑事が再捜査を申し出る。三十四歳、余命半年。死ぬまでに、男の想像力は真実に到達できるか。ミステリーとしてもロードノベルとしても、最高の作品。カスミの娘、有香の失踪の真相は最後までわからずじまいだが、カスミの娘探しに伴走する末期がんの元刑事、内海の夢というかたちで、いくつかの蓋然的な真相が語られていく。謎解きと大団円を期待する読者は、「藪の中」を彷彿とさせる虚構に宙吊りにされ、見事に期待を裏切られる。大胆な構成と筆力に圧倒される長編小説だ。柔らかな頬

  • 顔に降りかかる雨(新装版)、奴隷小説

    桐野夏生,2017,顔に降りかかる雨(新装版),講談社.(12.27.24)親友の耀子が、曰く付きの大金を持って失踪した。被害者は耀子の恋人で、暴力団ともつながる男・成瀬。夫の自殺後、新宿の片隅で無為に暮らしていた村野ミロは、耀子との共謀を疑われ、成瀬と行方を追う羽目になる。女の脆さとしなやかさを描かせたら比肩なき著者の、記念すべきデビュー作。江戸川乱歩賞受賞!探偵、村野ミロが活躍するシリーズもの、第一弾小説。桐野さんは、女性を主人公とするミステリー小説としての展開のなかでも、男の粗暴さ、暴力性をさり気なく描き出すことを忘れない。女、男に限らず、人間の底知れぬ悪意についても。東京-冷戦終結後のベルリン、ネオナチ、SM、ネクロフィリア等々、ストーリーのなかに散りばめられたモチーフもアクセントして効いている。...顔に降りかかる雨(新装版)、奴隷小説

  • ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?

    仲正昌樹,2024,ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?,ベストセラーズ.(12.26.24)人間は、自分が思っているほど理性的ではないし、公共的意識も高くない。現代人はいま恐怖心と猜疑心に満たされており、「友/敵」思考が過激化する社会に生きている。“ネットリンチ”が当たり前に行われているSNS空間はまさにそうであろう。「敵」を破壊し尽くさないと気が済まない人たちが蔓延している。何がきっかけで、本当の全体主義体制へと変貌するか分からない。そんな現代の闇を直視し抗うための“知恵と教養”が詰まった必読書である。ナチス、統一教会、新型コロナウィルス等にまつわる自由権の侵害について再考する論評集。たしかに、脊髄反射的なキャンセル、吊し上げ、敵意をむき出しての排除に対しては嫌悪するが、キャンセルカルチャーへの...ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?

  • 不審なチラシ

    マンションのポストに不審なチラシが入っていた。あたかもマンション共有部分のネット回線を運用する事業者であるかのように騙って、各世帯内のネット回線を安く提供しますよという旨の文書。調べてみたら、「アンサー合同会社」というau回線を仲介する事業者が配布したチラシだった。「アンサー合同会社」は福岡市南区に法人登記されているようだが、事業内容、資本金、役員構成はもちろんのこと、オフィスの所在地、電話番号も不明。そもそも、チラシでは「ライフライン事務局」としか名乗っておらず、会社名さえ明記していない。管理組合の役員という立場上、無視するわけにもいかず、管理組合のライングループの注意喚起のメッセージを投下。数時間後、注意喚起を促す掲示がマンション内に貼り出された。対応が鬼速い。政府がガソリンなどの補助金を削減したため...不審なチラシ

  • 憲法とは国家権力への国民からの命令である

    小室直樹,2013,憲法とは国家権力への国民からの命令である,ビジネス社.(12.25.24)さすが博覧強記の小室先生、現代史上の実に細かな事実をもとに、目からウロコの憲法論が展開されている。小室先生は、憲法のなかでも第十三条がもっとも重要であるとする。すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。「幸福追求」権には私有財産保全のそれが含まれるが、26年にわたって超低金利政策により国民の資産を毀損し続けた政府は、憲法に違反してきたことになる。戦後教育批判──近代教育の本旨はナショナリズム高揚のためにあるという主張は承服しかねるが、立憲主義の要諦を学べるとても良い本である。目次第1章失われてい...憲法とは国家権力への国民からの命令である

  • 【旧作】アジア・女・民衆 (アジアが見えてくる1)【斜め読み】

    松井やより,1987,アジア・女・民衆(アジアが見えてくる1),新幹社.(12.25.24)若いとき、松井さんの著作をとおして、アジア、とくにそのグローバルサウスにおける貧困、環境破壊、性と労働力の搾取といった問題群についてたくさん学ばさせてもらった。本書は、講演録であるが、タイ、ビルマ(現ミャンマー)、フィリピン、パキスタン、バングラディシュ等でのからだをはった取材、調査、そこで得られた経験と知識にもとづく、わたしたちグローバルノースに生きる者たちへ突きつけられる問いは鋭く、手厳しい。グローバルサウスにおける悲惨はいまも変わらない。わたしは、NGOに寄付することしかしていないが、ほかにできることはないか、模索していきたい。  松井やよりさんについて アジア女性資料センター  【旧作】アジア・女・民衆(アジアが見えてくる1)【斜め読み】

  • 【旧作】誰のために子どもを産むか【斜め読み】

    青木やよひ編著,1985,誰のために子どもを産むか,オリジン出版センター.(12.23.24)青木さんは、1980-90年代に、エコフェミニズムの旗手として活躍されていた方だ。当時は、イヴァン・イリイチ等の産業社会、学校化社会、病院化社会批判が注目され、一方で、欧米のフェミニズムのように母性、専業主婦、性別役割分業への内省、批判に徹しきれなかった日本のフェミニズムにおいて、女性性なり女性の身体性なりを否定しない、といった風潮のなかで、エコフェミニズムが幅広い支持を集めたのであった。「男なみになる」ということは男なみに環境破壊や戦争に加担することである──そうした認識のもとで、妊娠、出産、子育て、介護といった労働を再評価する、それは、女性の身体性を肯定する価値観として受容されたのであった。2000年代には、...【旧作】誰のために子どもを産むか【斜め読み】

  • ひとりの午後に、みんな「おひとりさま」

    上野千鶴子,2010,ひとりの午後に,日本放送出版協会.(12.23.24)「箱入り」だった子ども時代から胸苦しさに満ちた金沢での青春期、「枯れた」学生だった京都での日々。東大に招ばれ、逆風に身を置きながら、いまは亡き両親や敬愛する友、教え子、そして自らの行く末をおもう・・・。潔くてほろ苦い「大人のための」エッセイ集。フェミニストの上野も稀代の論客の上野も知らない読者向けに書かれたエッセイ集。親、思春期の思い出、加齢等々、さまざまなテーマで軽やかに文章が紡がれている。厳選された言葉のみで語られる自己と他者、そして世界。爽やかな読後感が残る。目次1思いだすこと菫の香水墓ほか2好きなもの声夕陽ほか3年齢を重ねて青春うたほか4ひとりのいま佇まい儀式ほか上野千鶴子,2012,みんな「おひとりさま」,青灯社.(12...ひとりの午後に、みんな「おひとりさま」

  • 【旧作】リブとフェミニズム、権力と労働【斜め読み】

    叢書、『日本のフェミニズム』は、のちに、『新編日本のフェミニズム』として改版され、現在も入手可能である。女性が、もっぱら男性の性欲を解発する記号として客体化、商品化される問題も、介護、看護労働をはじめとする対人サービス労働が安く買い叩かれている問題も、現在もなお解消されていない。遅々として解消が進まない女性差別の帰結が、非婚化、超少子化であろうが、生命と心身の再生産労働を、市場の外部にある家族、とくに女性の無償労働に担わせてきたことのツケが一気に回ってきた感がある。このアンソロジーには、まだ未来に希望をもてた時代の、荒削りながら、自らの心身を道具化し搾取する家父長制社会に抗う女たちの思いが多数収められている。井上輝子・上野千鶴子・江原由美子編,1994,リブとフェミニズム(日本のフェミニズム1),岩波書店...【旧作】リブとフェミニズム、権力と労働【斜め読み】

  • 冒険の国、ローズガーデン(新装版)

    桐野夏生,2005,冒険の国,新潮社.(12.21.24)永井姉妹と森口兄弟は、姉と兄、妹と弟が同級生同士で、常に互いの消息を意識してきた。特に、弟の英二と妹の美浜は、強い絆で結ばれていた。が、ある日、一人が永遠に欠けた。英二が自殺したのだ。美浜は、欠落感を抱えたまま育った街に帰って来る。街はディズニーランドが建設され、急速に発展していた。そこで、美浜は兄の恵一に再会する。バブル前夜の痛々しい青春を描く文庫オリジナル。桐野さん、小説家キャリアごく初期の作品。物語は淡々と進む。あっと驚くようなできごとも展開もない。あとの桐野作品と比べれば少々退屈かもしれないが、桐野ワールドの元型を本作に見ることができる。桐野夏生,2017,ローズガーデン(新装版),講談社.(12.21.24)女探偵・村野ミロの濃密な人生を...冒険の国、ローズガーデン(新装版)

  • 【署名】大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表明します。【呼びかけ】

    大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表明します。無茶苦茶な判決です。賛同の署名をお願いします。【署名】大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表明します。【呼びかけ】

  • 真珠とダイヤモンド 上・下

    桐野夏生,2023,真珠とダイヤモンド上・下,毎日新聞出版.(12.20.24)上1986年春。二人の女が福岡の証券会社で出会った。一人は短大卒の小島佳那、もう一人は高卒の伊東水矢子。貧しい家庭に生まれ育った二人は、それぞれ2年後に東京に出ていく夢を温めていた。野心を隠さず、なりふり構わずふるまう同期、望月昭平に見込まれた佳那は、ある出来事を契機に彼と結託し、マネーゲームの渦に身を投じていく。下時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す…。冒頭、主人公の一人でホームレスの...真珠とダイヤモンド上・下

  • 魂萌え! 上・下

    桐野夏生,200,魂萌え!上・下,新潮社.(12.19.24)夫が突然、逝ってしまった。残された妻、敏子は59歳。まだ老いてはいないと思う。だが、この先、身体も精神も衰えていく不安を、いったいどうしたらいい。しかも、真面目だった亡夫に愛人だなんて。成人した息子と娘は遺産相続で勝手を言って相談もできない。「平凡な主婦」が直面せざるを得なくなったリアルな現実。もう「妻」でも「母」でもない彼女に、未知なる第二の人生の幕が開く。夫の愛人と修羅場を演じるなんて、これが自分の人生なのか。こんなにも荒々しい女が自分なのか。カプセルホテルへのプチ家出も、「あなたをもっと知りたい」と囁く男との逢瀬も、敏子の戸惑いを消しはしない。人はいくら歳を重ねても、一人で驚きと悩みに向き合うのだ。「老い方」に答えなんて、ない。やっぱり、...魂萌え!上・下

  • 【旧作】男流文学論【斜め読み】

    上野千鶴子・小倉千加子・富岡多恵子,1997,男流文学論,筑摩書房.(12.18.24)吉行淳之介、島尾敏雄、谷崎潤一郎、小島信夫、村上春樹、三島由紀夫ら、6人の「男流」作家の作品とそれらをめぐる評論を、当世“札付き”の関西女3人が、バッタバッタと叩き斬る!刊行当初から話題騒然となり、「痛快!よくぞいってくれた。胸がスッとした。」「こんなものは文芸論じゃないっ!」など、賛否両論、すさまじい論議を呼び起こしたエポックメーキングな鼎談。面白さ保証付。若いときからいだいてきた、男性作家が描く女性のセクシュアリティに対する違和感を、本書が見事に言語化してくれたことを思い起こす。そんな女、いねえよ男性作家が自らと女性という他者のセクシュアリティを描くとすれば、生殖を可能とするために創り上げられた奇妙奇天烈な性的ファ...【旧作】男流文学論【斜め読み】

  • 学校が自由になる日

    宮台真司・藤井誠二・内藤朝雄,2002,学校が自由になる日,雲母書房.(12.17.24)「理不尽さ」に覆われた学校システムと、学校共同体主義者による見えざる内面支配を解除し、自由な学校・自由な社会を実現するためのプログラムを大胆に提言する。「リベラリズム教育論」の決定版。崇高なる国家共同体であれ、ノリと空気に支配された学校の教室空間共同体であれ、個人の自由を圧殺することに変わりはない。いじめや理不尽な校則に象徴される学校空間の不自由から脱却するにはどうしたら良いのか、リベラリズムを擁護しつつ議論が展開されている。内藤さんの「学校リベラリスト宣言」は、『いじめの構造──なぜ人が怪物になるのか』所収の論考とほぼ同一の内容。目次学校の何が問題なのか二つの尊厳観日本的メンタリティの構造ほか少年犯罪と新少年法「コ...学校が自由になる日

  • いじめの構造──なぜ人が怪物になるのか

    内藤朝雄,2009,いじめの構造──なぜ人が怪物になるのか,講談社.(12.16.24)人間が「怪物」になるいじめは、なぜ生じ、蔓延するのか?いじめ論で注目を集める研究者が、そのメカニズムを語り尽くす。いじめに興ずる中学生たちに、個人の尊厳や人権を説いても無駄である。彼ら、彼女らは、法の外にある祝祭空間、ノリの世界のなかで、ノラない、ノリが悪い、場の空気を損なう対象を、いじめ尽くす。「悪い」とは、規範の準拠点としてのみんなのノリの側から「浮いている」とかムカツクといったふうに位置づけられることだ。自分たちのノリを外した、あるいは踏みにじったと感じられ、「みんな」の反感と憎しみの対象になるといったことが、「悪い」ことである。「みんなから浮いて」いる者は「悪い」。「みんな」と同じ感情連鎖にまじわって表情や身振...いじめの構造──なぜ人が怪物になるのか

  • 【旧作】生きるのがつらい。──「一億総うつ時代」の心理学、生きづらい時代の幸福論──9人の偉大な心理学者の教え【斜め読み】

    諸富祥彦,2005,生きるのがつらい。──「一億総うつ時代」の心理学,平凡社.(12.15.24)この国の年間自殺者はもう何年も三万人を超えている。誰もが自分は「軽うつ」ではないかと疑いはじめている。この時代には確かに、私たちの生きる意欲を奪う何かがある。生きるのがつらい。もう、前向きになんか生きられない。そんな閉塞感が漂う世の中で、自分の苦しみにうまく対処し、身近な人と支えあいながら生きていくには、どうすればいいのか。反ポジティブシンキングの思想で語る、「一億総うつ時代」の心の処方箋。生きづらさをもたらす社会的経済的要因を考えずに、「気はもちよう」を地で行くだけの心理操作はいただけないが、諸富さんが推奨する「脱同一化」は、たしかに有効な方法であるように思う。生きていくためには、いろいろなスキルが必要です...【旧作】生きるのがつらい。──「一億総うつ時代」の心理学、生きづらい時代の幸福論──9人の偉大な心理学者の教え【斜め読み】

  • 緑の毒

    桐野夏生,2014,緑の毒,KADOKAWA.(12.15.24)39歳の開業医・川辺。妻は勤務医。一見満ち足りているが、その内面には浮気する妻への嫉妬と研究者や勤務医へのコンプレックスが充満し、水曜の夜ごと昏睡レイプを繰り返している。一方、被害者女性たちは二次被害への恐怖から口を閉ざしていたがネットを通じて奇跡的に繋がり合い、川辺に迫っていく―。底なしの邪心の蠢きと破壊された女性たちの痛みと闘いを描く衝撃作。文庫オリジナルのエピローグを収録。本書の読みどころは、人間の卑小、卑劣さを一身に体現したかのような、連続レイプ魔、サイコパスの開業医、川辺の人物造形にあるだろうな。最後は極悪人が成敗されるという安心のオチであるが、ストーリーよりも、一人ひとりの体温さえも感じさせる、登場人物の心象風景の細やかな描写が...緑の毒

  • ハピネス、抱く女

    桐野夏生,2013,ハピネス,光文社.(12.13.24)結婚は打算から始まり、見栄の衣をまとった。憧れのタワーマンションに暮らす若い母親。おしゃれなママたちのグループに入るが、隠していることがいくつもあった。お互いのことを、「○○ママ」と呼び合う、ママ友カーストが気色悪いことこの上ない。見栄の張り合いにうつつを抜かす子持ち専業主婦たちのどす黒い心象風景が印象に残る。人間の醜悪な、微に入り細を穿つ心象風景を描くことについては、おおよそ桐野さんの独擅場である。桐野夏生,2015,抱く女,新潮社.(12.13.24)「抱かれる女から抱く女へ」とスローガンが叫ばれ、連合赤軍事件が起き、不穏な風が吹き荒れる七〇年代。二十歳の女子大生・直子は、社会に傷つき反発しながらも、ウーマンリブや学生運動には違和感を覚えていた...ハピネス、抱く女

  • DACとパワーアンプを直結しYellow Magic Children聴いて悶絶する

    ふと、思いついて、USBDACをパワーアンプに直結してみたら、音が激変。(通算二度目)一つ一つの音がよりクリアに、微粒子がふわーっと広がっていくかのような(どんなんやねん)音場に変わった。プライマーのプリアンプはクローゼットにしまった。オーディオセットがこれまた一段とシンプルになった。 で、久しぶりに、『YellowMagicChildren〜40年後のYMOの遺伝子』を聴く。YMC "YellowMagicChildren#01"LIVEMOVIE[DIGEST]やばい、やはり、巧い、巧すぎる。アンドロイドが弾いているかのような、正確無比なベースラインが心地よい。DAOKOの「在広東少年」、最高やな。夢見心地になる万華鏡のような音世界(どんなんやねん)に浸る。トム・ヨークの福岡公演に行かなかったのが悔や...DACとパワーアンプを直結しYellowMagicChildren聴いて悶絶する

  • 毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てるまで

    越田順子,2017,毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てるまで,彩図社.(12.12.24)子どもの頃から「妹なんだから我慢しなさい」と言われ続け、新婚生活も初めから母と同居、母との葛藤に気づかず味方になってくれなかった夫と別れることになった。母は私がいないと生きていけないと言ったから、母に尽くすことにした。望まれるがままに母と暮らすための家も建てた。給料もほとんど渡してきた。それなのに、母は遺言に、私が渡したお金で貯めた貯金を姉に渡すと書いた。私がやってきたことはすべて勝手にやったことだから自己責任だと言った。気がついたとき、私はもう子どもも産めない歳になっていた。私はなんのために生きてきたのだろう…。娘の生を否定し、娘婿を娘から奪って、あまつさえ娘の収入と資産を奪い尽くす毒母。不思議なのは、越田さんが、...毒母育ちの私が家族のしがらみを棄てるまで

  • わたしの神様

    小島慶子,2015,わたしの神様,幻冬舎.(12.11.24)TV局の「女子アナ」三人のあいだの、嫉妬、怨恨、憎悪を描く長編小説。小島さんがかつて身を置いていた世界であるだけに、人物造形がとてもリアルに仕上がっている。ここまで人間の卑小さ、意地汚さを描き尽くしたのは、お見事と言うほかない。なかなかにエグい。わたしの神様

  • パーソナリティ障害とは何か

    牛島定信,2012,パーソナリティ障害とは何か,講談社.(12.11.24)境界性、自己愛性、反社会性……。私たちはパーソナリティ障害とどう向き合うべきか。第一人者が豊富な症例をもとにその本質に迫る。「見捨てられ不安」を抱く境界性、尊大さの背後に別の人間像を隠し持つ自己愛性、「恥の心理」を抱える回避性……。精神科臨床の最前線に立つ著者が、豊富な症例をもとに、現代の病ともいえるパーソナリティ障害の心理構造から周囲の接し方まで丁寧に紹介する一冊。本書では、スキゾイド、サイクロイド、妄想性、反社会性、境界性、自己愛性、回避性、強迫性、演技性、以上のパーソナリティ障がいが取り上げられている。なかでも、境界性パーソナリティ障がいについては、たいへん興味深かった。境界性パーソナリティ障害の特徴として、まず挙げておかね...パーソナリティ障害とは何か

  • 【旧作】病的性格【斜め読み】

    懸田克躬,1965,病的性格,中央公論新社.(12.11.24)取り扱う概念も学説も、さすがに古くなってしまっているのは否めないが、今日の、パーソナリティ障がいの概念体系に接続されるコンセプトの元型が提示されていて、なかなか興味深かった。それから、使用する言葉と文体が、非常に美しい。文学的素養を備えた精神科医の分析を読むのは、実に心地よい。【旧作】病的性格【斜め読み】

  • 娼婦論

    金完燮(李幸子訳),2002,娼婦論,日本文芸社.(12.10.24)ベストセラー『親日派のための弁明』の著者が語る韓国人女性を激怒させた問題の女性論。訳文がひどいのはおいておくとして、この金完燮という人、いまでいう「炎上商法」を旨とする作家なのか、いろいろと暴言がひどい。オヤジに囲われた水商売女も、夫に経済的に依存する既婚女も、不得意多数の客を相手にする売春女と変わらぬ娼婦である──この点については同意する。あるいはある男性が、すごく美しい娼婦に惚れて、彼女にアパートを買ってあげ、また毎月の生活費もまかない、ただ自分だけ利用することができる「専属娼婦」にしたら、これも法律には抵触しない。このようなケースでは、男性や女性が既婚者ならば、まだ姦通罪で処罰することができる場合があるが、おたがいが未婚ならばなん...娼婦論

  • 【旧作】社会不安障害──社交恐怖の病理を解く【斜め読み】

    田島治,2008,社会不安障害──社交恐怖の病理を解く,筑摩書房.(12.10.24)人間にとって不安とは身近なものである。しかし、それが度を越え、日常生活に支障をきたすまでになった場合、不安障害の可能性が出てくる。とりわけ現代においては、「社会不安障害」(SAD)と呼ばれるものが最も多く、対人恐怖がその症状の典型として現れる。本書は、具体的な症例を紹介しながら、病気としての登場の経緯、治療にあたっての留意点、薬に関する知識などを解説し、この病に悩む人々への一助を提供しようとするものだ。社会不安障がいは、ASDやADHDと同様、サービス経済化が進行し、他者とのコミュニケーションが欠かせぬ職業が増加するとともに顕在化したものであろう。新たな疾病なり障がいなりがつくり出され、効能があるとされる薬剤が濫用される...【旧作】社会不安障害──社交恐怖の病理を解く【斜め読み】

  • 【旧作】わたしって共依存?【斜め読み】

    河野貴代美,2006,わたしって共依存?,日本放送出版協会.(12.9.24)恋人、友達、家族…誰かのそばから離れられない自分を「依存症」ではないかと不安に思っているアナタへ。親密な関係は、苦しくもあたたかいもの。人に頼り・頼られることのススメ。相手に依存されることで承認欲求が充たされ、自らに依存する相手がなくてはならない存在になる。それが、共依存である。相手が、アルコール、薬物、ギャンブル等の依存症者である場合、依存症ゆえのトラブルに対処することで、依存症者は嗜癖の泥沼から抜け出すすべを失う。依存症の様態によっては、自らも相手と一緒に、生活や人生の破綻の憂き目に合う。自己は他者との関係性のなかでしか存在しえないわけであるから、依存されることに依存する、依存することに依存される関係を断ち切ることは難しい。...【旧作】わたしって共依存?【斜め読み】

  • 痴漢外来──性犯罪と闘う科学

    原田隆之,2019,痴漢外来──性犯罪と闘う科学,筑摩書房.(12.8.24)痴漢は犯罪であり、同時にその一部は「性的依存症」という病気でもある。東京都心のとある精神科クリニックで開かれる、通称「痴漢外来」。ここでは性的依存症の「治療」プログラムによって、通常30%台と言われる痴漢の再犯率を3%にまで抑えている。痴漢行為を行うのは、どんな人なのか。彼らに共通する「認知のゆがみ」とはなにか。どうすれば痴漢をやめさせることができるのか。最新の研究成果に基づき、痴漢をはじめとする性犯罪・性的問題行動の実態に迫る。窃触(痴漢)、盗撮といった性犯罪は、歪んだ性欲の発露に端を発する、「やめるにやめられない」、一種の強迫神経症の現れであり、まぎれもない依存症──プロセス依存、行為依存の病気である。もちろん、病気だからと...痴漢外来──性犯罪と闘う科学

  • 問題少女──生と死のボーダーラインで揺れた

    長田美穂,2006,問題少女──生と死のボーダーラインで揺れた,PHP研究所.(12.7.24)リストカット、万引き、売春、フーゾク――。境界性人格障害(ボーダーライン)と診断された彼女の死から見えてきたものとはなにか。生と死。正常と異常。自分の外側と内側。人間は、つねにその境界線(ボーダーライン)を揺れ動く。リストカット、摂食障害、薬物依存、セックス依存……。つい境界線を越えてしまうことが、どの人にも起こりうる時代になった。そういった問題ごとが、もう他人ごととはいえない時代になった。本書は、女性ジャーナストが長年追い続けた「問題少女」の観察記録である。彼女・レイカは、鬱病とも境界性人格障害(ボーダーライン)とも診断されていた。だが、著者・長田との関係、つまり取材する者とされる者の関係をこえ、「友人」とし...問題少女──生と死のボーダーラインで揺れた

  • 夜また夜の深い夜

    桐野夏生,2014,夜また夜の深い夜,幻冬舎.(12.6.24)私は何者?私の居場所は、どこかにあるの?どんな罪を犯したのか。本当の名前は何なのか。整形を繰り返し隠れ暮らす母の秘密を知りたい。魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説。奇想天外なストーリーではあるが、そこはファンタジー小説と割り切って読めば、ぐいぐいと物語世界に引き込まれ、一気読みしてしまうことだろう。主人公の舞子とエリス、アナとのシスターフッドが印象に残る。桐野夏生「夜また夜の深い夜」書評心の闇を癒やす不幸また不幸夜また夜の深い夜

  • だから荒野

    桐野夏生,2013,だから荒野,毎日新聞出版.(12.6.24)傲慢な夫や息子たちに軽んじられながら家庭を支えてきた主婦・森村朋美は46歳の誕生日、ついに反旗を翻す。衝動にかられ夫自慢の愛車で家出、日本列島を西へ。〈壊れかけた家族〉を桐野夏生が激しく愛おしく描く傑作長編小説!中年既婚女性を主人公にしたロードノベル。朋美が愛想を尽かした夫、浩光の、ミソジニー(女性蔑視)、卑小な小市民性が実によく描かれている。一つの家族が解体し、家族の外部に、救いとなる人間関係が紡がれ、しかし、それさえはかなく消え去ってしまう無常感が読後に残る。だから荒野

  • さらばOcnモバイルOne

    先日、OcnモバイルOneから、Simカードに不良があるかもしれないので、電話して交換を申し込めという、いかにも旧電電公社、現NTTグループらしい居丈高なハガキがきた。早速、申し込もうとしたところ、やっとつながったと思ったら、痛恨の操作ミスで、電話が切れてしまった。その後、何度かけても、話し中でつながらない。あのさ、Simカードの不良があるかもしれないのだったら、無条件に、交換すべきでしょうに。いい加減にあたまにきて、MNPを利用して、日本通信に乗り換えた。本人認証はマイナカード、けっこう手こずったが、なんとか申し込み完了。基本料金は、月々、290円wわたしは、パソコンのヘヴィユーザーではあるが、スマホはそうでもない。どいつもこいつも馬鹿面さげて6インチ程度の画面とにらめっこして、きんもー☆だyoさらばOcnモバイルOne

  • リストランテ アモーレ

    井上荒野,2015,リストランテアモーレ,角川春樹事務所.(12.5.24)姉弟で切り盛りしている目黒の小さなリストランテ。色艶に満ちた皿の数々と、それぞれの事情を抱えたアモーレども(罪深い味わいに満ちた男と女)を描く幸福な物語。美味しそうな料理と色恋とのコラボは、井上さんのおはこの一つ。シェフの杏二は、とんでもない女たらしなのだが、「若いイケメン」であることから、嫌悪感をいだかせない。フルコースのお料理を平らげたかのような読後感。とてもおしゃれな長編小説だ。リストランテアモーレ

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