カマキリ(蟷螂、英:Mantis)とは、昆虫網カマキリ(蟷螂)目に属する肉食性の昆虫。
概要
逆三角形の顔、常にこちらを睨んでいるかのような複眼、鋭いトゲの並んだ鎌状の前脚が特徴的。前脚を折りたたんだ状態で待ち伏せし、小型の昆虫や小動物を捕え、その顎でかじって捕食する。
四枚の翅があるが、大型の種のメスは飛ぶことができない。また、羽が完全に退化している種もいる。
動いている獲物しか狙わず、生きた餌を与える必要があるので飼育は難しい。捕食する前にゆらゆらと身体を揺らすのは獲物との距離を測るためだったり、風に揺れる植物と同じように揺れることで、その存在を相手に認識させにくくするためであると言われている。
空腹時は共食いすることがあり、メスが交尾後のオスを捕食する事は有名。だが、実はオスも黙って食べられる訳ではなく、交尾後慌てて逃げる事が多く、むしろ捕食されることはそれほど多くないらしい。
危険を感じると前脚や翅を広げて体を大きく見せ威嚇する。海外産の擬態が精巧な種ではその場からぽろっと落ちて死んだふりをするものも。
卵が気持ち悪いことで有名である。雌が卵を生む時は泡状で排出され、その中に小さな卵が数百個産み付けられる。かなりエグいがこれは外気温の変化から幼虫を守る膜となっている。誕生の瞬間、幼体のカマキリはぶらさがった状態で大量に誕生するが、その光景は実にグロい。しかしこの中から大人になれる個体は非常に少ない。
日本では主にオオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリ、コカマキリなどが生息する。あまり研究が進んでおらず、国内にどれだけの種が生息しているか未だはっきりしていない。
また、カマキリに寄生する生物としてハリガネムシがよく知られる。
淡水の中で過ごすハリガネムシの幼体が、カゲロウなどの水生昆虫に捕食される→寄生されたカゲロウが羽化し、カマキリに食べられる、という経路で寄生するらしい。
そのため水辺近くに生息するカマキリに寄生することはあるが、平地ではあまり見られないようだ。
寄生されたカマキリはほとんどの場合、ハリガネムシ脱出後衰弱死してしまうという。
豆知識
- 死体でも人間が意図的に動かすと反応することがある。割り箸などの先に獲物の死骸をつけて、カマキリの興味を引く動かし方を続ければ、食いつくこともある。ただしそれを毎回やって餌を与えるのは至難の業であり、現実的ではない。
- 特徴的な眼は、夜になると黒くなる。カマキリは夜目が利き、夜間でも獲物を捕食することが出来る。
- ずっとこちらを見ているように感じるのは、見る側の正面の(複眼を構成している)個眼がいつも黒く見えるから。偽瞳孔と呼ばれており、個眼(の受光容細胞)の底が光を吸収している為に発生する。
- 交尾中に雌が雄を襲うのは、雄を刺激して精子を大量に出させるためという説が有名だが、これは一部の種に限るらしい。ちなみに上半身を失っても交尾は継続可能である。
- カマキラズ科(Chaeteessa)という鎌を持たない(鎌が控えめな)仲間がいる。日本には生息しないのにも関わらず和名がちゃんと付けられている。
- 英名の「Mantis」はギリシャ語の「Mantidae」に由来し、占い師、預言者、僧侶という意味がある[1]。前脚の鎌を折り畳み獲物を待ち伏せする姿を僧侶に重ねたもので、「Praying Mantis(祈る僧侶、預言者)」とも呼ばれる。日本でも「拝み虫」「祈り虫」として親しまれており、世界的にもカマキリは「祈る虫」なんだとか。
- 中国においては「蟷螂の斧」という故事が知られる。「韓詩外伝」に曰く、斉国の君主・荘公が馬車で出かけた折、道の真ん中に一匹のカマキリがいて、逃げずに前足を振り上げて馬車に向かってきた。荘公はその勇気を称えると車の向きを変え、カマキリをよけて通ったという。小さな虫の勇気を称賛する内容だが、現在の日本では意味が変じて「無力な自分に気づかない無謀さ」「無駄な抵抗」というネガティブなイメージにて用いられる。
- また中国武術の一つにカマキリの動きを取り入れた「蟷螂拳」があり、その特徴的な構えや技から、格闘技を題材とする映画・漫画・ゲームにも登場する機会が多い。とりわけ『バーチャファイター』シリーズのリオン・ラファールは有名で、彼の登場により日本での蟷螂拳の知名度は大きく上がったとみる向きもある。
- 日本では雪国では毎年雪に埋もれない高さに卵を産む為、降雪量を予測できると信じられていた。また京都の祇園祭には「蟷螂山」という山鉾があり、からくり仕掛けの大きなカマキリが乗っている。これは南北朝時代の公家、四条隆資が室町幕府二代将軍・足利義詮と戦い戦死した後、その勇を称えて「蟷螂の斧」の故事になぞらえ、カマキリの飾りを乗せた御所車を巡行したのが始まりとされる。
- ギリシャ神話では「メスカマキリ」を意味する怪物・エンプーサが知られている。男を誘惑して性交した後に相手を食い殺し、或いは悪夢を見せながら血を吸うという。ちなみに弱点は意外にも「悪口」で、罵倒されると悲鳴を上げて逃げるという。
- 実はあのGに近縁で、纏めて網翅目として分類されることもある。言われてみれば似ている…と思えるのではないだろうか。Gが生きた化石と呼ばれる理由の1つでもある、古生代石炭紀に生息していた昆虫・プロトファスマもカマキリとGが分かれる前の存在だったりする(現在はGやカマキリの先祖とバッタ類の先祖の中間の存在だとする説が有力)。
ニコニコ動画での扱い
ニコニコ動画では海外の昆虫などと戦わせる動画が上げられていたが、大抵の場合は無残に捕食され、秒殺されることからカマキリ(笑)、昆虫界のヤムチャと言われることも多い。
そもそもカマキリは捕食者として有名だが、天敵はかなり多い。クモや野鳥、幼体の時は捕食対象として有名なトンボにすら狙われてしまう。
本当に弱いのかというとそうでもなく、敗因はカマキリの特性と試合のルールが噛み合っていない点があげられる。
一部の種を除くカマキリは完全な待ち伏せ型で、適正な場所で構えに入らないと捕食動作を取らない。
このため先制攻撃を受けた場合は威嚇するか逃げるしかなく、また非常に打たれ弱いので狭い虫カゴでは圧倒的に不利なのである。
条件が整えば、自分と同程度のサイズのネズミを捕食したケースまである(下記の動画)。また、小型のヘビを捕える動画も存在する他、虫にとっては最大の天敵の一つである小型の鳥類すら食事にしてしまうことも。
ちなみにカマキリが登場する動画にはほぼ必ず「この腹の中にはハリガネムシが~」「水に触れるとハリガネムシが~」というコメントがつくが、水辺や山中にいるカマキリでもない限りそう滅多に寄生されてはいない。
お絵カキコ
関連動画
関連項目
- 昆虫
- 動物の一覧
- 蛯名正義
- ハラビロカマキリ
- ニセハナマオウカマキリ
- 蟷螂
- ハリガネムシ
- おれはかまきり
- カマキラス
- アトラル・カ
- ストライク(ポケモン)
- カリキリ / ラランテス
- 香川照之の昆虫すごいぜ!
- カマキリ(刃牙)